JDMの頂点に君臨する極上「NISMO 400R」
歴史的アートに匹敵する価値ある1台が登場!
アメリカ・フロリダ州で開催される権威あるイベントが「アメリア・コンクール」です。その会場であるザ・リッツ・カールトン アメリアアイランドを舞台に、2026年3月6日~7日に行われるブロードアロー・オークションには、戦前の欧米クラシックカーから現代のスーパーカーまで選び抜かれた名車が並びます。今回はその出品リストのなかから、JDMマシンとして世界中のマニアからひと際強い注目を集める、日産「NISMO 400R」をピックアップします。
30年前8番目にデリバリーされた新車同様の個体
走行距離わずか1.6万キロは北米ですでに有名!
今回アメリアのオークションに登場したNISMO 400Rは、NISMOから8番目にデリバリーされた個体だ。すでに製造から30年を迎えようとしているが、ホワイトのボディも内装もまるで新車のようなコンディションを保っている。
その理由は明快で、走行距離がわずか1万6313kmに留まっているからだ。さらに2024年のアメリア・コンクール・デレガンスで「カーカルチャーアワード」を受賞。アメリカに存在するJDMマシンのなかで、すでに高い評価を受けている1台である。デリバリーされた当時の姿と異なるのは、NISMO製タワーバーとブーストコントローラー程度。オリジナル度は非常に高く、歴史的価値を後世に伝えるという観点においても非常に魅力的だ。
NISMO 400Rとは、R33型スカイラインGT-Rをベースに、NISMO(現モータースポーツ&カスタマイズNISMO事業部)が企画から開発、販売まで請け負ったコンプリートカーの第2弾モデルである(第1弾はS14型シルビアをベースとしたNISMO 270R)。
レース直系2.8リッター化で圧倒的トルクを獲得RB26DETTはネーミングとなった400馬力捻出
車名の「400R」は最高出力に由来するものだ。その数字は、NISMOが参画したN1耐久レース(現在のスーパー耐久)やスパ24時間レースで得た知見をもとに、エンジンやミッションの耐久性を検証した上で導き出された。そのコンセプトは明確で、N1耐久レース仕様を公道で合法に楽しめるように昇華させることにあった。
搭載されるRB26DETTエンジンは、今や日本を代表するレジェンドユニットだ。当初は2.6Lの排気量のままでカスタマイズが進められていた。しかし大型のN1用タービンを装着するため、コンプリートカーとしては低中速のトルク不足が指摘された。
そこで白羽の矢が立ったのが、Gr.Aエンジンの開発を担当していた日産工機(REINIK)が耐久レース用に開発していた排気量アップキットだ。排気量を2.6Lから2.8Lまで拡大することで、大型のメタルタービンを回し切ることが可能となり、ストリートカーとしての扱いやすさを担保することに成功している。
その出力向上に合わせ、排気系が見直され、大型インタークーラーを装着。大容量のツインプレートクラッチやカーボンプロペラシャフトの採用など、レースマシンさながらのパーツが惜しみなく投入されているのも見逃せない。
ノーマル33GT-Rの2倍の価格で世界に55台販売
新車価格1200万円はバーゲンプライスの完成度
足まわりはビルシュタインのCリング車高調を採用し、「意のままに操れる」ことをターゲットに開発された。基準車のGT-Rに対してかなり旋回性を高めた味付けが与えられ、歴代GT-Rでもっとも「曲がる」マシンに仕上がっている。
専用のエアロパーツは、GT選手権に参戦していたレーシングカー用をモチーフに製作された。大型で迫力のあるデザインはレース直系のコンプリートカーらしい攻めた造形だが、車高を下げるとフロントリップが簡単に擦るといった一面もあった。
その他、インテリアではシートがアルカンターラ素材で貼り替えられている。足元には275/35R18のワイドタイヤと、NISMOオリジナルホイールの元祖ともいえるRAYS製鍛造3ピースの「LMGT1」を装着するなど、全身から特別感を放っている。
さらに完成車は全車が日産追浜工場のテストコースに持ち込まれ、念入りに性能確認テストが行われたのち、オーナーのもとに届けるという手法が取られた。このプロセスがオーナーのハートをくすぐったのだ。
プロトタイプとして公の場に姿を現したのは、1995年1月の東京オートサロン。新型スカイラインGT-R(R33)とともに発表され、大いに話題となった。正式発表は翌年の東京オートサロンで、プライスはGT-Rの新車価格の2倍強となる1200万円。当時はかなり高いと受け止められたが、内容を精査すればバーゲンプライスと思える完成度であった。販売は限定99台とされたが最終的にはそこまで届かず、生産台数は55台に留まっている。
コレクターズアイテムとして評価はうなぎ昇り!
1億円を超えた「NISMO 400R」の絶対的価値
R33型GT-Rはデビュー当初、さまざまな面でネガティブな評価を受けた。しかし、NISMO 400Rの登場によりイメージは好転。以後、R33型GT-Rオーナーにとって憧れの存在として語られるようになり、現在ではその希少性から億を超える価格で取引されるコレクターズアイテムとして評価はうなぎのぼりだ。
今回の出品車両は1996年7月にデリバリーされ、2023年7月にカナダへ輸出。2024年にアメリカのコレクターのガレージに収まったのち、今回のオークションに出品されることとなった。日本市場のみで販売され、生産台数55台のマシンが日本国外のオークションに登場するのは極めて稀である。
主催者が提示するエスティメート(予想落札価格)は、90万ドルから110万ドル(約1億4303万円から約1億7482万円)とかなりの高値をつけていた。果たしてどこまで値を伸ばすのか。緊張感が高まるなか、ついにハンマープライスが打たれた。最終的な落札額は91万8000ドル。現在のレートで計算すると、約1億4589万円である。
予想レンジの下限付近に落ち着いたとはいえ、1990年代の日本車が堂々の1億円オーバーで落札されたという事実は極めて重い。NISMO 400Rの天文学的な価値は、もはや一過性の熱狂(バブル)ではない。世界中のコレクターが認める「歴史的アート」として、グローバル市場でその絶対的な地位を証明してみせたのだ。
※為替レートは1ドル=158円(2026年3月18日時点)で換算
