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プジョー新型「3008」の日本ローンチの準備は整った! 若いころ「206」や「306」に乗っていた人に超オススメです【AMW編集長コラム】

プジョー新型3008:3本の爪痕のようなシグネチャーライトは、プジョーであることを強烈にアピールする

プジョー新型3008が欧州で絶好調です

2024年5月より欧州マーケットに導入されたプジョー新型「3008」の実車を検分する機会を日本国内で得ました。欧州での販売台数はすでに10万台を突破。どうして新型3008は欧州でウケているのか、そして日本にはどのパワートレインを引っ提げて上陸するのか、リンダ・ジャクソン プジョーCEO(取材当時)から直接お話を伺ってきました。

没個性な昨今の自動車デザインに未来はある?

目黒通りを走っていて、最近のクルマはどれも似ていて見分けがつかないと感じることが多くなった。クルマのデザインには時代におけるトレンドがあり、それはテクノロジーと密接な関係があったりする。前世紀末期、国産車を見て「欧州のあのブランドに似ている」と思うことはあったけれど、某ドイツプレミアムブランドのクルマの後ろ姿を見て、エンブレムを確認するまで日本のプレミアムブランドのクルマだと勘違いしたり(逆もまたあり)、ヘッドライトを見てイタリアブランドのクルマだと見間違ったりするなんてことは、少なくともなかった。

もっとも国産ミニバンや軽自動車に至っては、シルエットからデザインまで、同じようなクルマが路上に溢れている。没個性と切り捨てるのは簡単だけれども、目黒通りを走っているクルマを見て、かつてのようなワクワク感を抱かなくなったのは自分がそれだけ年齢を重ねてしまったせいなのだろうか。それともグローバリゼーションが進んだ末の均質化の賜物なのだろうか。

実はプジョーも「モビリティの未来は、期待したほどエキサイティングではない」と分析している。プレゼンテーションのスライドには、その理由に「同一性」「ロボットが支配する」「複雑で規制が多い」という3つを挙げていた。

ざっくりとプジョーの主張を要約すると、私が常々感じているように、クルマのデザイン上の差異が見受けられなくなっており、自動化やAIその他テクノロジーが進むにつれてロボットに支配されているようで、人間(ドライバー)の果たす役割はどうなっていくのか? と懸念しているようだ。そしてスピードカメラによる取締りや駐車規制にはじまり、エネルギーの移行期間──CO2排出規制などがある複雑な時代において、クルマの楽しみなどどこにあろうか、クルマにはもうワクワクの未来なんてないんだ、ということらしい。

しかし、こうした時代においてなお、プジョーは違ったもう一つの未来を作ることが可能であるという。キーワードは「Pleasure(楽しみ)」。この〈楽しみ〉がすべての経験の核にあるようなものを提供できるという。「駆け抜ける歓び」は、もう何十年も昔のBMWの有名なキャッチだ。プジョーの考える〈楽しみ〉とは、どのような〈歓び〉をもたらしてくれるのだろう。

プジョーが考える「楽しい」クルマの未来

ところでなぜ〈楽しみ〉が必要なのか。それは人は日々、運転するときにも常に〈楽しみ〉を求めているから。プジョーでは、テクノロジーやイノベーションはあくまでも人生を楽しむための一助であると考えている。つまり、人生を楽しんだ先にある〈歓び〉をいかにしてカスタマーに届けるか、というのがプジョーのこれからの大切な命題であるようだ。そして、その命題を導き出すために必要なものが、「ALLURE(シャープなデザイン)」「EMOTION(直感的な運転体験)」「EXCELLENCE(妥協のない品質)」である。

なんだか形而上的でヨハン・ホイジンガの『ホモ・ルーデンス』が頭をよぎってしまうあたり、いかにもフランス的な……ともいえるが、それぞれどのようなことをプジョーは定義づけているのであろうか。

「ALLURE」は、簡単に言ってしまえば、アピアランスのこと。プジョーのクルマをただ眺めるだけで胸が高鳴る〈歓び〉を指す。フレンチブランドであるため、エクステリアやインテリアのデザインは非常に大切とプジョーも認めている。エクステリアではネコ科の動物による三本の爪痕のようなシグネチャーライトが他のクルマとのデザイン上での差別化に貢献しており、没個性的な昨今のクルマのなかにあって、ひと目でプジョーと分かる。好き嫌いはともかく、見ていてワクワクさせられるデザイン。そして、インテリアでは12年前から採用されているi-Cockpitは、非常にユニークで唯一無二のアピアランスである。

そして2番目の「EMOTION」はドライビングエクスペリエンス──運転する〈歓び〉のこと。これにはi-Cockpitが重要な役割を担っており、ハンドルを握ったときに伝わってくる楽しさ、そしてドライビングエクスペリエンスを差別化するものである。特徴的なコンパクトなステアリングホイールが、クイックでダイナミックなドライビングエクスペリエンスを可能とし、運転していて楽しいという感覚が湧き上がってくるのである。

最後の「EXCELLENCE」は、技術・品質そして効率を指しており、それらが高度なレベルで維持されているからこそ、所有する〈歓び〉も湧くというものである。

まとめると、目で見ても楽しく、運転していても楽しいという感覚があり、さらに持続性があり長い間楽しめる──つまりワクワクの〈歓び〉がある、というのがプジョーの主張である。そしてこれらがすべて揃ったとき、プジョーのいうところの強烈な魅力、胸の高鳴り──「ALLURE」となって、磁石のようにカスタマーを引き付ける、というわけだ。以上が、プレゼンを受けて私が解釈したプジョーの新たなエスプリ(精神)である。

