サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

チューンドBNR32型「スカイラインGT-R」がオークションに登場!レストア済みで落札予想価格は約832万円〜

4万ポンド〜5万ポンド(邦貨換算約832万〜1040万円)で現在も販売中の日産R32型「スカイラインGT-R」(C)iconicauctioneers

強烈な速さからゴジラの愛称で呼ばれた日産GT-R

海外では「ゴジラ」のニックネームで親しまれ、モータースポーツファンやチューニングフリークから特別な存在として扱われてきた日産を代表するスポーツカー「スカイラインGT-R」。その愛称で呼ばれるきっかけとなったモデルが、BNR32型「スカイラインGT-R」だ。今回は、2025年11月8日にイギリス・バーミンガムで開催された「NECクラシックモーターショー2025」併催のオークションに出品された、特別なBNR32を紹介します。

グループAレースで勝つために開発されたR32型スカイラインGT-R

コレクターのなかには「オリジナルこそ正義であり、カスタマイズするなんてもってのほか」と考える層もいる。しかし、第2世代と呼ばれる直6ターボ仕様のGT-Rについては、必ずしもそうではないと考えるフリークが一定層存在する。とりわけ、長兄と呼ばれるBNR32型スカイラインGT-Rは、グループAカテゴリーで勝利するために開発されたホモロゲーションモデル。成り立ち自体が競技志向であり、進化を前提とした存在だった。

RB26DETT型と呼ばれるパワーユニットは、カタログスペックこそ276bhpだが、600ps以上に耐えうるキャパシティを備える。そのパフォーマンスを日産独自の四輪駆動システム「アテーサET-S」が余すことなく路面に伝える。独創的なパッケージにより、日本国内のグループAレースでは29戦29勝と無敗を誇った。さらにベルギーのスパ・フランコルシャン24時間レースやオーストラリアのバサースト1000レース、マカオギアレースなど海外の名だたる舞台でも、レースの本場である欧州勢を相手に勝利を収めた。スカイラインGT-Rの名前を世界に知らしめるきっかけを作ったのだ。

前オーナーはレースのイメージを投影してブルーにオールペン

圧倒的な性能の高さに惚れ込んだチューナーたちが、サーキットだけでなくストリートでポテンシャルを解放した。これまでの国産スポーツカーを駆逐し、タイムアタックやドラッグレースにおいても「GT-Rでしか勝てない」とまでいわれ、一時代を築いた。手を掛ければ結果で応えてくれるチューニングベースとしても、GT-Rは類まれない魅力がある。

今回、アイコニック・オークショネアズのオークションに登場した1992年式のBNR32も、チューニングの魔力に魅せられ、個性的なカスタマイズが施された個体だ。ボディは前オーナーのショップで丁寧にレストアされた。ボディカラーも純正のガングレーメタリックから、BNR34型スカイラインGT-Rの象徴であるベイサイドブルーに変更されている。往年のグループAレースで活躍した「カルソニック・スカイライン」へのオマージュと受け取れる仕立てだ。エンジンチューニングを担当したのは、イギリスにおけるGT-Rチューニングの第一人者のひとりとして知られる「アビー・モータース」である。

6500ポンドを投入しエンジンにファインチューンを施す

エンジンはオーバーホールされたうえで、キャパシティアップタービンとHKSのパイピングキットを装着。排気系には、ヒートグラデーションが美しい東名パワード製のチタンマフラーを採用し、パワーとレスポンスのアップグレードが図られた。さらにエンジンルームには、希少なNISMO製のオーナメントとタワーバーも奢られ、コレクター心をくすぐる。なお、チューニングとリフレッシュの費用は、総額6500ポンド(邦貨換算約135万円)以上とされている。

足もとには、BNR32チューンが全盛期に定番のひとつとして多くのオーナーから支持されたENKEIのRP-F1をインストール。あえて最新モデルを選ばず、当時の空気感を重視したコーディネイトに好感が持てる。オリジナルシルバーに赤いアルマイトのホイールナットを組み合わせるなど、さりげなくスパイスをきかせている。

インテリアはシートだけでなく、ダッシュボード、ドアトリムからカーペットに至るまでコンディションは良好だ。30年以上が経過しているとは思えない状態を維持している。さらに、日本を代表するトップチューナーのひとり、横幕宏尚さんが率いる「ヴェイルサイド」の340km/hスピードメーターもセット。オリジナルのステアリングも刷新され、次のオーナーも十分満足できる内容に仕上がっていた。

個性の強いカスタマイズ車両は選択の幅を狭める可能性大

トータルコーディネイトが施されたチューンドGT-Rのエスティメート(推定落札価格)は、4万ポンド〜5万ポンド(邦貨換算約832万円〜1040万円)だった。いちからエンジンの蘇生を行い、ボディもフルリフレッシュが施されていることを考えると、妥当な金額とも思えた。しかし、オークション当日に入札が集まらず、残念ながら「流札」でフィニッシュ。次のオーナーへの橋渡しは叶わなかった。

原因として予想されるのは、すでに数多くのスカイラインGT-Rが海を渡り、イギリスに上陸を果たしていることから、コレクターが食傷気味になっている可能性が高い。加えて、個性が強いカスタマイズ車両は、どうしても選択の幅を狭めてしまう。クラシックオークションの世界では、すでに手が入ったモデルより、オリジナル度が高い個体のほうが好まれる傾向が強い。「まずは素の状態で手に入れ、落札後に自分の好みに仕上げていく」。あらためて、これが王道であることを感じさせる一例だった。

モバイルバージョンを終了