ホンダ初の4ドア車として誕生したライフ
ホンダ「ライフ」は1971年に誕生しました。それまでに発売されていた「N360」「Z(N360型)」と同様の横置きエンジンと前輪駆動レイアウトが採用されていましたが、水冷化された直列2気筒360ccエンジンを搭載。今回紹介するオーナーの“しゅー”さんは、2001年生まれの23歳。軽自動車の排気量が660ccとなっている時代に、自身が生まれる前の360ccの軽自動車に惚れこんでしまった、若き旧車オーナーです。
ステップバンをきっかけに親子で旧車オーナーの道へ
2024年11月10日に愛媛県四国中央市川之江栄町の商店街駐車場で開催された第13回U-550旧軽自動車ミーティングに限らず、旧車イベントに参加するオーナーさんの年齢層は全国的にも高めである。
参加者の想定平均年齢から考えると、孫世代ではないかと思うようなオーナーがホンダ「ライフ」のそばで談笑中だったのが“しゅー”さんだ。旧車イベントでこのような若いオーナーに巡り合うことは貴重なので、ためらうことなく声をかけたのが取材のきっかけだった。
「隣のステップバンのオーナーが父で、その影響で僕がクルマ好きになったのは間違いないです。でも、そもそもは僕がステップバンに興味を持ったのが、親子で旧車オーナーになるきっかけだったのです」
ふとしたきっかけでホンダ「ステップバン」に興味を持った“しゅー”さんは、本気でクルマを探しはじめた。クルマは見つかったが、その当時はまだ専門学校に通う学生という身分。それならばと、“しゅー”さんが卒業するまで父がそのステップバンを代わりに所有し、その後本人に譲るつもりで購入。ところが、父親自身がそのクルマを気に入ってしまったため、“しゅー”さんは別の愛車を探すことになったのだそうだ。
バラバラのライフを手に入れたことがきっかけに
父に奪われたステップバンの代わりに、“しゅー”さんは学生時代にあるクルマを手に入れていた。それがライフだった。年式は1972年の前期型。当時通っていた専門学校の先生の紹介で、ステップバンと共用部品が多いからライフはどうかとアドバイスをもらい、バラバラになったままの個体を入手。しかし、部品が足りずに組み上げるまでにひと苦労。その結果、そのまま部品取り車として保存することに。
そしてある時、別の1973年式の不動車のライフを新たに入手。これを修理して乗るつもりでいたところ、たまたま某ネットオークションで実動するライフを発見。ウォッチリストに入れたまま動向を見守っていたが、誰も入札せず月日は流れた。結果、値下がりしても誰も落札しなかったので、一念発起して“しゅー”さんが落札。つまり今回取材したクルマは、“しゅー”さんにとって3台目のライフになるのだ。
「もちろん別の2台もそのまま所有し続けています。ステップバンとエンジンは一緒ですし、共通部品もたくさんあるので、父親とふたり分の部品取り車として保管しています」
将来は自分のお店を持つことが夢
“しゅー”さんの父親はクルマ好きではあったが、家族ができてから趣味グルマを所有して楽しんだ経験はなかった。しかし、クルマ好きに成長したご子息のおかげで念願の旧車生活をスタート。しかも、その自慢の息子は、専門学校を卒業して整備士として働き始めている。つまり、父からすれば、旧車とそれを面倒見てくれるメカニックの両方を、一気に手に入れたことになるのだ。
「香川県にホンダの軽自動車が得意な専門店があるので、プライベートなクルマに関してはそこでいろいろと教えてもらっています。自分のためにも、父の専属整備士としても、しっかりと知識と技術を学びたいです」
“しゅー”さんはU-550旧軽自動車ミーティングの参加に合わせて、DIYでエンジンのオーバーホールを敢行。必死に仕上げて、なんとかイベント日までに完成させたのだった。
「息子のおかげで私も念願の旧車オーナーになれました。我が家には360ccの軽自動車が4台もあるけど、奥さんも理解してくれているのが嬉しいです」
そう喜ぶ父親の姿を見ていると、クルマ好きとしては羨ましい親孝行の姿である。将来的には、独立して自分の店を構えたいと話していた“しゅー”さん。そのころまでにはきっとホンダの旧軽自動車のエキスパートになっていることだろう。
>>>2023年にAMWで紹介されたクルマを1冊にまとめた「AMW car life snap 2023-2024」はこちら(外部サイト)
