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ポルシェ「356」が1億1000万円オーバー! 理由は「アウトロー」にレストモッドされたワルっぽさにありました

74万7500ドル(邦貨換算約1億1060万円)で落札されたポルシェ「356A アウトロー」(C)Courtesy of RM Sotheby's

アウトローなポルシェ356Aクーペ

2010年代中盤あたりから、欧米のクラシックカー界でちょっとしたブームの傾向を見せている「アウトロー」は、アメリカにおけるポルシェ「356」および「911」の愛好家あたりを端緒に流行しているスタイル。現在では、ランチア「アウレリアB20GT」などでも「アウトロー」を標榜するレストア車両が製作・販売されています。このアウトロー、基本的には現代的な技術を取り入れた、いわゆる「レストモッド」の一環ですが、より「ワルっぽい」ワイルドさを前面に押し出したテイストのもののようです。そんなムーブメントを見越してか、クラシックカー/コレクターズカーのオークションハウスとしては最大手と目されるRMサザビーズ北米本社がアリゾナ州フェニックス市内にて、2024年1月25日に開催した「ARIZONA 2024」では、典型的なポルシェ「356アウトロー」の出品が話題となりました。

アウトロー・ポルシェの旗手エモリー

1950年代初頭にアメリカ大陸への上陸を果たした直後、ポルシェ「356」は南カリフォルニアのカスタムホットロッドビルダーたちの間で、思いがけず「第二の故郷」を見つけることになった。

当時の勇敢なポルシェ乗りたちの一部は、オーバーライダーのついた重い純正バンパーを取り外し、オフセットを拡げるためにホイールリムを交換。スティンガータイプのエキゾーストを溶接して、渓谷沿いのワインディングロードに挑んだり、公認競技のためにサーキットを攻めたりするようになっていた。

そんな熱狂的なホットロッダーたちの奔放な創意工夫と熱意は、ツッフェンハウゼンの厳格なポルシェのエンジニアたちも注目するほどワイルドなスポーツカーを生み出し、やがて名作「356スピードスター」をデビューさせる原動力にもなった。

そんな時代の息吹を受け継いだ、ポルシェ356の「アウトロー」。そのムーブメントの旗手となっているトップブランドが「エモリー」社とのことである。

その創業者であるゲイリー・エモリーは、父ニールが経営するカスタムショップで育ち、初期の南カリフォルニアのポルシェ「ホットロッダー」たちに、モータースポーツ指向の高いチューニングパーツを数多く供給していたという。

1990年代初頭になると、彼は自身の会社「パーツ・オブソリート」でポルシェ界における地位を完全確立。希少なポルシェ用パーツの入手はもちろんのこと、コンクール・デレガンスに向けたレストアの領域をはるかに超えた、深い知識も兼ね備えてゆく。

ゲイリーはポルシェの純粋主義者と、いわゆるアウトロースタイルのモディファイ愛好家を結ぶ架け橋となり、その精神は息子のロッドにも受け継がれているという。

今や彼の会社「エモリー・モータースポーツ」は、今回紹介するモデルを含め、世界でもっとも尊敬されるカスタムポルシェを続々と生み出しているとのことなのだ。

驚きの1億1000万円オーバー!

今回の「ARIZONA 2024」オークションに出品された356Aアウトローは、T1時代の1957年に356Aのロイター社製クーペとしてツッフェンハウゼン工場から送り出された「シャシーナンバー101416」がベース車両。長い旅路の末、オレゴン州マクミンビルにあるエモリーの工場に運ばれ、「アウトロー化」のため高度なモディファイが施されている。

パワーユニットは、「エモリー・ロススポート(Emory-Rothsport)」で特別に設計された「Outlaw-4」。オリジナル356初期モデルの2倍以上におよぶ、2.6Lの排気量を与えられるとともに、電子制御燃料噴射や専用フィルター/オイルクーラーを備えた潤滑システム、カムセンサーつきMOTECツインイグニッション、「セブリング(Sebring)スタイル」の4-into-1エキゾースト、ヒーターボックスつきの専用ステンレスヘッダー、そして往年のポルシェ「レンシュポルト」を思わせる、アンバー色のFRP製エンジンシュラウドで武装している。

パワーはじつに260psを発生し、車両重量2000ポンド(約900kg)のアウトローに、640psのポルシェ「カイエン ターボGT」と同等のパワーウェイトレシオを与えたと報告されている。

半艶サテンブラック仕上げとなる16インチアロイホイールの奥には、ブラックのブレーキハブを備えた専用の4輪ディスクブレーキが潜んでいる。ステアリングはラック&ピニオン式で、アップグレードされたサスペンションには、901スタイルの独立式リアサスペンションに絞り込まれたトレーリングアーム、KONI調整式ショック、フロントとリアのスタビライザーが装備されている。

また、カスタムメタルワークを得意とするエモリー社のチームは、前後バンパーおよびフロントフードのハンドルを削除したのち、あの時代を反映したライトアイボリーでボディをペイント。ステンレスメッシュグリルつきエンジンリッド、GTスタイルミラー、レース用のフューエルフィラー、両フロントフェンダーにハンドペイントの「Mobil Oilペガサス」ロゴを追加した。

そしてキャビンには、スピードスタースタイルのシートにグリーンのレザーを張り、シートバックにはカーペットを貼りつけ。リアシートは潔く取り外した代わりに、レザーのラゲッジストラップを取りつけた。

さらにはライトグリーンのジャーマン・スクエアウィーブカーペット、ボルトインのロールケージ、3本スポークの「モト・リタ」社製ウッドステアリング、紋章にイーグルが刻印されたユニークな木製シフトノブなど、1950年代テイストのワイルドなアイテムを装備。そのかたわら、電動エアコンとステルスBluetoothモジュールも組み込まれ、現代人のドライバーの使用にも耐えうる快適性を備えている。

エモリー社のアウトロー・ポルシェのキャンセル待ちは、何年分も続いているとのこと。RMサザビーズ北米本社の公式オークションWEBカタログでは「時代を反映した存在感と現代的なパフォーマンスが融合した、このみごとな1台の順番待ちの列を飛び越え、現在のポルシェコミュニティでもっとも切望されているクルマのひとつをすぐに手に入れられるチャンス!」とうたいつつ、65万ドル~80万ドルのエスティメート(推定落札価格)を設定した。

ポルシェ界と「アウトロー」には縁遠い筆者などは、キャッチコピーもエスティメートもちょっと大げさでは……? と疑問視していたのだが、いざ1月25日の競売が始まると順調にビッド(入札)が進み、終わってみれば74万7500ドル。現在のレートで日本円に換算すると約1億1060万円という、筆者ごときの浅薄な予測を大幅に覆す高価格で落札されることになったのだ。

それでも、話題の「シンガー・ポルシェ」の356版に相当すると思えば、このハンマープライスも驚くには値しないのかもしれない。

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