19歳で手に入れたコンパクトハッチはV6ミッドシップという”狂気”マシン
ルノー「クリオ」というコンパクトなFFハッチバックのリアシートを取り払い、大きく張り出した前後ブリスターフェンダーを身に纏い3LのV6エンジンをミッドシップに押し込んだモデルが、ルノー「クリオ ルノー・スポールV6」だ。現在30代のオーナー“のりめん”さんが19歳の初所有車として選んだのは、”おもしろいクルマ”の極みともいえる1台だった。
ルノー「クリオ」をメーカーが魔改造した「クリオ ルノー・スポールV6」
クリオは、ルノーを代表するBセグメントのFFハッチバックである。1990年に登場した初代は、1991年度の欧州カーオブザイヤーを受賞するなど高い評価を獲得した。日本国内では登録商標の関係から「ルーテシア」の名称で販売されている。
1998年にフルモデルチェンジを受けた2代目は、1.4Lから2Lのガソリンエンジンに加えディーゼルエンジンもそろえる、ごく普通のコンパクトカーとして展開された。そんな量産モデルをベースに、まったく異なる発想で生み出されたのがルノー クリオ ルノー・スポールV6だ。
リアシートを取り外したスペースに、3LのV6エンジンを横置きで搭載する。駆動方式も、FFからエンジンを車体中央に置いて後輪を駆動するMR方式へと変更された。最高出力は230ps、トランスミッションには6速MTが組み合わされている。つまり、量産仕様のFFハッチバックを、まったく別物のミッドシップスポーツへと作り変えたモデルである。
同じくFFモデルをミッドエンジン化し、WRC参戦のために一定数の市販が義務づけられたモデルとして登場したルノー5ターボと同様の手法だ。いっぽう、クリオV6のレース活動のメインは、専用のカップカーによるワンメイクレース「クリオV6トロフィー」だった。販売後はクリオのマイナーチェンジに伴うフロントフェイスの刷新やエンジンの出力向上も行われ、2005年まで生産されている。
初めてのクルマを選んだ理由は「おもしろいから」
現在30代のオーナー“のりめん”さんが2002年式ルノー クリオV6を手に入れたのは19歳のとき。自身の名義では初めてのクルマだったという。購入の決め手は「手に入る中でおもしろいクルマが欲しかった」ということで、やはりエンジンの搭載位置がポイントのひとつだったそうだ。
ショップに依頼して探してもらい、購入時の走行距離は約5万5000km。ホイールやカーボン製ボンネット、レカロシートへの変更など、ほぼ現在の状態で手に入れたという。
「最初はプレッシャーがありましたね、こういうなりのクルマなんで。でもまあ、意外と普通といえば普通……、普通じゃないんですけど。おもしろいけど、まあ速いクルマではないなって。でも踏んでいくと、危ないクルマっていう。後は暑いですね。エアコンも一応効くんですけど、その辺のクルマに比べると効かないです。ブレーキすると、熱気がこう……(後ろのエンジンの熱気がくる)。高速道路の移動とかは最高ですけどね、意外と。風が当たっていればエアコンも冷えてくれるんで」
「あとは、小回りが効かないんで。これ(最小回転半径が)6.5mなんで、ダンプ級なんですよ。切れ角がなくて。日常使いまで考えて設計してなかったんでしょうね、レーシングカーだしっていう感じで。だから、ハンドルを切っている角度とこいつが曲がっている角度が合わないんですよ、普通のクルマに乗っている人からすると。でも意外に乗り心地はいいですね。一番いいところは、”みんなで遊ぼうよ”っていう試作段階みたいなクルマを、ルノーがトム・ウォーキンショー・レーシング(マツダやジャガー、VOLVOなどのツーリングカーからグループCカー、F1車両を製作したコンストラクター)に委託して作って、売ったところですよね」
車内火災を経て復活! 部品調達は年々困難に
購入後に“のりめん”さんが自身が手を加えた部分としては、ワンメイクレース仕様の型で製作されたリップスポイラーの装着や、ライトの交換といったメンテナンスが挙げられる。しかしそれ以上に大きなトラブルにも見舞われた。
「一番ひどいのが、燃えたっていう。他の人が“燃えてる、燃えてる!”って、冗談だと思ってたら車内がもくもくしてきて、見たら本当に燃えていたんで急いで停めて。オルタネーター(発電機)からの出火だったんですけど、配線からコンピューターまで全部燃えています。エンジン本体は無事だったんですけど、それが良くないところで”直せるんだったら”ということで直しました。ちょうどお店にも部品取り車があったんで」
「その時はパーツが出たんですけど、今は難しいですね。自分が乗り始めた当時は”外装は出ないけど、中身は出る”って言われていたんですよ。エンジンも結構いろんなクルマに使われているエンジンなんで。それがやっぱ10何年経つと、もう出ないんだなって。クラッチも、もう5、6年前から出ないです」
今後については、リアブレーキのキャリパー交換と、オイルにじみが発生しているためヘッドガスケットの交換を検討しているとのこと。なおガスケットについては、リプロダクト品(復刻部品)をすでにフリマアプリで入手済みだという。
何処の国でも同じように、古いクルマのパーツ確保にはオーナーの頭を悩ませる問題がつきまとう。ギリシャ神話に登場する歴史の女神「クレイオー(KLEIO)」から名付けられたというCLIOなのだから、せめて自動車史に残るようなルノー クリオV6のパーツ供給くらいは確保してほしいと切に思うのだが、いかがだろう。
