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ランボルギーニとの共同開発を予定していたBMW「M1」の相場は約6900万円以上だったが

42万5000ユーロ~52万5000ユーロ(邦貨換算約6900万円~8528万円)で現在も販売中のBMW「M1」(C)Courtesy of RM Sotheby's

マッチングナンバーのエンジンから116番目を搭載

2025年5月22日にRMサザビーズがイタリア・ミラノで開催したオークションにBMW「M1」が出品されました。出品車のM1は1980年3月7日にバウアー(コーチビルダー)によって組付け作業を行い、その後BMWへと輸送され最終的な検査を受けました。RMサザビーズの調査では、116番目に製造されたM1として記録されています。

Cd値0.40を実現したボディはイタルデザインの下請け工場で製作

E26のコードを掲げて、BMWが「M1」の開発プロジェクトをスタートさせたのは1970年代初頭の話だ。当時からBMWは、スポーツ性を最大のセールスポイントとしてプロダクションモデルの販売戦略を展開。そのキャラクターを最も強くアピールできる場は、もちろんモータースポーツ・シーンにあった。

BMWがサーキットにおいて、もっとも大きな脅威として意識していたのは、ポルシェが投入した911のパフォーマンス。それに対抗するために、BMWは3.0CSL、その排気量拡大版である3.5CSLといったレーシング・ウェポンを送り込むが、満足できる戦績が得られることは少なかった。のちに「M1」のネーミングが与えられ、1978年秋に開催されたパリ・サロンで正式にデビューするE26は、このような事情を考慮して当時のグループ4車両としてホモロゲートすることを目的に開発がスタートしたスーパースポーツだったのだ。

M1が開発の初期段階にあるころ、BMWがそのパートナーにイタリアのランボルギーニを関与させる計画を持ち合わせていたことは、M1の成り立ちに詳しい人には周知の事実だろう。すでに1960年代にはV型12気筒エンジンをミッドシップするミウラを完成させ、スーパースポーツの開発と生産に関しては多くのノウハウを持ち合わせていたランボルギーニ。結局、その計画はランボルギーニの経営不振によってキャンセルされてしまうことになる。仮にそれが実現していれば、その後のランボルギーニには別の未来が待ち受けていたのかもしれない。

現在の目にもシャープで魅力的な造形と感じられるM1のボディは、かのジョルジョット・ジウジアーロ率いるイタルデザインの作である。BMWの公称値によれば、Cd値で0.40を実現したボディはイタルデザインの下請け工場で製作されたのち、ドイツのバウアー(コーチビルダー)に輸送。そこでBMWで製作されたメカニカル・コンポーネンツをアッセンブリー装着する、複雑な工程によって生産が行われた。

実際に製造されたのは399台だった

ミッドに搭載されたエンジンは3.OCSL用を改良した3453cc仕様の直列6気筒DOHC24バルブ。最高出力は出荷段階では277psとされていたが、後にル・マン24時間レースなどに投入されたモデルでは、その数字は500ps超を達成していたともされる。組み合わせられるミッションは5速MT。デファレンシャルにはロック率が40%に設定されたLSDが採用されている。

BMWは当初、M1を1980年までの間に800台生産する計画だったが、実際に販売されたのは399台であったと、今回それをオークションに導いたRMサザビーズは解説している。ちなみに出品車のM1は1980年3月7日にバウアーによってアッセンブリーを終了。その後BMWへと輸送され最終的な検査を受けた後、116番目に製造されたM1として記録されている。デリバリーはBMWイタリアを通じて行われたが、このモデルは生涯の初期にアメリカへと渡り、ニューヨークを拠点とするコレクションに保管された。

その後に母国ドイツを経由してヨーロッパへと戻ると、2018年12月に今回のオークションの出品者が購入。2019年にフランスで正式に登録された記録が残っている。現在までの走行距離はわずかに2万4237km。フランスのアンジェ近郊にあるBMWサービスセンターでの機械的なメンテナンスも施され、そのコンディションにも問題はない。さらに2025年4月に発行されたBMWバース証明書付き、マッチングナンバーのエンジンを搭載するこの魅力的なM1は、BMWファンにとっては見逃すことのできない存在といえた。

RMサザビーズがミラノ・オークションで掲げたエスティメート(予想落札価格)は、42万5000ユーロ~52万5000ユーロ(邦貨換算約6900万円~8528万円)。その希少性やスーパースポーツとしての魅力を考えれば、それは妥当な数字なのかもしれないが、残念ながら今回のオークションでは、このM1を落札する人物は現れなかった。今後の情報に期待したいところである。

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