光岡の技術革新の基礎を築いたクラシック風クーペ
光岡が自動車メーカーとして正式に認められる前に、マイクロカー、パイクカーを経て生み出されたのが「ラ・セード」です。そのベースは、当時の最新車である日産5代目S13型「シルビア」だったことも話題となりました。光岡がオリジナルフレームやモノコックボディ製作といった技術を得るきっかけとなったラ・セードを紹介します。
現代車のスペックでクラシックスタイルを楽しめる
光岡「ラ・セード」は、1990年に誕生。ベースは日産5代目S13型「シルビア」で、バブル当時はホンダ「プレリュード」とともに、「デートカー戦争」を巻き起こしたスポーツカーだ。
ラ・セードは特注の延長フレームを製作し、そこにシルビアのエンジン、フロントアクスル、モノコックボディを搭載。その結果、ノーマルのシルビアのホイールベースが2475mmなのに対して、ラ・セードは900mmも延長された3375mmを獲得。ボディはFRPで製造されているが、内装類はほぼシルビアのまま。これにより、見た目はクラシックカー、中身は最新車というカスタムカーが世に生み出された。
なお、初代ラ・セードは、1993年まで生産された。5代目シルビアといえばSR20型エンジン搭載を想像するかもしれないが、この初代ラ・セードは最初期の排気量1800cc、CA18型搭載車のみしか存在しない。その後、2000年に2代目ラ・セードが登場。この時は、7代目S15型シルビアがベースとなったため、エンジンは排気量2000ccのSR20DE型が搭載されている。
資料によると、初代ラ・セードは500台、2代目は100台のみ限定生産されている。2004年のファイナルモデルで本革シート装備特別限定仕様車が3台のみ発売されたそうだが、いずれにしてもラ・セードが希少車であることに変わりはない。
十数年にわたった夢のクルマの情報収集
2024年10月12日に広島市西区観音新町の広島マリーナホップで開催された光岡自動車主催の「オーナーズミーティング」に参加していたラ・セードのオーナーは、“プロフェッサー”さん。愛車の年式は1990年式の初期型で、ムーンルーフ付きのモデルだ。
「若い頃からこのデザインに興味があって、いつか乗ってみたいなと思っていました。でも、その欲しいという感覚は“宝くじが当たったら買おうかな”ぐらいの気持ちで。お金を貯めて絶対に手に入れよう! という強い意志は、正直ありませんでした」
それでもラ・セードに対しての興味が失せることはなく、時間さえあれば中古車を探す日々。どの地域にどんな個体が売られているのか。そういう情報収集を趣味として、十数年にわたって続けていたのだそうだ。
「数年前にたまたま近隣で、中古車の在庫を発見したのです。憧れのクルマだしお店も近いから、ちょっとだけ見に行ってみようかなと足を運びました。でも、すでに私は結婚して家族がいたので、ファミリーカーとして所有するのは無理がある。かといって趣味グルマとしてもう1台所有するのもどうなのか、と。そのため、私にとってのラ・セードは夢のクルマでしかなかったのです」
奥さまの後押しが夢への実現に
「そんなに気になるのなら、買ってもいいんじゃない?」
中古車を見に行こうとしていたときに、奥さまがかけてくれた言葉がこれだった。自分への投資と考えてももったいないという“プロフェッサー”さんの自己判断とは真逆の、まさかの意見だったのだ。
「今まで仕事や子育てを頑張ってきたのだから、次のステップとしてモチベーションになる何かを手に入れてもいいんじゃない? というのが奥さんの意見でした」
「ラ・セード」とは、“Life(人生)”、“Second Dream(第2の夢)”という、2つの言葉の頭文字から名付けられた造語である。“プロフェッサー”さんは、愛車に託された意味そのものの人生を奥様の後押しで実現できたことになる。
「仕事、子育て、家事など奥さんと一緒にやって来たことに対して、評価をしてくれた結果なのではないかと。奥さんには本当に感謝しています!」
クルマ趣味は、家族の理解は得られない。そんなことをおっしゃっている男性の皆さんにとっては、耳が痛いエピソードかもしれない。
>>>2023年にAMWで紹介されたクルマを1冊にまとめた「AMW car life snap 2023-2024」はこちら(外部サイト)
