ブラバス創業者の夢を叶えた1000馬力の完全特注クーペに驚かされる
2026年5月16日、イタリアのコモ湖畔で開催された自動車イベントで、ドイツのブラバスが完全自社開発のオリジナルスーパーカー「BRABUS BODO(ブラバス ボード)」を世界初公開した。ブランド創業者である故ボード・ブッシュマンへのオマージュとして生み出された、世界限定77台の2+2シーターグランツーリスモだ。チューニングの名門が長年培ってきた技術力と美学の集大成とも言える、1000馬力を誇る至高のマスターピースが放つ圧倒的なオーラを感じてほしい。
フルカーボンボディと1000馬力のV12エンジンが圧倒的な性能を叩き出す
このクルマの最大のトピックは、プレプレグ製法(樹脂を含浸させたカーボンシートを用いる製法)で製造された高強度のフルカーボンボディだ。そして、その内側に秘められた狂暴なパワートレインにある。フロントに搭載されるのは、職人の手で丹念に組み上げられた5.2リッターのV12ツインターボエンジンである。
最高出力は1000馬力、最大トルクは1200Nmという途方もないスペックを誇る。この強大なパワーにより、停止状態から時速100kmまでわずか3秒で駆け抜ける。さらにアクセルを踏み続ければ、23.9秒後には時速300kmの大台に到達する。最高速度は電子リミッターが作動する時速360kmにまで達するのだ。現代のハイパーカー市場でも、トップクラスに君臨する驚異的な動力性能を備えている。
専用開発の足まわりと最先端のエアロダイナミクスが完璧な姿勢を構築する
これほどのパワーを確実に路面に伝えるため、足まわりにはテクノロジーパートナーのKW社と共同開発した電子制御式サスペンションを組み込んだ。タイヤは、このモデルのために特別開発されたコンチネンタル製ハイパフォーマンスタイヤ「SportContact 7 Force」を採用する。組み合わせるホイールは、最新の鍛造技術とCNC加工(コンピュータ数値制御による精密加工)で生み出された21インチの鍛造モデルだ。これにより、極限までバネ下重量の軽減を図っている。
また、時速360kmという超高速域での安定性を確保するため、エアロダイナミクスも徹底的に煮詰められた。リアに備わる電動格納式の2ステージ・リアスポイラーは、速度域に応じて最適なダウンフォース(車体を路面に押し付ける力)を発生させる。さらに、時速140km以上からの急ブレーキ時にはスポイラーが垂直に立ち上がる。エアブレーキとして機能するハイテクなギミックも搭載されているのだ。
リアディフューザーの左右に配置されたチタン製の角型テールパイプは、最新の3D金属プリント技術で成形された。電子制御バルブにより、V12エンジンの官能的な咆哮を自在にコントロールできる。キャビンに目を移すと、カーボンと最高級レザーが融合したドライバー本位のコックピットが広がる。ホールド性と快適性を両立したシェルデザインの専用シートを採用した。ドアパネルの内側には創業者ボード・ブッシュマンのシグネチャーが刻まれており、特別なモデルであることを静かに主張している。
約1億8400万円の価格を掲げて創業者の果たせなかった夢を具現化する
この歴史的なマスターピースの生産台数は、ブラバスが設立された1977年にちなみ、世界限定わずか77台に厳しく制限されている。ベース価格は100万ユーロに設定された。日本円にして約1億8400万円を超える、真の限られた富裕層に向けたビスポークマシン(特注車)である。
ブラバスのCEOであり、創業者の息子でもあるコンスタンティン・ブッシュマン氏は、このプロジェクトについて次のように語気を強める。
「約50年前、父は自らのビジネスを立ち上げることを決意しました。彼の情熱こそがブラバスを築き上げたのです」
亡き父への深い敬意を口にするトップ。さらに、長年の悲願であった完全自社製スーパーカーへの想いを言葉に込める。
「しかし、彼がよく口にしていたものの、結局実現できなかったクルマが1台だけありました。それは彼が長年抱き続けていた夢でした。今日、私たちはついにこの夢に命を吹き込み、彼の遺産を称えます。当然のことながら、そのクルマには『BODO』という名前しかあり得ません」
自動車業界が電動化という未曾有の変革期に直面する現代。そこで大排気量のV12エンジンを新規に開発し、職人の手でカーボンボディを作り上げる行為は、極めて非合理的で贅沢な挑戦と言える。しかし、クルマ好きが心を奪われるのは、いつだってスペックシートの数字を超えた先にある情熱やロマンだ。チューニングブランドの枠組みを飛び越え、真のコーチビルダーとして覚醒したブラバスが放つこの1台。それは、内燃機関へのあふれんばかりの愛と亡き父への深い敬意が結実した、最高にエモーショナルなスーパーカーなのである。
