10億円の壁を越えた究極のランボルギーニ
アメリカのフロリダ州で開催された「ザ アメリア オークション2026」では、ランボルギーニの歴史に燦然と輝く名車が出品されました。世界にわずか13台しか存在しないアメリカ仕様のランボルギーニ「P400ミウラSV」です。半世紀以上もひとりのオーナーに愛され続け、奇跡的なコンディションを保ったこの1台は、はたしてどれほどの評価を与えられたのでしょうか。エンスージアストたちを熱狂させた驚愕の落札劇とその個体の現在地に迫ります。
生産わずか13台のアメリカ仕様という希少性
ランボルギーニ「P400ミウラ」の最終進化型である、ランボルギーニ「P400ミウラSV」がオークションに登場した。ブロード アロー オークションズがアメリカのフロリダ州で開催した「ザ アメリア オークション2026」でのことだ。
P400ミウラ シリーズのプライスが、オークションシーンで驚くほど高騰しているのは最近に始まったことではない。はたして今回は入札者からどれほどの評価が与えられたのか。それはランボルギーニというブランドや、クラシックカーのエンスージアストにとっても大いに気になるところだったに違いない。
オークション会場で熱い視線が注がれるなか、ステージ上へと導かれた1972年式のP400ミウラSV。そのシャシーナンバーは「4976」である。ミウラの象徴でもあったヘッドライト周りの「まつ毛」が取り払われ、極太のリアタイヤを収めるためにフェンダーが力強く拡幅された、もっともアグレッシブな最終進化型の姿だ。
ランボルギーニでP400ミウラSVが生産されたのは1971年から1972年にかけてのことだ。この個体は1972年の2月28日、サンタアガタ ボロネーゼのファクトリーからラインオフされたモデルであると記録されている。
わずかに13台しか存在しないアメリカ仕様として生産されたうちの希少な1台だ。ラインオフ直後、当時アメリカにおける正規輸入代理店のひとつであったモデナ レーシング カンパニーへデリバリーされた。
ファーストオーナーとなったアルフレッド ペドレッティに車両が渡ったのは、この年の夏のことである。ブロード アロー オークションズによれば、それから半年ほどしてミッドに搭載される4リッターV型12気筒エンジンは、「4992」のシャシーナンバーを持つ同型のものと交換されたという。
4976号車の工場出荷時のエンジンナンバーの不一致は、不正や事故によるものではなく、注文主を待たせないためにその場にあった一番いいエンジンを積んで送り出したという、古き良き(?)、そして情熱的なイタリアン・スーパーカーメーカーの現場判断が生んだ副産物だった。ゆえに2016年から2017年にかけて行われた、ランボルギーニ公式のヘリテージ部門「ポロ・ストリコ(Polo Storico)」によるフルレストアの際に、本来製造時に搭載されるはずであったNo.30733エンジンを搭載し直したのだという。
半世紀にわたりガレージで眠り続けた名車
ファーストオーナーのペドレッティが所有していた期間は長くはなかった。彼は車両をテキサス州サンアントニオに在住するコレクターのヘクター A エスカミラへと売却した。それから30年もの間、日本で大切に保管されていたのちに、再びアメリカの地に呼び戻されます。
ファクトリーを後にする際、車両には「アルジェント インディアナポリス メタリッツァート」と呼ばれるシルバーのボディカラーが施されていた。インテリアはグレーのカーペットにブラックのレザーを組み合わせた仕様だ。オプションとしてシートベルトや六角形ホイールナット、エアコンなども選択されている。
現在の車両は、エスカミラの手にある間に「ブルー ノッテ」に酷似したボディカラーへ再塗装された点を除き、オリジナルのコンディションを保っている。2017年には奇跡的にも40年ぶりにエンジンも新車出荷時のものへと再びファクトリーで交換された。ちなみにシャシーとエンジン、そしてベルトーネによって刻印されたボディのナンバーが正しくマッチングしていることは、ランボルギーニによっても確認されている。
さらに価値を高めているのは、13台デリバリーされたアメリカ仕様のなかで唯一、エンジンとトランスミッションのオイル潤滑を独立させた「スプリットサンプ仕様」であることだ。
従来のミウラはエンジンとギアボックスがオイルを共有していたため、ギアの摩耗による金属粉がエンジン内部に混入するリスクを抱えていた。この弱点を完全に克服したスプリットサンプ仕様は、メカニズムの観点からも「究極にして完成形のミウラ」と呼べる逸品なのである。
参考までに、オドメーターに刻まれている現在までの走行距離は1万8212マイル(約2万9139km)である。フルレストアされたモデルがオークションに姿を現すことさえ少ないP400ミウラSVだが、新車時から大切に保管され、特に日本での30年にも及ぶ保管状態が素晴らしかったことが、この特筆すべきコンディションでの出品となったのは、きわめて稀なことである。
予想を遥かに超える10億円超えの落札劇に見る「ミウラ価値の最適解」とは!?
当然のことながら、この個体には世界中から熱い視線が集まった。主催者は事前に、350万ドル〜400万ドル(約5億5227万円〜6億3116万円)の予想落札価格を提示していた。しかし結果的に、この数字は単なる通過点にしか、いやその予想を遥かに超えた価値となったのだ。
オークションが終了したのは、入札価格が660万5000ドル(約10億4220万円)に達した時である。その凄まじいリザルトには、ただただ驚嘆の声が聞かれるのみだった。
はたしてP400ミウラ シリーズは、これからどこまでその価値を高めていくのだろうか。2026年で生誕60周年を迎えた名車が、コレクターにとって究極のランボルギーニである事実はこれからも変わることはないだろうから、時代時代によってミウラへの最適価値への解は永遠にないのだろう。
※為替レートは1ドル=157.8円(2026年5月6日時点)で換算
