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FRポルシェの完成形「968クラブスポーツ」は1100万円オーバー! カルト的な人気を誇る1437台のみの希少車は、今後さらに値段があがる!?

6万9000ユーロ(邦貨換算約1110万円)で落札されたポルシェ「968クラブスポーツ」(C)Courtesy of RM Sotheby's

スパルタン限定モノのポルシェなら、4気筒のFRモデルでも高評価?

およそ1世紀の昔には鉄道車両の点検・修理に使われていた施設を改装したという、自動車エンスージアストの楽園「モーターワールド・ミュンヘン」において、2024年11月23日、RMサザビーズ欧州本社が開催した「Munich 2024」オークションでは、素晴らしい施設に相応しいクラシックカーやコレクターズカーが数多く出品されました。今回はその中から、トランスアクスルFRのポルシェ「968」に設定されたスパルタン志向の限定車「968クラブスポーツ」を紹介します。

トランスアクスルFRポルシェの究極的モデル、968とは?

1975年に登場した「924」に端を発するトランスアクスルFR+直列4気筒ポルシェの最終版として1992年にデビューしたのが、一連のシリーズ第3世代にあたる「968」。

その内容こそ大幅にアップデートされていながらも、そのエクステリアデザインは924時代からほとんど変わらない印象が強かった前任モデルの「944」をさらにリファインしたうえに、当時最新の「ポルシェスタイル」を駆使しエクステリアのモディファイを加えたモデルである。

また944シリーズの最終版「944 S2」ゆずりとなる、1気筒あたり約500ccという巨大なシリンダーを持つ水冷直列4気筒DOHC・16バルブエンジンには、当時最新のバルブタイミング変換システム「ヴァリオ・カム」が採用され、S2比で約30psアップとなる240psの最大出力を手に入れることになった。

いっぽう、ラインナップ内のバラエティの豊富さは944時代に負けず、ボディはデビュー当初からクーペとカブリオレの2本立て。トランスアクスルに配置される変速機は6速マニュアルのほか、ポルシェが「911カレラ2」で初めて実用化させた、マニュアル操作も楽しめる4速AT「ティプトロニック」も選択可能とされていた。

武闘派のポルシェ愛好家からカルト的な支持を得た

そして、そのバリエーションのなかでも新車時代から熱心なポルシェファンに愛され、現在ではコレクターズアイテムと化しているのが「968クラブスポーツ(CS)」だった。

アンダーコート/内装材の削減やドアウインドウの手動化、「RECARO」社製の軽量バケットシート、シンプルなものとされたドアパネル、小型化されたバッテリーと配線ループ、エアコンディショナーの廃止、リアシートやリアワイパーの廃止などの地道な軽量化を積み重ねた結果、対968クーペ比で100kgの軽量化を達成。さらに、20mmの車高ローダウンとワイドな17インチホイールと相まって、サーキット走行にも適応したスペシャルモデルとして、武闘派のポルシェ愛好家からカルト的な支持を得たのだ。

やっぱり“クラブスポーツ”は霊験あらたか?

2024年11月のRMサザビーズ「Munich 2024」オークションに出品されたポルシェ968CSは、1993年モデルのEU仕様車。ファーストオーナーに納車された際に発行されたインボイスによると、ボディカラーは新車当時からブラックで、インテリアもブラックの組み合わせとされた。

そして1993年3月5日にベルギー、リエージュの「TAGポルシェ・センター」社に引き渡され、この段階からオプションとして消火器とラジオが装備されていた。

特筆すべきは、この車両が新車から現在に至るまでワンオーナーであること。今回のオークションカタログに詳細は記されてはいないものの、サービス履歴などは容易に入手できよう。また、このカタログ作成時のオドメーターは6万8365kmを表示していたとのことである。

RMサザビーズ欧州本社は「ポルシェが4気筒エンジンを搭載した最後のフロントエンジン・クーペである968の特別仕様車として人気の高いこのクラブスポーツは、ワインディングロードだけでなくサーキットでも間違いなく快適だろう」という謳い口上とともに、水冷4気筒ポルシェとしてはかなりの高額とも思われる5万ユーロ~8万ユーロ(当時のレートで約805万円〜約1288万円)のエスティメート(推定落札価格)を提示していた。

生産台数がわずか1437台と少ない

そして、2024年11月23日の競売では順当にビッド(入札)が伸びたようで、終わってみれば6万9000ユーロ、当時のレートで日本円に換算すれば約1110万円という、なかなかの高価格で競売人のハンマーが鳴らされることになったのだ。

ちなみに新車当時の日本仕様は、エアコンやパワーウインドウを残した状態で40台のみ正規輸入。車両価格は968ベースモデルが710万円だったのに対して、クラブスポーツは豪華装備の少ないぶん645万円に抑えられていたとのこと。

いっぽう現在の国際マーケットでは、スタンダードの968クーペは安いものでは300万円以下、高いものでも600万円くらいで推移していることから判断しても、市場での価値は完全に逆転したことになる。

968CSの生産台数がわずか1437台(ほかに諸説あり)という希少価値はもちろんだが、それ以上に1980年代以降のポルシェにおける「クラブスポーツ」のプレミアム効果が、たとえトランスアクスルFR+4気筒モデルであっても大きく作用していることを証明しているようである。

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