見た目は大衆車でも中身は165馬力! AE111型カローラGT
新潟県で開催された旧車イベントの会場で、周囲のスポーツカーとは異なる静かなオーラを放つ1台のセダンを発見した。1999年式となる8代目のトヨタ「カローラ」だが、ボンネットの下には165馬力を発揮する専用のスポーツカー顔負けのエンジンが搭載されている。一見するとごく普通の大衆車でありながら、この個体はサーキットでスポーツカー顔負けの走りを楽しめるというその素性をオーナーに探ってみた。
2000年までの名車が集うイベントで静かなオーラを放っていた8代目カローラFF4ドアセダン
イベント会場のゲートが開き、往年の名車たちが続々と入場してくる。きらびやかな欧州製スポーツカーや、派手なエアロパーツで武装した国産クーペが並ぶなかで、ひときわ落ち着いた佇まいを見せていたのが1台のトヨタ「カローラ」である。1995年から2000年にかけて生産された、AE111型の8代目モデルだ。
日本の風景に最も馴染むといっても過言ではないごく普通の4ドアセダンだが、クルマ好きの目を惹きつける独特のオーラを放っている。エントラントの車両が所定の位置につき、会場が落ち着いたタイミングを見計らって、このカローラが持つ静かな迫力の理由を探るべくオーナーへと声をかけた。
歴代カローラを乗り継ぐオーナーが2005年に入手したAE111型GTグレード「黒ヘッド」
「1999年式のカローラで、グレードはGTです」
そう教えてくれたのは、オーナーの“ぬまっきー”さんだ。彼はこれまでAE91型、AE92型と歴代のFFカローラを乗り継いできた生粋のカローラフリークである。現在の愛車であるAE111型は、2005年に中古車として購入したものだという。
カローラGTは、コンパクトなセダンボディに1.6リッター直列4気筒の「4A-GE型」エンジンを搭載した生粋のスポーツグレードである。とくにAE111型に搭載された最終進化系の20バルブ仕様(通称:黒ヘッドと呼ばれ気筒あたり5バルブ)は、自然吸気でありながら最高出力165馬力を叩き出す名機だ。AE111型のカローラセダンが販売されていた1990年代後半は、実用車としての基本性能を高めつつ、バブル崩壊後のコストダウンという課題に直面した過渡期のモデルであった。しかし、トヨタは走りのフラッグシップであるGTグレードだけは妥協しなかった。レビンやトレノの最上位グレードと同じ高回転型エンジンを与え、ファミリーカーの皮を被ったスポーツモデルとして市場へ送り出したのだ。
走り屋に人気のカローラ(およびスプリンター)といえば、クーペボディを持つ歴代の「レビン」や「トレノ」を思い浮かべる人が多い。しかし“ぬまっきー”さんから意外な返事があった。
「必ずしもクーペばかりではなく、セダンボディでサーキット走行を楽しんでいるカローラ乗りも結構多いんですよ」
事実、彼はこの実用的な4ドアセダンで、ミニサーキットでの走行会を頻繁に楽しんでいる。
TRDの足まわりと純正フルエアロで仕立てた「羊の皮を被った狼」スタイルを貫く
サーキットを走る車両でありながら、見た目はできるだけさりげなく仕上げるのが“ぬまっきー”さんのこだわりである。控えめな純正フルエアロを纏ったエクステリアからは、威圧感や派手さは一切感じられない。
しかし見えない部分には、走りを極めるためのチューニングがしっかりと施されている。ショックアブソーバーやスプリングといった足まわりはトヨタ直系のチューニングブランドであるTRD製のパーツで締め上げられ、ブレーキパッドやタイヤの銘柄選びにも余念がない。クーペと基本コンポーネントを共有しながらも、リアに隔壁を持つセダンボディは剛性面で有利に働く。TRDのサスペンションキットが路面からの入力を正確に受け止め、ダイレクトなハンドリングを生み出してくれる。
「2019年にはエンジンのオーバーホールを行いました。車高調整キットは今のセットで2セット目になります。リアのスピーカーボードは自作したものです」
もともとは家族を乗せて買い物へ行くための実用セダンでありながら、ひとたびサーキットへ持ち込めばスポーツカーを追い回すパフォーマンスを発揮する。このような「羊の皮を被った狼」と呼ぶべきギャップ萌えは、自動車趣味における王道のひとつである。日常に溶け込む端正なルックスの奥に、165馬力の名機とオーナーの熱い情熱を隠し持つカローラGT。街中で偶然すれ違ったクルマ好きを思わずニヤリとさせる、極上の和製スポーツセダンであるカローラGTだが、残念ながらこの8代目カローラが「GT」というグレードの歴史の幕引きモデルとなってしまった。
