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新型スバル「フォレスター」に辛口モータージャーナリスト試乗!「曲がるSUV」と思わせた実力とは

スバル フォレスター X-ブレイク S:HEV EX

パワーユニットは2.5LストロングHEVと1.8Lターボの2タイプ

6代目スバル「フォレスター」が北米での発表から遅れること約1年半。いよいよ日本にも導入されました。注目は2.5Lエンジンに電気モーターを組み合わせたストロングハイブリッドを投入。今回は千葉県にあるサーキット「袖ヶ浦フォレストレースウェイ」でフォレスター(プロトタイプ)の試乗インプレッションをお届けします。

ボディサイズは日本でも扱いやすい

トランプ関税が世界を騒がせている中、影響甚大な日本の自動車メーカーであって、とくに北米での販売が主力となっているマツダやスバルは、先行きの不透明感に不安を抱いていることだろう。

そうした最中にあっても、スバルは北米で新型アウトバックやBEVの新型トレイルシーカーや改良型ソルテラなど、ニューモデルを矢継ぎ早に披露している。一方、日本では、2025年4月17日に、1997年登場の初代から数えて6代目、先代からは7年ぶりのモデルチェンジとなる新型フォレスター(日本仕様)を発表した。

フォレスターの圧倒的な主力市場である北米では、先行で新型を2023年11月に発表していたので、その姿をWEBなどで見た方もいると思う。北米向けの新型フォレスターは、インディアナ工場で生産される。輸入扱いとなるパーツやアッセンブリーはあるにせよ、それでもトランプ関税の影響は抑えられそうなことが安心材料だ。

日本では発売に先駆けて、3月にクローズドコースでプロトタイプ試乗会がメディア向けに開催され、我々にはこれが実質的なお披露目となった。

ボディサイズは、先代からプラットフォームは基本踏襲ということもあって、ホイールベースは2670mmと同一。ただしレヴォーグなどが採用するフルインナーフレーム構造を新たに導入している。

全長と全幅は、ともに15mm増えた4655mm、1840mm。北米向けがメインでありながらもほとんど拡大されていないのは、日本での道路事情、扱い易さを思うと喜ばしいことが思えている。

ボディサイズ以上の室内空間を確保

そのスタイリングは、ドライバーから前後左右の直近までよく目視しやすいという0次安全を重視するスバルだけに、デザインに対する制約も多いということになるのだが、先代以前の歴代フォレスターのエッセンスも感じさせつつまとめあげているといった印象。

また、これまでヘッドランプやテールランプに、水平対向エンジンのピストン配置をイメージしたコの字型デザインを採用してきたが、新型フォレスターはそこからは決別して、新しいデザインフェーズに入ったようだ。これだけでは「らしさ」には結びついていないが、そこは今後の展開次第だろう。

フォレスターの特徴のひとつに、ボディサイズから想像する以上の室内空間の広さがあるが、新型でもそこは着実に受け継がれている。

視界の広がり感は前方、側方とも増している。前方に関しては、不使用時のワイパーも視野に入らないように収まる設計とされている。もっとも、このタイプのワイパー配置に関しては、近年のホンダが一足先に現行フィット以降、新型車の多くに採用している。数年前ではあるが、そのホンダは、スバル車から視界の在り方を勉強させてもらっているという趣旨を伺った記憶がある。

エンジンは2種類を用意

インテリアは、クロストレックなどと同様にインパネ中央部に11.6インチセンターディスプレイパネル&インフォテイメントシステムが採用された。インパネ上面を水平基調でスッキリとさせつつも、要所にヘキサゴンパターンをあしらえるなど、機能性の中にデザイン性を盛り込んだものとなっている。

パワートレーンは、先代の2Lのe-BOXER(マイルドハイブリッド)に代わり、すでにクロストレックに搭載されている2.5LミラーサイクルエンジンにトヨタのTHS方式をベースとしたハイブリッドのe-BOXER(ストロングハイブリッド)と、1.8L DIT(直噴ターボ)の2種。駆動方式はいずれもプロペラシャフトで前後駆動をつなぐ機械式フルタイムAWDとなる。

