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80年前の元祖「ジープ」の中身が凄かった! 三菱と「ウィリスMB」をハイブリッドした利点とは

2022年9月の「ジープジャンボリー」に自走で参加した

「ジープジャンボリー」会場でもっとも古いジープに直撃!

 2022年9月17~18日に、富士山麓のスタックランドファームオフロードコースで開催された「ジープジャンボリー」。会場では魅力たっぷりのジープとオーナーたちに出会うことができた。まずは歴代ジープの元祖となった「ウィリスMB」でエントリーした籾山さんを紹介しよう。

1941年に米軍が採用した「ウィリスMB」がジープの始まり

 2022年9月17~18日に富士山麓で開催されたジープジャンボリーには、2日間で延べ72台のジープが全国から集結した。そんな会場を歩いていて発見したのが、ここで紹介する車両だ。独特のグリル形状やフロントの2分割ウインドウ、シンプルなフェンダー形状は、第二次大戦中に開発された「ウィリスMB」のボディ。

 オーナーはほかにも三菱ジープJ55やTJ型ジープ「ラングラー」などを所有する籾山さんだ。じつはこの個体は、MB好きという前オーナーが50年以上所有していたもので、それを受け継いだとのこと。そのため基本的には譲り受けた状態のまま所有し続けているという。

三菱ジープ初期「CJ-3B」のシャシーに「MB」のボディを搭載

 籾山さんに詳しいお話を伺うと、この車両は三菱がライセンス生産した初期の「CJ-3B」のシャシーにMBのボディを搭載したハイブリッド車両とのこと。つまり機関系はアップデートされているものの、ボディはオリジナルのMBという貴重な車両だ。ボディの程度は驚くほど良く、約80年が経過しているとは思えないほどの状態をキープしている。

 ちなみにオリジナルのウィリスMBも、シャシーに使用しているCJ-3Bも3速マニュアルだが、この車両は後付けのオーバードライブを装着しており、高速巡行も可能。ただし、ただでさえトランスファーレバー含め3本あったシフトレバーは、なんと合計4本もフロアから伸びている。

随所に備わるワイルドな装備が軍用車だった証

 簡素なトップのみの幌が備わる車体は、ドアの代わりに紐が一本備わるのみという簡素なスタイル。ちなみにウィリスMBのもっとも大きな特徴は、その後のジープの象徴にもなっている「7スロットグリル」ではなく、ラジエターグリルのスリットが9本となる点だ。

 さらに車体を見て回ると、随所に軍用車だった名残が見て取れる。車体側面にはスコップやアックス(斧)などが固定されているほか、車内を見るとフロントウインドウ直下にはライフルを固定するホルダーも備わっている。また左右シートの間には無線機が備わり、車体後部に無線アンテナがそびえ立つなど、ワイルドなジープが集まるイベント会場でもひときわワイルドな見た目となっている。

Aピラー付け根に備わる機器は大昔の通称「アポロ」

 外観で特徴的だったのは、フロントクォーターパネルに見慣れない器具が備わっていたことだ。籾山さんいわく、これはウインカーの代わりになるものだという。MBは軍用車両ゆえにウインカーが備わらないのだが、これを公道で使用するために、「腕木式方向指示器(セマフォー)」と呼ばれる器具を装着しているのだ。

 これはスイッチを入れるとオレンジ色に点灯したバーが「ピコン!」と飛び出るというもの。よく見ると日本で「アポロ」の名前で親しまれたアポロ工業製が備わっていたため、おそらく過去に日本で追加されたのだろう、とのことだ。

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 今やオフロードSUVのトップブランドとして君臨している「ジープ」だが、その原点は最も過酷な状況=戦場にあったのだという歴史をこのウィリスMBは物語る。それが博物館の中ではなく、こうして公道を走れる状態で引き継がれていることに、前オーナーと籾山さんの愛情がうかがわれるのだった。

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