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北米仕様のE36型 BMW「M3」が約1390万円で落札! エンジンが違うのにのなぜ? 理由はワンオーナー/ローマイレージだけじゃない!?

8万9600ドル(邦貨換算約1390万円)で落札されたBMW「M3」(C)Courtesy of RM Sotheby's

もはやアメリカ仕様であっても安価じゃない? BMW M3について

アメリカでは、冬の避寒リゾート地として知られているアリゾナ州スコッツデール。およびその近隣の大都市フェニックスでは、毎年1月下旬に複数のオークションハウスが大規模なオークションを一堂に開催。新しい年のクラシックカー/コレクターズ市場を占う、年始の恒例イベントとなっています。なかでも、クラシックカー/コレクターズカーのオークションハウスとしては最大手と目されるRMサザビーズ北米本社がフェニックス市内で開催する「ARIZONA」オークションは、規模・内容ともに、1月のアリゾナのオークション群の中でも最上級のものとして知られています。今回は2025年版の出品車両の中から、近年人気のヤングタイマー・クラシックのなかでもドイツ代表の一角を占める、E36世代のBMW「M3クーペ」をピックアップ。その概要と、注目のオークションレビューをお届けします。

現在に至るM3伝説の中興の祖、E36系M3とは?

悠久の自動車界においても、BMW「M3」のような血統と魅力を持つモデルは決して多くはない。

その開祖にあたるE30系M3は、独DTM選手権やETC選手権などのツーリングカーレースにてメルセデス・ベンツ「190E 2.3-16」を凌駕するべく登場したホモロゲーションスペシャル。そして、その楽しいハンドリングに力強い4気筒DOHCエンジン、さらにレーシングカーのようなルックスによって、またたく間にファンを獲得してゆく。

そのビッグネームを継承する2代目としてE36系「3シリーズ」をベースとした新生M3は、BMW伝統の直列6気筒DOHC 24バルブエンジンをボンネット下に搭載して、1992年にディーラーフロアに登場することになる。

北米向けのE36系M3はマーケットが若干低い評価?

E36系以来、3シリーズの2ドアモデルは正式に「クーペ」を名乗るようになり、E30時代のサーキット志向のリアルスポーツセダン、というよりはグランドツアラー的クーペに近いこの新型モデルは、快適性と洗練性を高めると同時に、とくにヨーロッパ仕様では286psという絶大なパワーを獲得していた。

ところが、アメリカ交通当局の規制により、このM製エンジンは北米では販売されなかった。そこで「S50B30US」なる専用コードナンバーのもと、通常の3シリーズ/5シリーズ用「M50」エンジンを「M」監修でアップグレードした北米仕様専用エンジンが開発されたものの、そのパワーは240psと欧州/日本仕様よりも46ps低いものとなされてしまう。

そんないきさつもあって、これまで北米向けのE36系M3はマーケットにおいても若干低い評価がなされるのが長年の通例と化していたのだが、昨今のヤングタイマー・クラシック人気にあって、初代以降のM3すべてが価格高騰している状況から、いかなる判定が下されるかについては、なかなか興味深いものがあったのだ。

>>>アルピナとM5を特集! BMW専門誌「BMW LIFE3」はこちら(外部サイト)

ひと昔前は安価だったはずのアメリカ仕様E36系M3が……!

このほどRMサザビーズ「ARIZONA 2025」オークションに出品されたBMW M3は、このモデルのイメージカラーでもある「ダカール・イエロー」の1995年式。過去30年近くにわたり、たったひとつの家族によって所有されてきた、まさにタイムカプセルともいえる個体という。

前席のシートヒーター、電動スライディングルーフ、オンボードコンピューター、5速マニュアルトランスミッションなど、数々の魅力的なオプションが装備されたこのM3は、インテリアのウッドトリム、エクステンデッドレザー、センターアームレストつき電動スポーツシート、クルーズコントロール、クローム仕上げのインナードアハンドルなどによって構成される「ラグジュアリーパッケージ」を追加することで、E36世代の大人っぽさを完全に体現している。

エクステリアでは、フロントバンパースポイラーに設けられたロワーインテークのメッシュインサートに代わって、2本のバーを備えた専用パーツに変更されたほか、じつはサイドスカートの造形も若干ながらシンプルなものへと変更。そのかたわら17インチの「M コントゥアー」キャストホイールが標準装備されているのは、当時の欧州/日本向けM3と変わらない。

この個体は、過去30年間にほとんど走行に供されることがなかったため、オークション公式カタログ作成時の走行距離は、わずか4832マイル(約7730km)。その結果、このM3クーペは驚くほどに保存状態がよく、まさにコレクター垂涎の1台となり得ている。

車両とともに保管されている2021年の請求書には、前後輪ともにブレーキパッドとローターが新調され、4本の新品タイヤが装着されていることが確認できる。また2023年5月には、クラッチのスリーブシリンダーも交換されている。

このオークション出品に際して、RMサザビーズ北米本社は

「E36系M3は、歴代M3の神聖な系譜を受け継ぐ唯一無二のモデルとして、BMWコミュニティからの尊敬を集めている。走行距離も少なく、装備も充実しているこの個体は、次のオーナーに多くの楽しみをもたらすに違いない」

というPRフレーズを添えて、5万ドル~7万ドル(邦貨換算約785万円〜約1099万円)のエスティメート(推定落札価格)を設定。

そして2025年1月25日に開催された競売では、エスティメート上限を大幅に上回る8万9600ドル。つまり現在のレートの日本円に換算すれば、約1390万円で壇上の競売人のハンマーが鳴らされることになったのだ。

この落札価格は、純正「M」社製286psフルパワー直6エンジンを搭載するヨーロッパ仕様のE36系M3にも遜色のないもの。今回の出品車両がイレギュラー的な高条件を備えていたからなのかもしれないが、国際マーケットにおけるM3の価格高騰の影響もまた、今回の高価格の理由に含んでおくべきと思われるのだ。

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