スピットファイアの1.5Lエンジンを搭載するミジェット
今回で3回目を迎える「スワップ&ミート・イン妙高」。戦前からの長い歴史を持つリゾート地にある妙高高原赤倉温泉大駐車場で開催されるイベントだけに、”滞在型イベント”を目指す主催者が用意したコンテンツは、車両展示に加えショートツーリング、パーツやグッズの販売・交換会やお宝オークションなど多彩です。参加車両のラインナップもバラエティに富み、貴重な戦前車から懐かしくも身近な国産セダンまで、会場には約50台の個性豊かなクルマたちが集まりました。
英国製ライトウェイト・スポーツの代名詞
かつて、クルマ好きにとって「ブリティッシュ・ライトウェイト・スポーツ」というジャンルは、ひとつの大きな趣味のボリュームゾーンであった。その名のとおり英国製の小型軽量スポーツカー全般を指す言葉だが、とくに大手メーカーが自社の小型セダンなどのコンポーネンツを巧みに流用しつつ、本格的な設計で仕立てた手軽で安価なスポーツカー群を指す場合が多い。
そのもっとも代表的な例は、オースチン ヒーレー「スプライト」、MG「ミジェット」、トライアンフ「スピットファイア」などであろう。なかでもバッジ・エンジニアリングによって姉妹車として生み出されたスプライトとミジェットは、2車種まとめて”スプリジェット”という愛称で親しまれ、いまなおブリティッシュ・ライトウェイト・スポーツの代名詞的存在だ。
「オリジナル」に縛られない大人の愉しみ方
今回のイベント会場にも数台の”スプリジェット”が参加していたが、そのなかにいたのが1979年式のMG「ミジェット1500」である。この年式のMGミジェットは(兄貴分のMGBも)、主要輸出国であるアメリカの保安基準に合わせた悪名高い”5マイル・バンパー”となっていたが、こちらの個体はミジェットMk.4以前の姿であるメッキグリル&バンパーに戻されている。いわゆる”メッキ・コンバージョン”と呼ばれるカスタマイズだ。
「スピットファイアの1.5Lエンジンは乗りやすいですよ。普段使いで気軽に街乗りしています」
そう語ってくれたのは、東京から参加したオーナーの稲垣聖一さんだ。
この時代のミジェットは、BMC時代から親しまれてきたAタイプ・エンジンに替えて、かつてのライバルであったトライアンフ スピットファイアの1.5Lエンジンが搭載されていることは、英国車ファンならばよくご存じだろう。また、無粋なラバー・バンパーをメッキグリル&バンパーに変更する作業は、ローバー ミニをオースチンやモーリスのMk.1仕様にカスタムするくらい、この界隈では一般的な趣味的行為だ。まあ”オリジナル原理主義者”的な視点から見れば、この個体は「BMC時代から慣れ親しんだAタイプ・エンジンじゃないし、メッキ・コンバージョン仕様はオリジナルでもない」ということになるのだろう。
ヒストリックカー・ベテランレーサーが選んだ「普段のアシ」
もちろんヒストリックカー趣味のベテランであるオーナーの稲垣さんであれば、そのような旧車界の事情や趣味心のニュアンスは百も承知。そのうえでの選択が、MG ミジェット1500″メッキ・コンバージョン”なのだ。
「以前からヒストリックカー・レースに参戦しているんですよ。ここ最近は1275ccまでボアアップしたカニ目が愛機です」
オーナーの稲垣さんは、じつはヒストリックカー・レーサー。かなり本格的な武闘派カー・ガイなのである。
「だから普段のアシに使うのは肩の力を抜いて、乗りやすい高年式のミジェット1500あたりがちょうどいいかな……と思って」
また、メッキ・コンバージョン仕様は見た目にも実際の車重的にも軽快だ。というわけで、こちらのミジェットはストイックなクルマ趣味のチートデイ的な相棒。手に入れてから4〜5年ほどが経つという。年季の入ったクルマ好きは、”普段のアシ選び”にも長年趣味の世界で培ってきたからこその、もっともな理由があるのだ。