ただし、ストロングハイブリッドは、走行状況に応じてAWDカップリングを解放して前輪駆動とする。これは駆動抵抗を減らして燃費性能向上を目的としたものだが、直進走行時でほぼ一定速かつ低負荷といった限定的条件において、スバルとしてはそこを積極的に表に出す気持ちはなさそうだ。

オールシーズンタイヤを装着

コースでの試乗車には、2.5Lストロングハイブリッド(グレード名にS:HEVが付く)の価格面で最上位となるプレミアムS:HEV EXと、1.8L直噴ターボのスポーツ EXが用意されていた。

ちなみにグレードは1.8L DIT車がスポーツ、ストロングハイブリッド車がプレミアムとX-BREAKで、それぞれに、アイサイトXを標準装備する上位モデルのEXがある。

試乗の場である袖ヶ浦フォレストレースウェイは、コースは屈曲と勾配には富む反面、じつは舗装面がスムースで乗り心地の子細な動きやロードノイズなどの評価にはあまり適さない。

そこで感じとれる範囲での話だが、第一印象として室内の静かさとフラット路面においても乗り心地は先代を確実に凌ぐと思えた。ひとクラス上とまでは言えるかはともかく、先代よりも上級感を備えたことはすぐに感じとれるくらいの差はある。

タイヤはスポーツとX-BREAKが18インチ、プレミアムは19インチ。サイズの違いに関わらずオールシーズン(スノーフレークマーク無し)だが、サーキット走行でトレッド面が荒れ始めていた状態においても、走り出しの際にゴロゴロ、ガサガサといった転がり感が伝わってきにくい。とくにモーター駆動で動き出すストロングハイブリッドにおいては、そこがよりわかりやすく伝わり、スバルが言うところの「動的質感」の入り口から上級移行を感じる。

動力性能は、e-BOXERの2Lマイルドハイブリッドを搭載した先代に対して、新型の2.5Lストロングハイブリッドは約100kg(オプションの大型サンルーフ装着車はさらに30kg増)の車重の増加分を補うに十分以上の発進加速力、追い越し加速などで、アクセルの踏み込み初期の加速など、いずれもが余裕を得られている。

2.5Lストロングハイブリッドの駆動用モーターの最高出力は88kw(119.6ps)、最大トルクが270Nmと、先代の2Lマイルドハイブリッドのモーターの10kw(13.6ps)、65Nmとは比較にならないほどに高性能化されているのだから当然ではある。そこに加えてエンジンが主体になる走行領域での絶対的なトルクの大きさと、それによる曖昧感を伴いがちなエンジン回転数の変動をできるだけ抑えているようには見受けた。

内燃機関車らしい小気味良い加速感を盛り込まれている

今回はステアリング上のスイッチで切り替えられる走行モードはIモード、Sモードともに試しつつ、大半をDレンジに任せきりで走らせたが、パドルでのマニュアルシフトライクな動作もきっちり可能。変速操作によるドライバーの意思尊重も得られる。このあたりもチェーン式CVTで感覚、官能性能の作り込みに苦労してきたスバルらしい面だ。

一方で、基本的に先代とエンジン性能値が変わらない1.8直噴ターボ搭載の「スポーツ」は、約70kg(大型サンルーフ横着車はさらに30kg増)重くなっている分、動力性能面では少し大人しくなっているように感じさせる。

ただ、室内に侵入するエンジン音が抑えられ、サイドのガラスの板厚を増し、静かになったことでロードノイズなど、走行感覚面で上質さが加わっている。これが実際の動力性能の差以上に、いわば「速さ感」が削ぎ落とされた印象に繋がっている。

