日産メカニックの義父から継承! 奇跡のコンディションを保つ初代「バイオレット」
ロールスロイスにベントレー、アストンマーティンやブガッティ、あるいはフェラーリやポルシェといった人気や知名度の高いメーカーのクルマは概して歴代モデルの残存率が高く、たとえ何十年も前のモデルであっても数多くが上々のコンディションで維持されています。逆に身近な実用車や商用車などは、趣味の対象として大切に維持・管理され続けている個体が極端に少ないのが現実です。だからこそ「品川クラシックカーレビュー イン 港南」イベントの会場で出会った初代の日産「バイオレット」は、とても貴重な存在といえます。
メジャー車種に隠れた貴重な存在! 品川駅前に集結した旧車たち
2026年4月5日(日)、JR品川駅の港南口ふれあい広場にて「品川クラシックカーレビュー イン 港南」が開催された。これは交通安全の啓発を目的に、品川駅港南商店街と警視庁高輪警察署が主催する恒例のイベントで、今回で27回目を迎える。
そして、このイベントの運営を担当するのは全日本ダットサン会だ。1台でも多くのダットサン(および日産や旧プリンス)を動態保存することを目標に掲げる同会の仕切りだけに、参加した40台以上の車両のうち8割以上が日産車である。今回も歴代の日産「ブルーバード」や日産「スカイライン」、日産「フェアレディ」、日産「フェアレディZ」などお馴染みのクルマたちが会場に居並んだ。
そんなメジャー級の人気車種にまざって会場の一角に展示されていたのが、旧車イベントなどでも見かける機会の少ない、日産 バイオレットの初代モデルである。
サニーとブルーバードの間を埋める直系モデル「バイオレット」
世界的な大ヒット作となった510型ブルーバードの後継モデルとして、1971年にデビューした610型である日産「ブルーバードU」。前任の510型に比べ車格がアップしたこともあり、そのデビュー後もしばらくのあいだは510型も併売されていた。
翌1972年に510型の生産が終了。そこで生まれた日産「サニー」とブルーバードUとのギャップを埋めるセグメントに、新たに投入された車種がバイオレットである。
この初代バイオレットのデビューは1973年。型式名が510、610に続く「710」であることからもわかるとおり、ブルーバード一族の直系モデルだ。やはりその血筋は争えず、710型バイオレットはラリーやレースなどにも積極的に参戦している。
アクの強いデザインと逆風の時代! 現存数が少ない実用車の宿命
ただ、この初代バイオレットは今となってはヒストリックカーのイベントなどでもほとんど目にする機会のない車種だ。
この時代の国産車、とくに日産車はクセの強いデザインをもつものが多く、それは単に見た目の好き嫌い以前に、後方視界の悪さや室内の圧迫感といった実用上の不具合をもたらした。さらに当時は、自動車メーカーが排気ガス規制や安全・環境性能への対策に追われていた、日本車にとっては逆風の時代でもある。
欧米に追いつけ追い越せと元気だった1960年代と、日本車が多くの技術的課題をクリアして再び黄金期に向かって加速し始めた1980年代から1990年代の狭間に生まれたバイオレット。現存する台数が少ないのは、その生まれた時代の趨勢に左右されたということもあるだろう。
奇跡のコンディション! 義父から受け継いだ1973年式「DX」
改めて、会場に展示されていた貴重な初代バイオレットの、さらに初期モデルを紹介しよう。オーナーの廿楽尚さんにお話を伺うことができた。
「年式は1973年式、バイオレット1400DXのハードトップです」
バイオレットにもスポーツグレードの「SSS(スーパースポーツセダン)」や上位モデルの「GL」などがラインアップされていたが、こちらの個体はその下のベーシックなグレードである「DX(デラックス)」だ。それにしてもグリーンメタリックの外装をはじめ、異様に程度が良い。そのワケはどこにあるのだろうか。
「状態が良いのは、もともと日産でメカニックをやっていた義父が丁寧に乗っていたからでしょうか。私も昔から旧車に乗りたいと思っていて、人とちょっと違った車種がいいなとも思っていましたので、その個体を2005年に義父から譲り受けました」
このバイオレットが廿楽さんの手元にやってきたとき、走行距離は2万kmにも満たなかったという。オリジナルの姿をよく保ったままそれから20年余り。現在の走行距離は4万kmほどと、年式を考えれば非常に低走行な状態を維持している。
部品探しも旧車ライフの醍醐味! いつかは夢のオーナーズクラブを
「このバイオレットのことはとても気に入っています。L14型エンジン(直列4気筒SOHC)をはじめ機関の調子は良いのですが、外装の樹脂パーツなどの入手はなかなか苦労します。上位グレードがブラック基調の内装色なのに対し、このデラックスの明るいインテリアも気に入っています。いま履いているホイールキャップはGL用で、デラックス用とは違うんですよ」
愛車についてオーナーならではのこだわりが次々と語られた。イベントなどに参加しても、なかなか同じクルマに乗っているオーナーと出会う機会がないというが、「でも、いつか仲間を増やして710型のオーナーズクラブとか作れたらいいですね」と語る廿楽さん。そのときは、またぜひお話を聞かせてほしい。
