20年探し続けてついに発見! 納屋で40年眠っていた幻の日産車
街中でも見かける機会がすっかり減ってしまったのが、懐かしの国産オールドタイマーのクルマたちです。群馬大学桐生キャンパス内で過去最大規模で開催されたクラシックカーイベントの会場で、ひと際レアな日産のセダンを発見しました。青春時代の思い出が詰まったクルマを約20年間も探し続け、納屋で40年眠っていた奇跡の個体と出会ったオーナーの熱い旧車への想いと、心温まるストーリーをお届けします。
青春時代の苦い思い出が詰まった実家のクルマ
群馬県桐生市にある群馬大学桐生キャンパス内を舞台に、約260台のクラシックカーが集まった「クラシックカーフェスティバル イン 桐生」。キャンパス内には参加車両たちがメーカーや国籍別に分かれて展示されている。その中の日産エリアに鎮座していた、1978年式の白い日産「スタンザ」のオーナーに話を伺った。
「まだ乗り始めて1年くらいですし、旧車も初心者の私のことなんて記事になりますか?」
と謙遜するのは、神奈川県横浜市から妻とともに参加した沼川滋さんだ。
「免許を取って、教習所以外のクルマで初めて運転したのが家にあったスタンザなのです。箱根でぶつけてしまい、父親に殴られたこともありましたね」
その後、自身のクルマを持つようになってからは、ジムカーナ競技を中心にモータースポーツへとのめり込んでいた沼川さんだったが、2005年にとある転機が訪れる。
ともにモータースポーツを楽しんでいた友人が、1974年式の日産「バイオレット バン」を手に入れ、1年かけてピカピカにレストアしたのだ。その置き場として沼川さんが自宅の屋根付き駐車場を提供したことで、バイオレット バンをシェアするようになり、これまでの愛車とはまた違った旧車の楽しさに目覚めたそうだ。
「自分も旧車が欲しいと思ったとき、所有するならスタンザしかないと思いました」
納屋で40年間眠っていた奇跡の個体との出会い
とはいえ、中古車情報サイトを探してもまずお目にかかることのないレア車となっており、販売情報は皆無であった。それでも毎日の日課としてスタンザを探し続け、20年近い歳月が流れる。そして2年前の2024年、ついに情報を掴んだ。
「販売サイトではなく、買取店のバックヤードにあったクルマを『スタンザだ! 珍しい!』と誰かがSNSに投稿していたのですよ」
その買取店は、この手の自動車趣味人の間ではマニアックなクルマも扱うことでそこそこ知られているショップだった。地域情報からもすぐにピンときた沼川さんはすぐさま行動に出る。
「あった! とすぐにショップへ駆け付け、スタッフと話しました。『不動車ですし、まだ売れないのですよ』と最初は言われましたが、お願いして譲ってもらいました」
ショップ側でエンジンの始動や足まわり、ブレーキの整備など車検取得までの作業をおこない、無事にナンバーが付いた。そして、自宅のある横浜まで乗って帰るぞと意気揚々とショップをあとにした沼川さんだったが、オーナー初日にさっそく旧車の洗礼を受ける。
「首都高速道路で水温がどんどん上がっていき、オーバーヒートしてしまいました」
手元に来てからは、ラジエーターの張り替え、キャブレターのリプレイス品(代替品)への交換、点火系の一通りの見直しなどをおこない、現在は問題なく走れる状態に仕上がっている。
無事に公道を走れるようになったことで、沼川さんはひとつの行動に出た。車検証の記録に残っていた初代オーナーのもとへ、スタンザが奇跡の復活を遂げたことを報告しに訪ねてみたのだ。
じつは初代オーナーは、このスタンザを40年間も納屋で大切に保管しており、2023年に業者が引き取った際には「行き先はドバイだ」と聞いていたという。そのため、中東へ渡ったはずの愛車が再び日本のナンバーを付けて目の前に現れたことに驚きつつも、大変喜んでくれたそうだ。
追浜工場でのミーティング開催を夢見て
「宮ヶ瀬などで三々五々集まるイベントにはクルマの調子確認がてら参加したことがありますが、大型イベントはじつは今日が初めてなのです」
沼川さんがネットなどで調べたところ、日産の兄弟車としてラインナップされていた日産「オースター」なども含め、現在スタンザは全国各地に4台しか生存していないようだ。
「ようやく不安もなくなってきたので、こうしたイベントには積極的に参加したいですね。あとは自宅のすぐ近くに、スタンザが造られた追浜工場があるのです。いつかその追浜工場で、そこで製造されたクルマのミーティングを開き、動くスタンザが集まったら嬉しいなと妄想しています」
青春時代の思い出を原動力に、奇跡の復活を遂げた幻の名車スタンザ。イタリア語で「部屋」を意味しており「快適な居住空間を持つファミリーセダン」を表現したという。日産の歴史を愛するファンたちを勇気づける「居心地のいいイベント」が実現する日を、沼川さんだけでなく多くのクルマ好きが心待ちにしているはずだ。