サーキットでは、どうしても動力性能に目が行きがちになってしまう。けれども、リアルワールドでは、加速の質や感覚、それにドライバビリティの方が大切だ。そうした点からは、300Nmという最大トルクを持ちながらも、CVTの擬似ステップシフトにより、ICE(内燃機関)車らしい小気味良い加速感を盛り込んでいるあたり、永年の価値観による走りの楽しさは上手く盛り込まれているように思う。

なによりもリアルワールドで本質を確かめてみたいと思うことになったのは、ハンドリングと乗り心地のバランスにあった。まず、このスムースな路面においても、これまでのスバル車に比べても、路面からの微小入力域でも足が細やかに、しなやかに動くことは間違いない。

カーブでVDCがかなり早期から介入…

サスペンションストロークとフルバンプの際の受け止め方などを知るべく、わざと縁石に片側前後輪を乗せるラインどりで走らせて見たが、こうした際も足がスーッと縮み、そして伸びて収束する。つまり乗員にも優しい。

反面、ロールは1.8L DITのスポーツでも深い。ブレーキングからコーナー進入にかけて、ダイアゴナル(対角線上)に外側の前輪が沈み込み、内側の後輪が浮き上がり気味の姿勢になっていることが伝わってくる。

前輪に荷重がスムースに乗っていくので、旋回初期から前輪が曲げる方向の力を発生しやすく「おお。曲がるな〜」と素直にクルマは向きを変えていく。

少し気になったのはこの先。時に後輪側が思いのほか早い段階で接地限界を越えていく仕草をみせるのだった。とくにパイロンスラロームのように、急激に深いロールとヨーの変化を伴う動きでは、このリアの滑り出しを抑えようとVDCがかなり早期から介入してくる。

安全上からは、早めに介入して強制的に車速を落とし制御するというのはセオリーなので、その在り方自体は正しいのだけれど、この種のテストを多く経験してきた身からすると「もうこの段階で強く介入?」と、ちょっと物足りなかった。まったく同じ感想を述べた同業者がいたことからも、たまたま起きた現象ではなさそうだ。

サイクリスト対応歩行者保護エアバッグが全モデルに標準装備

その一方で、サマータイヤに比べればドライグリップ性能では劣ることになるオールシーズンタイヤであること(フォレスターのキャラクターには相応しい)もあるし、クローズドコースといった走行環境は、得てして限界を超える域に容易に達しやすいことなども踏まえて、いずれ再チェックしたいと思う。

ちなみに、日本仕様の新型フォレスターには、先代に標準装備だった歩行者保護エアバックから発展したサイクリスト対応歩行者保護エアバッグが全モデルに標準で備わる。

万が一、前面から自転車と衝突してしまった際に、跳ね上げたサイクリストの頭部が、Aピラー上部に当たるようなことがあった場合に衝撃を緩和できるようにしたものだ。

0次安全にはじまり、アイサイトによる予防安全性能の進化、衝突時の高い乗員保護性能など、安全性能のリードを目指してきたスバルの最新作は、装備レベルや快適性も大きく高めてきたことは、プロトタイプ試乗でも確認できた。さらに指摘されることの多かった燃費も、他銘ハイブリッド車と肩を並べる水準まで改善された、とスバルは説明する。

一方で、開発者との話の中で

「トヨタのTHSと燃費で真っ向勝負する気はない、もしそうしたとしても勝てないでしょうし」

と述べられたのも、なによりドライブフィールには強く自信を持つ裏返しだろう。

気になる価格(消費税込)は、試乗した2.5プレミアムS:HEV EXが458万8000円、1.8DITのスポーツ EXが419万1000円、試乗車の用意はなかったがX-BREAK S:HEV EXは447万7000円。最廉価となるスポーツは404万8000円と、全モデルが400万円越えとなった。

先代フォレスターは、性能、機能、それに装備内容に対して価格に割安感もあったことから、大きく価格上昇した印象を持つ方もいるかもしれないが、近年の諸々のコスト上昇の中で、走りの進化、熟成と最新装備類を含めた中身を知れば、むしろ抑えられた感もある。走りの質とともに真の快適性が知れるリアルワールドでの試乗が待ち遠しい。

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