世界的に見ても希少な丸形ヘッドライトのV4エンジン搭載車
千葉県佐倉市で行われたサクラオートヒストリーフォーラムで、スウェーデン車サーブ「96」をイベントで見かけました。この知る人ぞ知る希少モデルを所有していたのは、日本最古のカークラブを率いる人物でした。なぜこのクルマを選び、いまも大切に乗り続けているのか。その背景には、旧車ならではの魅力と楽しみ方が詰まっていました。
日本最古のカークラブ代表が国内4代目オーナー
会場でひときわ目立っていた、丸みを帯びたボディをモデル。スウェーデンのサーブのエンブレムが備わっているものの、車名などの詳細は不明であった。そこでクルマのなかで雨宿りをしていたオーナーを直撃してみると、谷保天満宮旧車祭を主催する日本最古のカークラブ「Automobile Club Japan」の代表を務める是枝氏であった。
ほかにも数多くのビンテージカーを所有しているそうだが、今回このクルマでエントリーした理由を含め、お話を伺った。
「このクルマはサーブ96のV4モンテカルロで、1968年式になります。もともとクラブメンバーが所有していた個体で、その後私が譲り受けました。私で国内4オーナー目になるそうです。このクルマはデザインが気に入っています。なんだか子供のころのかっこいいクルマのイメージを具現化したようなデザインなのがいいですね」
サーブ初の乗用車「92」がルーツの最終発展モデル
もともと航空機メーカーだったサーブが1949年に初めて製造した市販乗用車がサーブ「92」。その流線型のモノコックボディデザインや前輪駆動という基本設計をそのまま踏襲して、サーブ93、サーブ96と改良を重ねていき、最終的に1980年まで生産を続けることとなる。
是枝氏が所有している1968年式「96V4モンテカルロ」は、それまでの2ストローク直列3気筒エンジンに代わって、1967年にドイツフォード製の1498ccV4エンジンを搭載して登場した上位モデルだ。伝統的な丸目2灯ヘッドライトは後に角目2灯ヘッドライトに変更されモダンな顔つきとなるため、ビンテージな雰囲気を残しつつパワフルなV4エンジンを搭載する、いわば「イイトコどり」の数少ないモデルといえる。
部品取り車も確保とネットワークを使って維持管理
日本国内での現存台数はおそらく30台前後と非常に少なく、そのなかでもV4モデルはさらに少ないのではないかと是枝氏は語る。そうなってくると心配なのは部品の供給状況だ。同じスウェーデン車でもボルボは日本でメジャーだが、サーブはどちらかというとマイナー車種となる。さらに並行輸入が中心となるこの時代のサーブは日本国内にディーラー網も確立されておらず、国内にパーツは存在しないといっても過言ではない。
「そのため仲間同士の交流や情報交換は非常に重要です。私もサーブオーナーズクラブに入会しているほか、部品取り用のクルマも確保しています。それからV4エンジンはドイツフォードのタウナスにも搭載されているため、比較的部品はなんとかなります。今回はなかなか遠くに行く機会もなく、あまり乗れていないので、このクルマでイベントに参加しました。快適で楽しかったですよ!」
