日本輸入後にオールペンされた個体は35年間の静態保存された
2025年8月のモントレー・カー・ウイークに合わせて開催されたふたつのメジャー・オークションそれぞれに出品された、希少な1970年式ディーノ「246GT ティーポL」と量産型の1972年式ディーノ「246GT ティーポE」の2台が注目を集めました。フルレストア済みのティーポLは約6400万円で落札されました。対するティーポEは長年眠っていたレストアを前提とした個体……。この車両のあらましとオークション結果についてお伝えします。
量産型「ティーポE」でもけっして希少性は低くない
今回注目されたのは、RMサザビーズの「モントレー・オークション」に登場した1970年式「ティーポL」と、本稿で紹介するボナムスの「クエイル・オークション」出品の1972年式「ティーポE」の2台である。
1969年から1974年にかけて生産されたディーノ246GTは、細かな仕様の違いによって「ティーポL」「ティーポM」「ティーポE」に分類される。ティーポEには、アメリカ市場を中心に販売面で大成功を収めたタルガトップ・モデルの246GTSも含まれる。
RMサザビーズに出品されたティーポLの246GTは、1998年から7年という時間をかけてカリフォルニア州のフェラーリ・スペシャリスト、フランコルシャン・オブ・アメリカでフルレストアが施された個体だ。その後はさまざまなコンクール・イベントで多くのプライズを獲得してきた。落札価格は43万4000ドル(約6388万円)。そのコンディションや、Lシリーズの生産台数の少なさ(357台とされる)を考慮すれば、十分に納得できる価格である。
一方、ボナムスが出品したのは、レストア・ベースと言えるコンディションのティーポEだ。ティーポEは1971年から1974年まで2898台が生産されたとされるが、この台数には先に述べた246GTSの1274台が含まれている。つまりクーペボディの246GT ティーポEは1624台が出荷された計算になる。現存する台数を想像すれば、ティーポEも希少性はけっして低くない。
ティーポEのキャブレターをミッションに改良を施した進化系246GT
246GTのティーポEがとくに大きな特徴とするのは、スチール製のボディパネルが大型プレス加工で製作される量産構造へと改められた点である。その他のディテールは、1971年に生産されたティーポMの仕様を基本的に継承する。ただし、フロントのコーナーバンパーはグリルに回り込まないデザインに変更された(出品車にはティーポMまでのコーナーバンパーが装備されている)。後期型では、左ハンドル仕様に限ってワイパーが平行作動式へと変更された。フロント・コーナーバンパー下の冷却ダクト形状などにも、ティーポEでの変化が認められる。
ミッドに搭載される2.4L(2418cc)のV型6気筒DOHCエンジンや、それに組み合わされる5速MTにも、ティーポEでは改良の手が加えられた。キャブレターはそれまでと同じウェーバー製ながら40DCN F/13型に変更され、5速MTは新たにギヤ比が見直された。最高出力の195psは変わらなかったが、246GTはティーポEへの進化により、より魅力的なミッドシップ・スポーツとなった。
フルレストア・モデルの約43%安で落札された
クエイル・オークションに出品された「04072」のシャシーナンバーを持つモデルは、マラネロでのアッセンブリーが1972年5月22日に終了した個体だ。当初のボディカラーはジャッロ・フライ(イエロー)、インテリアカラーはネロ(ブラック)であった。
この個体は、イタリアのカスタマーへと納車された後、しばらくイタリアに所在したが、1978年に日本に向けて輸出された。日本で複数のオーナーを経るなかで、1989年に現在のボディカラーであるホワイトにオールペイントされた記録がある。その後、スロットル・ケーブルの破損により、この「04072」は使用不能となった。1990年から2025年までガレージで静態保存されていたが、アメリカ在住の最新オーナーのもとへ輸出されたのはつい最近のことである。
熱心なディーノ、そしてフェラーリのエンスージアストにとって、このモデルを完全にレストアすることは非常にやりがいのあるプロジェクトとなることは間違いない。ボナムスは、プロジェクトのスタートともいえる今回のオークションで、20万ドル~30万ドル(約2944万円~4415万円)の予想落札価格を提示した。さらに最低落札価格なしという好条件でオークションをスタートさせている。
入札は最終的に25万2000ドル(約3709万円)という価格が提示されるまで続いた。フルレストアが終了した際、この246GTの価値がどこまで高まるのか、多くのエンスージアストの興味はすでにその点に移っている。
