ワンメイク選手権用レースカーとして登場した21世紀のサンクターボ
英国最大級の見本市会場、バーミンガムの「NEC(National Exhibition Centre)」。英国では最大規模となるクラシックカーのトレードショー「Classic Motor Show」が、毎年11月に開催されています。2025年11月7-9日の開催時には、地元英国のアイコニック・オークショネア社がオフィシャルオークション「The Iconic Sale at the NEC Classic Motor Show 2025」を、大会中日となる11月8日に実施。ヤングタイマー・クラシックカーを中心とした約150台の出品ロットのなかから、今回はルノー「スポール クリオV6」をピックアップしました。このクルマのあらましとオークション結果についてお伝えします。
多国籍プロジェクトから生まれた「小さなスーパーカー」
仏ルノーが傘下に収めていたモータースポーツ部門「ルノースポール」が主宰するワンメイクレース選手権「クリオ・トロフィー」レースシリーズ専用車両から派生し、1998年のパリ・サロンにて初公開されたクリオV6は、すべての点においてミッドシップレイアウトの5(サンク)ターボの精神的後継車といえるモデルだった。
2001年に正式発売された、この豊満なヒップラインを持つミッドシップの「小さなスーパーカー」は、日本市場では「ルーテシア」名で販売されていた2代目クリオをベースとしている。しかし、標準モデルとの共通点はさほど多くはない。
標準型のクリオ/ルーテシアなら後部座席が配置されるスペースには、当時のルノーの最上級モデル「ラグナ」で実績のある3L V6 24バルブユニットをチューンアップしたエンジンが収められ、230psの最高出力と30.6kgmの最大トルクを後輪に伝達。トランスミッションは6速MTが組み合わされ、ロードバージョンでも0-400m加速14.5秒、最高速235km/hという、現代のリアルスポーツカーの称号にふさわしい高性能を獲得した。
フェーズ1モデルはフランスから輸送された部品を用い、スウェーデン・ウッデバラに設けられた「トム・ウォーキンショー・レーシング(TWR)」工房で手作業により組み立てられ、2001年から2003年にかけてわずか1513台(ほかに諸説あり)が生産された。
進化を遂げたフェーズ2への移行
2003年春、クリオV6は「フェーズ2」と呼ばれる後期モデルに移行。生産拠点は英国TWRからルノースポールのディエップ工場、すなわち往年のアルピーヌのファクトリーへと移され、クォリティの向上とデリバリーの安定化が図られることになった。
リアミッドに搭載されるV6エンジンにはさらなるチューニングが施され、パワーは255ps、トルクは32.0kgmに達した。また、リアのサブフレームの剛性アップやサスペンションのアライメント変更、タイヤ/ホイール径を17インチから18インチに拡大するなど、シャシーに大幅に手を入れられたことで、フェーズ1ではトリッキーと言われたハンドリングも格段に安定。スーパースポーツとしての資質を確実に高めることに成功したのである。
オリジナル度の高い「フェーズ1」右ハンドル仕様
「The Iconic Sale at the NEC Classic Motor Show 2025」オークションに出品されたルノー・クリオV6は、その最高出力から「V6-230」と呼ばれることもある前期型の「フェーズ1」だ。英国マーケット用に用意された右ハンドル車で、シャシーNo.#0349。このモデルではデフォルトでもある「アイスバーグ・シルバー」のメタリックペイントがボディに施され、英国における初回登録日は2002年3月18日とのことだ。
アイコニック・オークショネア社の公式オークションカタログ作成時点でのオドメーター表示は2万1309マイル(約3万4100km)であり、この数値に誤りのないことは、車両に添付されていたファイルに収められたさまざまなドキュメントによって裏づけられている。
今回のオークション出品者でもある現オーナーが購入する2007年まで3名の所有者が乗り継ぎ、現在までは現オーナーの個人コレクションの一部として18年間にわたって所蔵。この間、クリオV6はガレージ保管されて走行は控えめだった。主に天気の良い日に、地元のクラシックカーショーなどへの移動でマイレージを重ねてきたという。
現オーナーの弁によれば、それらのオートショーでは常に高い評価を得ているとのことだ。また赤にペイントされたブレーキキャリパーに、このクルマの開発から生産まで関与したTWRとは縁の深い「JAGUAR」のデカールが貼られていることには、ショーならではの遊び心や、いかにも英国人らしいジョークセンスも感じられる。
強気のエスティメートと現実の落札価格
車両に添付されていたドキュメントファイルには、これまで8回分の整備記録(最新は2023年のもの)、2005年の初回車検まで遡る英国MoT車検のオンライン履歴、2026年8月まで有効な現行のMoT車検証(指摘事項なし)のコピーが含まれているほか、キャビンには純正オプションのCDプレーヤーも装備されている。
「ルノースポール・クリオV6ほど想像力をかき立てるモダンクラシックカーは稀でしょう。とくにこの印象的でローマイレージの個体は、現代のパフォーマンスアイコンを収めたコレクションに誇らしく収まるだけでなく、そのユニークなミッドシップの魅力を味わう勇気あるドライバーにとっては、スリリングな週末の相棒としても充分に機能するでしょう」
自社の公式カタログ内で麗々しく謳っていたアイコニック・オークショネア社では、4万ポンド〜5万ポンド(邦貨換算約808万円〜1010万円)という、かなり強気のエスティメート(推定落札価格)を設定した。ところが、バーミンガムNECのホール2で行われた競売では、売り手側の期待していたほどにはビッド(入札)が進まず、終わってみれば3万7083英ポンド、現在のレートで日本円に換算すれば約783万円で、競売人のハンマーが鳴らされることになった。