プジョーはこれから日本市場にどうアプローチするのか

プジョーがこれから向かうベクトルがわかったところで、実際の日本での販売戦略についてはどうなのだろうか。

日本におけるプジョーは、どちらかといえばエンスーなクルマ好きが選んでいたメーカーというイメージもある。また一方で身の回りのデザインにもこだわる、自分のスタイルを持っている人が積極的に選ぶメーカーだったかもしれない。デザイナーやアパレル関係といったファッション感度の高い人種が乗っているというイメージもある。

プジョーでは、カスタマーが「いま、なぜ、プジョーを買うのか」という理由に、デザインをあげている。先述したように、同じようなクルマばかりのなか、とくにデザイン上での差別化を図っているのがプジョーだ。エクステリアでは、たとえば夜見るとすぐにプジョーだと分かるライトシグネチャーなどで、きちんと個性が出るようにしている。インテリアではi-Cockpitは非常にユニークで、インテリアデザインを重要視するという日本のカスタマーにもおおいに受け入れられている。

世界147カ国で販売されているプジョーをグローバルな視点で見たとき、たとえば欧州ではステランティスグループ内での販売の3台に1台はプジョーなのだそうだ。この成功の理由は、EVのラインアップを非常に多彩な車種(12モデル)で展開している点にある。特に欧州ではBセグメント──208、2008が販売の筆頭で、EVのバンも欧州でもっとも売れているという背景がある。2024年には5つの新しいCセグメントのEVを出したことも大きく貢献しているようだ。

では、その欧州での成功をそのまま日本でトレースするのかといえば、そうではない。プジョーはグローバルブランドではあるが、ブランドとしての全体を作るものの、一つ一つの市場、日本市場にとっての最善を深く考えて、導入するモデルを吟味するとのこと。

たとえば、欧州での成功の鍵の一つとなっている電動化戦略であるが、欧州と同じラインアップ展開をしても失敗することは、すでに他の欧州ブランドが苦戦しているところを見ても明らかである。ノルウェーのように98%が電動化を達成しているような国ならともかく、BEVが日本でのメインストリームになるのはまだまだ時間がかかりそうだ。プジョーとしてもそこはよくわかっており、BEVを推し進めたいという思いはあれど、まずはもっとも人気のあるハイブリッドで展開していくとのことである。

新型3008が日本で売れるべくして生まれた1台

さて、ここでようやく実車を拝見させてもらったプジョー新型「3008」に話を収斂していこう。

日本市場におけるクルマが売れるキーは、デザインであるといった。3008はいま世界規模で流行っているSUVであるが、ファストバックSUVというこれまでにないカテゴリ──デザインのクルマだ。たとえばクロスオーバーSUVとも違う。真横から3008を見ると、ルーフからリアへとなだらかに傾斜するラインがスパッと切られたようなフォルムが斬新だ。コーダトロンカとでも言えばいいだろうか。初めて実車を眺めたとき、アルファ ロメオ「RZ」のサイドビューが最初に思い浮かんだ。しかし、3008はそれよりもちろん背が高い。たしかに何にも似ていないデザインであると言うことはできる。

それにフロントの3本のライトシグネチャーは、どう見てもプジョー。i-Cockpitを採用したインテリアに身を置くと、必要な機能がすべて手元にあり、特徴的なステアリングホイールや助手席側とはまったく見え方が異なってくるセンターコンソールのデザインなど、何にも似ていないデザインコンシャスな雰囲気。デザインを重視するという日本の目の肥えたカスタマーにも十分に納得してもらえるつくりである。

新型3008は「STLA Medium(ステラ・ミディアム)プラットフォーム」を使った最初のモデル。ステラ・ミディアム プラットフォームでは、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、BEVを作ることが可能となっているのが特徴だ。新型3008は欧州ではBEVがメインであるだろうが、日本ではハイブリッドを主力として販売する。これは先に述べたとおり、日本市場での最善を考えた結果である。

もちろん、新型3008の斬新なスタイルに惹かれてハイブリッドモデルを購入した新規顧客が、点検や整備などでディーラーショールームを訪れるようになり、プジョーのBEVの世界へと興味を持ってもらえるに越したことはない。まずは、ハイブリッドモデルで新たなカスタマーとのタッチポイントを作り出していくことが、いま日本におけるプジョーにとってもっとも大切で急務なことであろう。

【AMWノミカタ】

リンダ・ジャクソン プジョーCEO(取材当時)のプレゼンテーションで、プジョーが描いている日本市場での展開と新型3008をいかにしてセールスしていくかの道筋はわかった。順を追った理論は理路整然としていて、数多くの新型3008が日本の公道を走る姿をイメージすることはできた。

あとは、いかにローンチするか。プジョーを知らない新規カスタマーだけでなく、1990年代〜2000年代初頭にかけてプジョーが日本国内販売右肩上がりだった頃に、一度はプジョーを購入した人たちにいかに振り返ってもらうかが鍵となるだろう。当時20代〜30代でプジョーのオーナーになった人たちが、いまや40代〜50代というミドルエイジとなっている。新車で新型3008を購入するボリュームゾーンとなるはずだ。

内装のパネルが外れたり、日本車では考えられないトラブルに見舞われても、「やっぱ猫足だよね〜」と、笑ってプジョーを走らせる愉しさに一度は取り憑かれた人たちに告ぐ。ドライビングする愉しさに溢れていて、さらには欧州車好きに刺さるようなボディラインを持つ新型3008を、次の愛車リストにぜひ入れてみてはいかがだろう。

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