BEV仕様のエレットリカの魅力にハマった!
ついにアルファ ロメオの新型「ジュニア」のBEV(電気自動車)「エレットリカ」の試乗する機会を得ました。すでに体験したハイブリッドモデルの「イブリダ」でも走りの楽しさに驚かされましたが、電気自動車となると「本当にアルファらしさを感じられるのだろうか?」という疑問がありました。しかし実際にハンドルを握ると、予想を大きく超える魅力がありました。スペック以上に伝わってくる走りの質感と個性は、まさにアルファ ロメオならではのものだったのです。
HVのイブリダとBEVのエレットリカとの違い
先にレポートをお届けしたハイブリッドモデルの”イブリダ”に続いて、思いがけずBEVの“エレットリカ”の試乗が叶うことになった。導入後の日が浅い車種の常で、各メディアからの試乗オファーも立て込んでいるであろうなか、個人での申し込みを割り込ませるのは心苦しい。イブリダの試乗が叶っただけでも幸運、まっいいか……そう思っていた矢先
「(申し込み済みだった別の試乗車と)同じ日程でエレットリカの試乗が可能ですが、どうしますか?」
の案内がきた。
“どうしますか”も何も、声で返事をするより先に首をタテに振って答えた次第。広報車がズラッと停められた地下駐車場で、“エレットリカ”が置かれているのを横目で見ていた僕の顔には思い切り「乗りたい!」と書いてあるのを読まれていたのかもしれない。
ともかく、さてどんなクルマだろう? と興味津々な面持ちで車内に乗り込んだ。
ちなみにエレットリカは電気を意味するイタリア語で、イブリダ(ハイブリッドの意味)同様、どちらかといえば情緒的ではない、いわば仕様名だ。このエレットリカは定格出力62kW、最高出力115kW(156ps)/4070〜7500rpm、最大トルク270Nm(27.5kgm)/500〜4060rpmのZK02モーターで前輪を駆動する。これに総電圧375V、総電力量54.06kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載。
モーターとバッテリー自体のスペックは既存のフィアット「600e」、ジープ「アベンジャー」と共通で、カタログに記されたWLTCモードの一充電走行距離は494kmで、フィアット600eが493km、ジープ アベンジャーが486kmだから、ほぼ同じと見ていい。
またジュニア同士でも車両重量に差がある。前回試乗したイブリダ(コア)が1330kg(前:840kg/後:490kg)だったのに対して、エレットリカは1580kg(前:870kg/後:710kg)だから、試乗車同士ではエレットリカのほうが250kgも車両重量が増していることになる。数字を見てのとおり、フロント(+30kg)よりリア(+220kg)により荷重がかかっていることがわかる。
まるでV6と直4ツインスパークのようなキャラクターの違いを感じた
そして、走り出してみる。するとイブリダの時と同じように「ん?!」と、予想を上まわる、饒舌なアルファロメオらしさをヒシヒシと実感することとなった。“予想を上まわる”というのは、ステランティスの最新世代コンパクトプラットフォーム CMP由来の各車はブランドごとの味をそれとなく感じさせてくれるが、BEVにあってそれはどうか? と、じつは試乗するまでは内心で思っていたのだった。
が、実際のところ、ヴォオオオ……と出しゃばり過ぎない絶妙な音質、音量の効果音がスピーカーから流れ(キャンセルすることも可能。音のサンプリングが何なのかは不明)、その音がモーターの回転と見事に同期しながら加減速を示してくれるのである。さらにアルファ ロメオらしい走行モードの切り替え(dnaスイッチ)により、クルマの反応と走らせ方を好みで選べるところもICE(内燃機関車)並みとなっている。
それだけではない。もうひとつアルファ ロメオらしいと感じたのは、先に試乗したイブリダとエレットリカとでは、単にパワートレインがBEVとICEの違いということを超えて、近年でいうと155や156の頃の、ブッソV6とツインスパークとのクルマのキャラクターの違いが再現されているかのように感じたのである。
その大きな要因は各々のパワーフィールの違いと、先に触れた車両重量の差に起因するものだと思う。ちょうど156でいうとV6(じつは筆者は乗っていた)の悠然とした走りはエレットリカ、4気筒ツインスパークの軽快な走りはイブリダ、と、それぞれ重なって感じられたのだった。こうなるともう
「BEVのアルファ ロメオなんてどうなの?」
などと懐疑的に考えている場合ではなく、旧グループPSA由来のCMP(eCMP)プラットフォームの他の各車がブランドの味をそれとなく表現しているのに対して、このジュニア エレットリカは、BEVながらダントツでアルファ ロメオらしさが表現できているクルマにしか思えなくなってしまった。
思えば筆者自身、164→GTV(916)→156→166×2台と計5台のブッソV6を乗り継いだところでアルフィスタ歴は止まって、もうずいぶん時間が経つ。その後はずっと、自分にとってアルファ ロメオはすっかり縁遠くなってしまったなぁ……と思い今に至っている。が、このジュニア エレットリカの走りには、本当に暫くぶりにすっかりヤラれてしまった。
もしも自分が今、このジュニア エレットリカに乗ることにしたら、それは昔使っていたMotorolaのガラケーを最新のiPhoneに機種変更替したような感覚かもしれない……。そんな浮ついた気分だったためか、自分のETCカードを挿したまま試乗車を返却してしまった(実話)ほどだったが、まさかそれは「乗るように!」との神のお告げ?(だといいのだけれど)
乗り心地/NVH評価担当の我が家の柴犬のシュンも気分よさそうに試乗していたし……。
