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走行15万km超えたポルシェが約2361万円!? 「カリスマ」マグナス・ウォーカーが乗った996型GT2がレジェンドなワケとは?

14万8500ドル(邦貨換算約2361万円)で落札された2002年式「ポルシェ 911 GT2」(C)Courtesy of RM Sotheby's

ポルシェ界のインフルエンサーが放出! 希少なナチュラルブラウン内装を持つ後輪駆動の最高峰

2026年3月18日から25日に開催したオンライン限定オークションにて、ポルシェ界の世界的インフルエンサーであり服飾デザイナーでもあるマグナス ウォーカー氏の個人コレクションが放出されました。空冷「アウトロー」のイメージが強い彼ですが、今回出品されたのは意外にも水冷の2002年式ポルシェ「911 GT2」です。約15万kmという過走行にもかかわらず驚くことに約2361万円で落札されました。カリスマが大事にした水冷911GT2の仕様とその詳細を覗いてみましょう。

カリスマが惚れ込んだ水冷モデル! 一見穏やかだがその中身は強烈なパンチを秘める「羊の皮を被った狼」そのもの

「25年前、これはポルシェの頂点に君臨する存在でした。GT2以上にクールなクルマなどありませんでした。全身黒一色で、まさにロサンゼルスで一生乗り続けられそうなポルシェです。私は3代目オーナー。前の2人のオーナーは、いずれもポルシェクラブのベテラン会員で、ここロサンゼルスの地元の独立系ポルシェチューニングショップで、このクルマを丁寧にメンテナンスしていました。私が購入したのは2020年のことです」(マグナス ウォーカー氏、以下同)

「このGT2の興味深い点は、ボディが艶やかなブラックであることに加え、インテリア全体が、いわゆる『ピーナッツバターレザー』で統一されていることです。996 GT2は、じつはポルシェ最後の2輪駆動GT2です。996ターボは4WDでした。そして6速マニュアルトランスミッションを搭載しており、PDKを備えた991 GT2とは異なります。昔の930ターボのようなターボラグがなく、まさに陶酔的な走り。でも1日に1000マイルも走れるほど快適な、ラグジュアリーなクルマでもあります。どこか洗練されていて、まるで羊の皮を被った狼のよう。英国サヴィル ロウのスーツを着たボクサーのように、一見穏やかだが、その内には強烈なパンチを秘めているのです」

4WDの996ターボを凌駕した第2世代996GT2は100kg軽量化でRRの凶暴さから「未亡人製造機」の異名

第2世代のポルシェ 911 GT2は、2001年に996世代の911のなかで最速かつもっとも凶暴な公道走行可能モデルとしてデビューした。軽量化と出力向上を両立させたGT2は、すでに圧倒的な性能を誇っていた「ポルシェ 911ターボ」をパフォーマンス面で軽々と凌駕した。

その3.6L水平対向6気筒ツインターボエンジンは、ブースト圧の引き上げや大型インタークーラーの採用、排気抵抗の低減などにより、出力で10%の向上を誇った。また、911ターボが全輪駆動を採用していたのにたいしてGT2は後輪駆動を採用しており、この過激なレイアウトはのちの歴代GT2にもアイデンティティとして受け継がれていくことになる。もうひとつ特筆すべきは、同時発売の911ターボともども、ポルシェとして初めてカーボンセラミックブレーキパッケージを採用した点である。また、強化されたG96型6速MT、リミテッドスリップデフ、そしてレース由来のサスペンションも採用されることから、その過激なスペックもあり「未亡人製造機」と呼ばれた凶暴なマシンなのだ。

いっぽうエクステリアは、911ターボのボディをベースとしつつも、空力性能を向上させるためにノーズが改良され、リアウイングも大型化。また、インテリアは真の2シーターとなっており、911の伝統であるリアの+2シートはカーペットに置き換えられた。

