4リッターのエンジンは435馬力を発生
2025年1月24日〜25日にRMサザビーズがアメリカ・アリゾナで開催したオークションにおいて、ポルシェ「911 リマスタード バイ ギュンター ヴェルクス」が出品されました。25台がデリバリーされた911 リマスタード バイ ギュンター ヴェルクスの中でも最後に生産された1台でした。
993型のポルシェ911をベースにチューニング
ポルシェが1997年に、「911」シリーズをタイプ996に進化させた時、多くのポルシェ・ファンは伝統の空冷式水平対向6気筒エンジンの歴史が終わりを告げたことに特別な感情を抱いたに違いない。現在でも多くのファンは、最後の空冷911であるタイプ993をポルシェの独創的なデザインの頂点にあるモデルと考えているだろう。なぜならそれは、現在においても最適な仕様とディメンション、そしてなにより際立った性能を実現したモデルであるからだ。彼らは911の純粋主義者であるとも表現できる。
そのような熱狂的な空冷911ファンのために、機械的にも審美的にも993を超えたモデルを再構築するメーカーが、ここ最近いくつか誕生している。ここで紹介する、カリフォルニア州ハンティントンビーチのギュンター ヴェルクスは、その中でもとくに注目すべき存在だ。彼らは現在までに4つのビルドプランをカスタマーに提供してきた。
ベースはいずれも993型911で、「ターボ」「スピードスター」「カレラ」のほかに、最新の「GWR」がそれに加わる。これらのプログラムはいずれも生産台数が限定されており、ターボは75台、スピードスターとカレラは各々25台。そしてGWRは40台がその数字である。ちなみにスピードスターとカレラはすでに全量を生産済みであるから、それを入手することは現在では非常に難しいのが現状といえる。
カーボンパーツをふんだんに使用
そのギュンター ヴェルクスによる「911 リマスタード バイ ギュンター ヴェルクス」(同社はポルシェとの間で、911の名称を使用する法的合意を得ている)が、RMサザビーズのアリゾナ・オークションに登場した。エスティメート(推定落札価格)は90万ドル〜110万ドル(邦貨換算約1億4130万円〜約1億7270万円)を掲げていたが、今回は97万5000ドル(邦貨換算約1億5208万円)で応談とされた出品車は、25台がデリバリーされた911 リマスタード バイ ギュンター ヴェルクスの中でも最後に生産された1台。ベースは1995年式の993型911カレラとなる。
このカレラ・プログラムでは、まず持ち込まれたベース車は分解され、圧倒的な量のカーボンファイバー・パーツが再装備される。多数のボディ外板パネルや内部コンポーネントがこの軽量な複合材に交換され、その外骨格を支えるため、ギュンター ヴェルクスは調節式のコイルオーバーとリモートリザーバー、カスタムリアコントロールアーム、強化アンチロールバー、強化アップライト、フロントストラットブレースを組み合わせた、強力なサスペンションセットアップを開発した。
ラグナセカのラップタイムはマクラーレンP1のわずか0.2秒落ち
リアに搭載されるエンジンの強化も徹底している。実際にそのチューニングを担当したのはオレゴン州シャーウッドのロススポーツ・ロード・アンド・レースで、排気量は4Lにアップされ、さらに鍛造内部部品やレース仕様の機器が数多く搭載されている。
その中には2ステージのMoTecエンジン・マネージメント、シリンダーごとに独立したスロットルボディ、996シリーズのGT3に基本を見出したインテークプレナムに基づくカスタムインテーク設計などが含まれる。結果、最高出力は435psを得るに至り、最大トルクは423Nmを得ることに成功した。
組み合わされるトランスミッションは、ゲトラグ製の6速MT。こちらも内部構造をさらに強化したほか、フライホイールの軽量化やクラッチを997型911の第2世代GT3 RSから受け継ぐなど、その強化策には驚かざるを得ない。
このようなギュンター ヴェルクスの努力の成果は、2020年ラグナセカのウェザーテック・レースウェイで、1分30秒99というラップタイムを記録したことで、見事に証明されることになった。これはマクラーレン P1のラップタイムから、わずかに0.2秒落ちというもの。
今回オークションに出品されたカレラは、「レンシュポルト・アヴェンチューラ」とネーミングされた1台。保管されている製造シートによると、その製造費用は77万8888ドル(邦貨換算約1億2150万円)に達したという。2022年のクエイル・モータースポーツ・ギャザリングにも展示された、まさにギュンター ヴェルクスを象徴するこのモデルの走行距離は、RMサザビーズによれば納車時と同じ、とのこと。もちろん新しいオーナーは、即座に運転を楽しむことができるのは当然である。
