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17年FDを所有した彼女がマツダ「RX-7」にひと目惚れしたのは「リトラがパカッと開くところ」でも最近はトヨタ「GR86」も気になっちゃう理由とは

オーナーの井さんとRX-7

井 麻衣さんにとって人生3台目のマツダRX-7は2002年式

勇ましいFDとのギャップ萌えが愛らしい

2023年9月17日に、福岡県朝倉市にあるあまぎ水の文化村で開催された「リトラジャム」。参加台数50台のうち5名の女性オーナーが、愛車とともに参加していた。その中で、カーボンボンネットにGTウイングと、やる気満々なスタイルのマツダ「RX-7」(FD3S)で参加したのが、井 麻衣さんだ。なごやかな雰囲気の井さんとは対照的な組み合わせ。このギャップに魅了されて話を聞いてみたところ、彼女は好きなことはとことん追求したい、誰にも負けない行動力の持ち主だったことが判明した。

17年間も乗り続けた愛車を手放した後悔がドラマの始まり

井さんをひと言で表現すれば、「ギャップ萌え」以外の言葉が見当たらない。当日参加していた数台のマツダRX-7(FC/FD)の中では、車両の見た目のインパクトはナンバー1。「走ることが大好きな男性が乗っているんだろうな」という、こちらの勝手な妄想をいとも簡単に裏切ってくれたのが、井さんだった。

彼女の愛車に対する想いを尋ねるべく、このFDは所有してどれぐらい経つんですか? と素朴な疑問を投げかけた直後に返ってきた、「この子“は”3カ月です」という彼女の言葉。これが、井さんのこの1年間での驚くべき愛車遍歴を聞くことになる、起爆剤となったのだ。

「じつは1年前まで、FDを2台所有していました。1台は1997年式の4型、もう1台は1999年式の5型です。片方は17年間も所有していました。でも、金銭的な理由により、泣く泣く手放したのが1年前だったんです」

しかし、いざ自分の元を去ってしまうと、やっぱり寂しくなるのが人の心。「欲しい!」という欲求には勝てず、でもFDではなく他の車両を探した結果、新車のマツダ「ロードスター」(ND)を購入することになった。そしてここからが、1年間での激動の乗り換え人生の始まりだったのだ。

1年間で4台も乗り換えて3カ月前にFDへと原点回帰

「NDロードスターは、欲しい色と異なる色が届いてしまい、キャンセルできなかったんです。自分の気持ちを抑えて我慢して購入したのですが、モヤモヤだけが残ってしまいました。そこで、ネットで中古車を探していたところ、かっこいいトヨタ マークXを発見。特にG’sというグレードに惹かれて、これに乗り換えたのです。ところが、今度はBOSEサウンドシステムとシートヒーターという、私が欲しかった装備がついたNDロードスターを見つけてしまいました。色はホワイトで前に欲しかった色ではなかったのですが、その装備品が気になってしまい、またNDへと乗り換えたのです」

井さんによると、ここまでが約半年もかからないほどの出来事。ところが2度目のマツダ ロードスターに乗り始めて2カ月が過ぎた頃、再び違和感が……。それは、「狭くて息苦しい。圧迫感がある」という感覚だった。ロードスターだから幌を開ければいいだけなのでは? と思った方。もちろんそれが大正解。しかし、井さんがロードスターに乗ると、なぜか雨が多かったのだそう。

「雰囲気はなんとなく似ているけど、開放感を楽しみたくて、FDと絶対的に違うオープンカーを選んだはずなのに……。私が乗ると、なぜか雨が降る確率が高いんです(涙)。結局、オープンにできないから意味がない。そこでまたモヤモヤしてしまい、そこでいろいろなことを考え直したのです。結局私は、何が好きなんだろう? 何に乗りたいんだろう? と」

そして行きついた答えが、原点回帰。「私にはFDしかない!」と明確な答えが出た彼女にとって、もはや躊躇する理由はない。そして3カ月前に、現在の愛車が手元に届いたというわけだ。

そもそもなぜ彼女がFDの虜になったのか?

そこまでして井さんがマツダRX-7の虜になったのは、当時のある出来事がきっかけ。そのクルマとの出会いは夕刻時だった。

「ポジションランプが光っている、印象的なクルマが停まっていたんです。そのクルマが私とすれ違う瞬間に、ヘッドライトをパカっと開いて走り去って行ったんです! 独特の丸みを帯びたボディデザインとか、全てがカッコよく見えました。あのクルマはなんだ? と気になって調べていたら、FDだと分かったんです。いや、厳密に言うと暗がりだったので、もしかしたらFDじゃなかったのかもしれません。180SX? それともMR2か? 今となっては調べる手段がありませんが、でもアレは、私にとってはFDで間違いなかったんだ! と、自分自身に言い聞かせています(笑)」

長い人生、時には激しい思い込みも大切である。もしかしたら、本当に勘違いだったかもしれない。でも井さんは、その初期衝動をきっかけにして、マツダRX-7という希代の名車に辿り着き、しかもそれを17年間も所有するという運命に恵まれたのだから。

人生最後の伴侶として選んだはずなのにまさかの展開が

「私は、このFDみたいに、丸くてヘッドライトが隠れているクルマが好きなんです。NDロードスターも、なんとなくFDみたいな面影があるでしょ? この子は購入した時点ですでにこういう仕様になっていました。私がオーナーになってから変えたのは、シートとハンドル、そしてサスペンションですね。最初に付いていたのは、硬すぎてはねてしまい、クルマが壊れるんじゃないかと心配して変更したのです」

新たに購入した3台目のFDは、2002年式。井さんは、「今回の購入価格は、当時の新車価格を超えているのが信じられない」と語っていたが、RX-7に戻ってきたという安心感に満足している様子。ここまで紆余曲折あれば、さすがにこの子が人生最後の愛車になるのでは?

「購入時のお金に関しては頑張っていますが、乗り出して実感したのは、壊れる部分が増えているということです。修理代がかさむのが大変。収入の限界もありますから、正直、これが本当に最後のクルマでいいのかな? と悩んでいます。それと、同じFDを購入したものの、結局17年間所有した昔の愛車とこの子を比較してしまう自分がいるのです。そうなると、当たり前ですけど思い出の数が全然違う。この子をあと17年乗り続ければ同じような思いが沸くのかな、と考えてみたり。そんな事を悩んでいるうちに、またちょっと気になるクルマが見つかってしまったんです」

今まで、たくさんのFD愛を語ってくれていたのに、最終局面でのこの発言に驚かされたのは筆者だけではないだろう。ちなみに、この気になっているクルマとはトヨタ「GR86」とのこと。乗り換えにあたってお店との条件で金銭的なデメリットが一切ないことと、「新車なのですぐに壊れる不安がない」ということが主な理由だとか。

「FDに対しては、私の17年間の思いが強すぎなんですね。私はFDならば何でもいいのではなく、自分が乗っていたあの愛車が好きだったんだと気付きました。だから、同じFDでも乗ってしまうと当時の愛車と比較してしまうのが可愛そうだなと。GR86ならばそんな思いは割り切れるはずだし、壊れなくてお金もかからないから、そのストレスが無くなることも重要ですね。時間はあるので、もうしばらく悩みたいと思います」

クルマ好きの愛車遍歴には、それぞれの思いが詰まった歴史がある。井さんは、まさにその典型。紆余曲折を経たからこそ、愛車に対する自分の心理が理解できた。でも、これだけ行動的になれるオーナーさんは、素直に羨ましい。そしてその行動力が、今度どのような方向へと進んでいるのか。可能であれば、その後の顛末も知りたいところだ。

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