価値が認められるにはもう少し時間がかかる?
2025年2月4日〜5日にRMサザビーズがフランス・パリで開催したオークションにおいて、フェラーリ「365GTC/4」が出品されました。出品車はアズーロ・ハイペリオンのボディカラーで出荷。6人目のオーナーの手により現在のダークブルーに塗装された1台です。
ピニンファリーナの真骨頂といえるエクステリア
あらためてRMサザビーズが開催した、2025年のパリオークションでの姿を見ると、その美しい曲線で仕上げられたスタイリングは、とても魅力的なものに感じられる。それは1971年に開催されたジュネーブショーでフェラーリが発表した「365GTC/4」で、その目的は「365GTC」、あるいは「365GT 2+2」の後継車となることにあった。
ボディデザインを担当したのは、もちろんピニンファリーナである。当時はいわゆるウェッジ・デザインが流行の最先端にあり、さらにフロント・セクションの鋭さを強調するために片側2灯、左右合計で4灯式のヘッドライトが、リトラクタブルタイプで装備された。
フロントから後方に流れるラインの美しさは、まさにピニンファリーナの真骨頂ともいえるフィニッシュ。ボディはスチール製だが、軽量化のためにボンネットとトランクリッドの素材にはアルミニウムが選択されている。前後のホイールは、5本スポークのセンターロック方式だが、一部市場向けにはボラーニ製のワイヤーホイールがオプション設定された。今回の出品車はもちろん前者のホイールを装着する。
約500台が生産された365GTC/4
365GTC/4の最大の特長といえるのは、キャビンの後方に2名分の後席を備えていることだろう。わずか2500mmのホイールベース、しかもフロントには長大なV型12気筒エンジンが搭載されることを考えると、そのパッケージングには大きな評価を与えなければならないが、実際にはその後席は小さな子供がようやく着席できるといった程度のもの。実質的にはこの後席を収納して、ラゲッジルームとして使う例が多かったようだ。
フロントに搭載されるV型12気筒エンジンは、4390ccの排気量を持つもの。各バンクあたり2本のカムシャフトを持つ、いわゆるDOHCで潤滑方式はウエットサンプとなっている。参考までにこのエンジンの型式は、ティーポ「F101AC000」。エンジン型式の最初に「F」の文字が掲げられたのは、この365GTC/4からとなる。
注目の最高出力は320ps。これはヨーロッパ仕様もアメリカ仕様も変わらない数字だったが、後者には電子制御の点火システムを始め、独自の機構が数多く採用されている。組み合わせられるトランスミッションはオールシンクロメッシュの5速MT。そして365GTC/4は、1971年から1972年にかけて、約500台が生産されたという記録がマラネロには残っている。
一時期、行方不明になっていた!?
今回の出品車は、そもそもマラネロからアズーロ・ハイペリオンのボディカラーで1971年10月に、パリの著名なフェラーリ・ディーラーであるシャルル・ポッツィに出荷されたもの。ファースト・オーナーはフランスのジャーナリスト兼TVプロデューザーのジャック・マルタンで、彼はこのモデル(S/N:14493)を3年間所有したのち、ほかのカスタマーに譲渡。
1985年には5代目のオーナーとなったジャン・グレグイがそれを購入するが、それから4カ月後に盗難に遭い、5年間行方は不明のままだった。それが発見されたのは1990年のことで、1992年には現在の所有者であるジャック・マルコッティの手にわたった。
マルコッティはボディカラーをダークブルーにリファインするなど丹念にそのリファインを進め、1997年のフェラーリ社創立50周年式典にも展示されることになる。そして2014年、今回の出品者であるキュレーテッド・コレクションのコレクションに加わったのだ。
RMサザビーズが20万〜25万ユーロ(邦貨換算約3200万円〜4000万円)とした予想落札価格に対して、入札者たちの365GTC/4というモデルに対する反応は、必ずしも良いものとはいえなかったようだ。最終的な落札価格は、18万4000ユーロ(邦貨換算約2945万円)。その価値が認められるまでには、まだまだ時間が必要というわけなのだろうか。
