ポルシェが史上初めて911をベースにしたGT4マシン「GT4 R」を発表し、520psのNAフラット6を積んで来シーズンに実戦投入
ポルシェのGT4カテゴリーといえば、長らく718ケイマンが主役だった。その常識がついに覆る。カスタマー向けの新型レーシングカー「911 GT4 R」は、GT4規定のマシンとして史上初めて911プラットフォームを採用した。心臓は911 GT3ゆずりの4L自然吸気フラット6。レース仕様で520psを絞り出す。ケイマンからの世代交代が、ここに始まった。
911ベースは史上初。レースカテゴリのピラミッドがすべて911で完結する
ポルシェは6月25日、カスタマーモータースポーツ向けの新型レーシングカー、ポルシェ「911 GT4 R」を発表した。世界のGT4レースに向けて設計された車両として、911プラットフォームを採用するのは今回がはじめてになる。
これまでポルシェのGT4マシンは718ケイマンが担ってきた。911 GT4 Rの登場によって、ドライバーはひとつの911というプラットフォーム上で、ワンメイクレースからGT3競技までを一気通貫でステップアップできるようになる。ポルシェ・モータースポーツ副社長のトーマス・ローデンバッハは、911のDNAと実績あるGT4コンセプトの組み合わせが市場でユニークな提案になると語る。GT4がエントリー向けから世界的に競争の激しいカテゴリーへ進化したことを、この決定が裏づけているという。
心臓は911 GT3ゆずりの4L自然吸気フラット6。レース仕様で520psを発揮する
搭載されるのは、公道向けの911 GT3が積む高回転型の4L水平対向6気筒自然吸気エンジンをベースにしたユニットだ。レース仕様での最高出力は382kW(520ps)、最大トルクは470Nmに達する。
ただし、GT4規則ではBoP(バランス・オブ・パフォーマンス。車両ごとの性能を均衡させる調整)によって実際の出力が変動する。911 GT4 Rは工場出荷の段階でエアフローリストリクター(吸入空気量を制限する部品。ここでは53.7mm径)を装着し、316kW(430ps)に抑えられる。駆動系はステアリングパドルで操作するシーケンシャル6速ドグギアボックスと、4枚のレーシングクラッチで構成する。
ちなみに、シャシーは規則の都合で911カップとは異なる設計だ。ホイールは各1インチ分の幅が狭められ、量産車と同じ5穴パターンで装着される。ダンパーはデュアル調整式、スプリングレートは3段階から選べる。
ボディとコクピットに天然繊維を多用。リアウイングは11段階で調整可能
911 GT4 Rは911カップから主要なボディ構造を受け継ぎ、その空力最適化を巧みに活用する。リアウイングは手作業で11段階に調整可能だ。
特徴的なのは、天然繊維強化プラスチックをエポキシ樹脂と組み合わせて広く使っている点にある。ドアやエンジンカバー、空力パーツ、コクピットの一部までがこの素材で作られる。運転席では10.3インチのカラーディスプレイが必要な情報を映し出し、統合データロガーと精密なGPSがレース中の分析と性能の最適化を支える。バラストの追加によって、BoPが指定する重量区分にも合わせ込める。
ケイマンで積み上げた1500台超の実績。次のカスタマーレースを911が牽引する
ポルシェが2016年にGT4カテゴリーへ参入して以来、ケイマンをベースにしたレース車両は1500台以上が生産されてきた。堅牢な量産技術とレース専用パーツを組み合わせたこれらのモデルは、経済的に魅力あるカスタマーレース車両として世界に定着している。
GT4はGT3の下に位置するエントリークラスながら、成長がいちじるしいカテゴリーだ。SROの国際「マニュファクチャラーランキング」で、ポルシェは現在3位につけている(2026年6月19日時点)。911 GT4 Rは、その成功の物語を象徴的な911で受け継いでいく。実戦デビューは2027年シーズンを予定する。