くわえて、ターボに標準装備されていたスライディングルーフ、フロントラジエーター、オートエアコンを省略し、約100kgの軽量化を実現。それでも利便性を考慮し、マニュアルエアコンやパワーウィンドウ、パワードアロック、電動シート調整機能、そして簡素化されたエンターテインメントシステムなどは残されていた。

限定生産のホモロゲーションスペシャルであった初代993型GT2ほど過激ではないかもしれないが、996型GT2は一定の快適性と利便性を保ちつつ、洗練されたサーキット向けマシンとしての地位を確立しているといえよう。

過走行でも約2361万円! カリスマのストーリーがもたらす価値

さきごろRMサザビーズ「Magnus Walker:The Outlaw Collection」オークションに出品された、マグナス ウォーカー所有のポルシェ 911 GT2は、2002年モデルとして米国向けに納車された184台のうちの1台であり、2001年から2005年にかけて全世界に向けて生産された1287台のうちの1台でもある。そして2002年6月17日にラインオフした当時から、ほぼ現在の姿のまま仕上げられていた。

ボディカラーはソリッドのブラック、インテリアは特別注文の「ナチュラルブラウン」によるフルレザー仕様で、ヘッドライナーやルーフピラー、フロントのコンソール、ステアリングコラム、3本スポークのステアリングホイール、ドーム型のランプカバー、センターコンソールのCDホルダー、サンバイザー、リア側センターコンソールに至るまですべて同色の本革で覆われている。当時のポルシェ カスタマーエクスクルーシブ(特注部門)の職人技が光る贅沢な仕様であり、本来サーキット志向の強いGT2において、これほどラグジュアリーな内装が選択されているのは非常に珍しい。

そのほかの純正オプションには、クルーズコントロール、GT2エンブレム入りのメタル製ドアシル、アルミ製メーターダイヤル、ヘッドレストのポルシェエンブレム、フットウェル照明、リミテッドスリップディファレンシャルが含まれる。

いっぽう数少ない純正オプションではないポイントとしては、「アウトロー」感を演出するためか、ボディ色と同じブラックのアフターマーケット製3ピース式アロイホイールが装着されていることが挙げられる。

「かなり希少なクルマです。非常に人気のある特別なカラーリングを施された、誰もが憧れる1台です。次のオーナーのために、この状態をそのまま保存しておく必要がありました。私は普段、自分のクルマたちを特別に丁寧に扱っているわけではなく、傷やへこみがつくこともありますが、ことこの996 GT2については、そうしたことが起きてほしくなかったのです」

RMサザビーズ北米本社による公式オークションカタログの作成時点で、走行距離計は9万5284マイル(約15万3000km)を指していた。また同カタログ内で

「ポルシェの996シリーズのなかでも最高峰のモデルを、価値が高まり続けながらも思い切り走らせて楽しむことができる1台を求める目の肥えた愛好家にとって、この出品は魅力的な機会となるでしょう」

と高らかにPR。

そして、996世代の911 GT2としては常識的と思われる12万5000ドルから15万ドル(邦貨換算約1988万円から2385万円)のエスティメートを設定したうえで「Offered Without Reserve」、つまり最低落札価格の設定はなかった。

こうして、3月18日から1週間にわたって行われたオンライン競売では、エスティメートの上限に近い14万8500ドル。つまり、現在のレートで日本円に換算すると約2361万円という、日本国内のユーズドカー市場では「過走行」と判定されてしまいそうなマイレージを思えば、まずまずともいえる価格で落札に至った。

それはやはり、マグナス ウォーカーの「アウトロー」効果といえるのかもしれない。どんなに走行距離が延びようとも、カリスマが愛し、レジェンドの一部となった名車には、数字だけでは計り知れない独自のストーリーが宿る。それこそが、現在のクラシックカーおよびネオクラシック市場を牽引する最大の魅力なのである。

※為替レートは1ドル=159円(2026年4月28日時点)で換算

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