現行ランクル70を“街乗りアメリカン”へ。ブラックバスをテーマにした異色のオンロードカスタム
イベント会場でひときわ静かな存在感を放っていたのが、再再販モデルのトヨタ「ランドクルーザー70」だ。ブラックバスをテーマにしたボディカラーと街乗り志向のカスタムが施され、従来のクロカン像とは異なる方向性を示している。釣りというライフスタイルと移動手段が交差した1台の実像を追った。
記憶の形を残した再再販70の選択理由
イベント会場でひときわ落ち着いた存在感を放っていたのが再再販モデルで現行のトヨタ「ランドクルーザー70」である。その姿は懐かしさと新しさが同居し、独特の空気をまとっていた。オーナーの“マサキ”さんがこのモデルを選んだ理由は明快でありながら、感覚的な要素も強い。
「昔からこの形が好きでした。ただ私は年間4〜5万km走るので、旧車だとトラブルが不安で。同じ形で新しいモデルが出るなら、それが1番理想でした」
道具としての信頼性と、長年の記憶に刻まれた造形。その両立がトヨタ ランドクルーザー70を選ぶ決め手となった。しかしこの1台は単なる70ではない。ブラックバスをモチーフとしたカラーコンセプトが与えられ、カラープロテクションフィルム(耐傷性のあるカラーフィルム)にて深いグリーンを基調にルーフはホワイトのツートンで仕上げられている。さらにその一部には模様がうっすらと入れられていながらも、普段はほとんど主張せず、光が当たったときだけ輪郭が浮かび上がる仕立てとなっている。水辺の生き物を思わせるビンテージ調の色調でありながら、都市でも自然でも馴染むバランスを持たせた構成だ。
「全部緑にすると少し暗くなるので、ミニとかランドローバーみたいな雰囲気を意識しました」
彼の愛車のポートフォリオとしては、今回は買い替えではなく増車。
「基本的に魚釣りが好きで趣味に合わせての増車です。だから釣りたい魚によってクルマが増えるのです。今回はブラックバス(笑)。ですからボディ色も緑で、カスタムの方向性で悩むことはありませんでした」
あとはこのトヨタ ランドクルーザー70のカスタムでは、リフトアップなどのクロカン系が多いが日本で走るならアスファルトが大半ということで、オンロードで似合う「街乗りアメリカンカスタム」に仕立てたという。もともと輸入車が好きでアメ車のみならずヨーロッパ車も乗り継いできた“マサキ”さん。どのクルマもカスタムしてきたそうで、そういった考え方も今回のカスタムに作用したようだ。
造形を削ぎ落としたオンロード再定義
このランドクルーザー70の特徴は、派手さではなく整理された構成にある。ホイールはクリムソンのDEAN クロスカントリーの16インチ(リム幅は8.0J)を装着し、出面はインセット±0をセットしている。タイヤはトーヨータイヤのオープンカントリーR/T(LT265/75R16)で、レトロな意匠を含めて全体のトーンを整えている。
足まわりは一般的なリフトアップではなく、リアをワンオフブロックで16mm下げるという逆のアプローチを採用。こうして前後のフェンダーとタイヤのクリアランスも整えた。
「リアを少し下げることでオーバーランドっぽさが出るし、純正の延長のような自然さが残せると思いました」
外装ではフロントグリルをラッピングフィルムでメッキ化させ、フロントバンパーはメッキ加工されたスチールへ換装。昔の70用ではないか、とオーナーは語る。さらに背面タイヤは撤去され、フロントバンパーと同じメッキバンパーを加工してリアへ移植。ステーも全てワンオフするなど工夫して取り付け。バグガードには40ランドクルーザーのロゴを入れることでビンテージなイメージをアピールする。
またリア周りは構造そのものを見直した仕上がりであり、テールランプはリアゲート横のカバーを取り除きそこへ新設、よりシンプルな70の印象へと回帰している。
加えて視界系も刷新されている。左前方確認用補助ミラーは撤去され、前方および左前にカメラを設置。センター上部には別付2画面モニターを配置し、右にフロント、左に左前映像を表示する構成だ。これにより洗車機対応を含む実用性も確保されている。
さらに特徴的なのがアドブルー(尿素水)の処理である。ボディ左側の給水口は板金加工によって完全に埋められ、外観からは一切確認できない状態となっている。そのため補充はボンネット内から行う方式へと変更された。
「見た目をとにかくスッキリさせたかったんです」
機能を残しながら存在だけを消すという判断が、この造形思想を支えている。
移動と釣りが重なるライフスタイルの実像
このランドクルーザー70は、見せるためのクルマではあるが、移動と趣味を接続する実用機として存在している。ボディにはカラーPPF(プロテクションフィルム)が施工され、飛び石や枝への耐性を確保している。林道や山間部への走行も前提とした仕様である。
「通常のラッピングではなくPPFなので、枝が当たっても気にならないですね」
岡山を拠点としながら、釣行は北海道や長野など全国へと広がる。狙う魚種に合わせ、大物の気配があれば遠征もいとわないスタイルだ。ロッドは車内に整理され、移動そのものが釣りの一部として成立。現在はブラックバスに加え、渓流のトラウト(マス類)も視野に入れフィールドを広げている。
その結果、ブラックバスの自己記録は59.5cm。これは2025年の記録だ。ここ20年間はバス釣りから遠ざかっていたが、そのブランクを経て再開し、再びフィールドへ戻ってきた。
「昔の方が魚は多かった気がします。でも久しぶりに大きいのが釣れたときは本当に感動しました」
過去にはカジキ釣りも経験しており(最高釣果はなんと3m!)、ゲームフィッシングとして楽しみつつすべてリリースしてきたという。
クルマと釣りと移動距離。そのすべてが独立せず、ひとつの生活のなかで重なり合っている。トヨタ ランドクルーザー70はその重なりを可視化した存在である。富士スピードウェイ(静岡県)にて開催されたランクルフェスの会場でも、この1台は静かにその輪郭を見せていたが、近々カラープロテクションフィルムをフルで貼り直し、リメイクする予定だという。
水面下で獲物を狙い、静かに息を潜める孤高のブラックバスのように。このランドクルーザー70もまた、研ぎ澄まされた新たな装いをまとい、次のフィールドへ向かう瞬間をじっと待っているのだろう。どこまでも続くアスファルトの先にある、まだ見ぬ水面と大物を求めて。オーナーと愛車の終わらない旅は、これからも深く、そして豊かに続いていくのである。
