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たった40台のアストンマーティンが6000万円オーバー! ル・マン24時間優勝40周年を記念した「ヴァンテージ ル・マンV600」とは

31万4375ポンド(邦貨換算約6287万円)で落札されたアストンマーティン「ヴァンテージ ル・マンV600」(C)Courtesy of RM Sotheby's

アストンの野獣! ヴァンテージ ル・マンってどんなクルマ?

RMサザビーズが2024年11月1日にロンドンにおいて開催したオークションは、サザビーズの地元イギリスらしく希少な英国車の出品もいくつか見られました。今回はアストンマーティン「ヴァンテージ ル・マンV600」をピックアップして詳細をお伝えします。

ヴィラージュからV8ヴァンテージ、そしてル・マンV600に進化

アストンマーティン「ヴァンテージ ル・マンV600」は、発売当時、世界で最もパワフルな市販車としてその名を轟かせたスーパースポーツ。そのデビューに先立つこと5年、1993年に登場した「V8ヴァンテージ」のスープアップ版である。

そもそもV8ヴァンテージもル・マンV600も、1989年にデビューした「ヴィラージュ」がベースモデル。1998年にパワーアップ版である「V600」が登場したのちは、さかのぼって「ヴァンテージV550」の名で呼ばれることになるV8ヴァンテージでは、ヴィラージュの5340ccの90度V型8気筒4カムシャフト32バルブエンジンに、英「イートン」社製の機械式スーパーチャージャーを組み合わせて550psに強化。最高速度は200マイル(約320km/h)を標榜した。

また、ボディについてはV550の段階からすでに、ドアとルーフ以外はヴィラージュとはまったくの別モノ。極太のタイヤに適応すべく前後のフェンダーをワイド化したほか、フロントマスクもヴィラン(悪役)感たっぷり。リアもテールランプを丸型4灯にするなど、そのアピアランスは迫力満点なものへと変貌を果たしていた。

5.4リッターV8エンジンを搭載し600馬力を発揮

そして1998年、1959年のル・マン24時間レースにて「アストンマーティンDBR1」を駆ったロイ・サルヴァドーリ/キャロル・シェルビー組が総合優勝を果たしてから40周年を迎えること記念して限定生産されることになったのが「ル・マンV600」である。

この時代、すでに米国フォード・グループの傘下に収まり、ビジネス面で成功を収めつつあったアストンマーティン・ラゴンダ社。ようやく財政的な制限を取り払うことのできたエンジニア陣は、イートン・スーパーチャージャーを装備した5340ccのV型8気筒エンジンを搭載して600psという当時としては驚異的なパワーを実現した。

そしてこの強大なアウトプットパワーは、車両重量1970kgにおよぶ英国製巨大マシンを、0-60mph(約97km/h)加速3.9秒、最高速度「200mph(約320km/h)以上」へと押し上げたのだ。

高貴なブラックに彩られたスーツ姿のビーストは約6287万円

このほどRMサザビーズ「LONDON」オークションに出品された2000年モデルのヴァンテージ ル・マンV600 スペシャル・エディションは、アストンマーティン・ラゴンダ社の旧ニューポート・パグネル工場で40台のみが製造されたうちの37台目であり、右ハンドル仕様の18台のうちの1台である。

そのパワーにふさわしい威圧的な漆黒「ボウランド・ブラック」の外装に「V600ファクトリーパッケージ」と5速クロスレシオマニュアルギアボックス、5本スポークのセンターロック式マグネシウムホイール、スーパースポーツエキゾースト、アップグレードされたHi-Fiシステムを装備して、新車として納車された。

ファーストオーナーは、イングランド北部ウェストヨークシャー州リーズの「JCT600」というアストンマーティン正規ディーラーが行う年次点検のために、このクルマをわざわざ車載トレーラーで運んでいたと伝えられている。

納車から14年後となる2012年6月、このV600は2人目のオーナーによって譲り受けられ、アストンマーティン社「アストンマーティン・ワークス」によるエンジンのフルリビルドが行われた。さらに、キャビンは現在のブラックとマグノリアのコンビカラーのレザーに張り替えられ、電動シートにはブラックのパイピングが施された。

その後、2014年11月に3人目のオーナーがこの個体を取得し、アストンマーティンのスペシャリストとして世界中に名を馳せる「ニコラス・ミィ(Nicholas Mee & Co)」社がメンテナンスを行ったのちに、オークション出品となった。

ヒストリーファイルも添付される

今回の出品に際して、15カ所のサービススタンプが押されたオーナーガイド、純正ツールキット、消火器、ジャッキ、アームレストトーチ、ヒストリーファイルが添付されていた。

新車時代からRMサザビーズの公式カタログ作成時に至るまでの走行距離はわずか9980マイル(約1万6000km)で、RMサザビーズの公式カタログでは「真の“スーツを着た野獣”を手に入れる、とてもレアなチャンス」と謳いつつ、25万ポンド~30万ポンド(当時のレートで約5000万円〜約6000万円)というエスティメート(推定落札価格)を設定していた。

そして迎えた競売ではビッド(入札)がグングン伸びたようで、終わってみればエスティメート上限を突破する31万4375ポンド、当時のレートで日本円に換算すれば約6287万円で競売人の小槌が鳴らされることになったのである。

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