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純正の電子制御を活かして減衰力を磨き上げる。W463A型「Gクラス」専用のKW製サスペンション

メルセデス・ベンツ Gクラス:リア独立懸架サスペンションにKWキットを組み込み、電子制御式ダンパーへ換装した状態

純正の電子制御を活かしたまま減衰力を磨き上げ、まるでサルーンの快適性を手に入れる

ようやく手に入れたW463A型メルセデス・ベンツ「Gクラス」を、現行のW465型へ乗り換えるべきか。3000万円を超える投資に踏み切る前に、試す価値のある選択肢がある。純正サスペンションをKWの「DDC PLUG&PLAY」へ交換するという答えだ。重量級のボディがスイスイと曲がる、その激変ぶりを取材した。

2024年登場のW465型に乗り換えるべきか? W463A型オーナーが抱える乗り味への不満

取材のきっかけは、あるW463A型Gクラスのオーナーが抱えていた素朴な疑問だった。純正の乗り味に不満があり、こう問いかけてきたという。

「GクラスのW465に乗り換えたら、いまのW463Aから乗り味は変わるのか。それとも、W463A用の足回りをKWに変えたら乗り味は変わるのか」

Gクラスは1979年に初代が登場した本格オフローダーで、軍用車両を民生用にアレンジしたモデルがその源流にある。基本的なスタイリングと堅牢なボディは、当初の設計思想を色濃く受け継いできた。

外観の見た目は前型のW463Aと現行のW465でほぼ変わらない。それでも現行のG63などは3000万円を楽に超える。世界的な納期の遅れもあり、ようやく手にしたW463Aで、まだ数年しか乗っていないというオーナーも多い。元は軍用車だから当然でもあるものの、“これだけ高価な価格帯の車なのに、この乗り味なのか”という疑問を持つ人はじつに多い。高いコストをかけて乗り換えるより、純正サスペンションを交換して快適に乗り続ける道があるのではないか。

2018年にダブルウィッシュボーンの独立懸架へ進化してもなお残るゴツゴツ感

2018年のビッグマイナーチェンジは、Gクラスの乗り味を根本から変えた。長く同じ足回りを使ってきたW463からW463Aへ移行した際、フロントにダブルウィッシュボーンの独立懸架サスペンション、リアにリジッドアクスルを組み合わせた新設計の足回りを採用した。これによって、それまでとは別の車のように乗り味が大きく変わったのは事実だ。

それでもなお、Gクラスのゴツゴツとした乗り味が気になるというオーナーの声は根強い。高重心かつ重量級のボディゆえに、高速域でのフラつきや、路面の不規則な入力に対する突き上げ感が残るためだ。冒頭のオーナーも、こう打ち明ける。

「正直、通常の街乗りにはそれほど不満はない。ただ、ゴルフに行くまでの長距離移動に不満がある」

非日常のゆったりとしたオフロードの雰囲気を味わいたいときはいい。ところが日常のロングドライブでオフローダーらしい硬さが顔を出すと、快適とは言いがたい。その悩みへの現段階での最適解となるのが、KWの「DDC PLUG&PLAY」だ。

純正の2ウェイ電子制御をカプラーオンで活かすKW「DDC PLUG&PLAY」の仕組みとは

DDC PLUG&PLAYの最大の特徴は、純正の電子制御システムをそのまま活かす設計にある。商品名のDDCはダイナミック・ダンパー・コントロールの略で、PLUG&PLAYの名のとおり、純正の電子制御式サスペンションにカプラーオン(コネクターを差し替えるだけの接続)で装着でき、その機能に即対応する。

W463Aには、コーナリング時やブレーキング時にスプリングレートを瞬時に切り替え、高い安定性と俊敏なハンドリングを両立する電子制御サスペンションが採用されている。純正量産車で、伸び側と縮み側それぞれに2ウェイ式の電子制御機能を備えた足回りは、ほかにほとんど例がないハイスペックな構成だ。ダンパー下部の2つのソケットには「R=リバウンド(伸び側)」「C=コンプレッション(縮み側)」の文字が刻まれ、2本のプラグを介して伸び側と縮み側を別々に電子制御する。この2ウェイ式は、KWの定番モデル「V3」でも定評のある機能だ。

一般的に社外サスペンションへの交換では、電子制御を無効化するキャンセラーを伴うことが多い。DDC PLUG&PLAYは車両側ECUからの信号をダイレクトに受け取り、純正のドライブモードセレクト機能を維持したまま、減衰特性だけをKWの最新技術へと引き上げる。取り付け部分にはピロボール化した内部の耐久性を高める防水機能も備わり、細部の作り込みにも世界最高峰らしさがうかがえる。

車両側の操作で減衰力を変更して理想の走りを探る

減衰力の変更は車両側の操作で行える。撮影で使ったW463A/400dの場合、円形のセレクターダイヤルで液晶画面を表示し、車両→ダイナミックセレクト→インディビデュアル設定→サスペンションの順に進むと、「コンフォート」か「スポーツ」の2種類から選べる。コンフォートは若干柔らかい印象のため、オールラウンドに使えるスポーツに固定しておくのもいい。なお、G63はコンフォート、スポーツ、スポーツプラスの3種類から選択できる。

DDC PLUG&PLAYの本体価格は税込225万5000円で、対応グレードはG550/400d/G63(いずれもW463A)だ。純正の電子制御式サスペンションに順応させる構造ゆえ、価格はどうしても高くなる。シェルケースの素材は世に多いステンレスではなく、高品質なアルミを採用する。

それでも、純正量産車で2ウェイ式の電子制御を採る足回りはGクラスくらいしかない。複雑なサスペンション構造に対応するだけに、この価格も当然といえる。ちなみに、この純正電子制御サスペンションはG63には標準装備、G550は海外でオプション扱いのようで、純正部品そのものも相当高価だと予測できる。

KWのアイデンティティである車高調整機能も備わる。車高ダウンの調整幅はフロントが約10〜40mm、リアが約15〜40mm。撮影車両は前後25mmのローダウンにセッティングし、ホイールは純正18インチ、タイヤはファルケン「WILDPEAK A/T」(265/60-18)を組み合わせた。SUVの車高を落とすのは見た目のスタイリッシュさより、低重心化で前後のバランスを整え、車体を安定させることが最大の目的といえる。

Gクラスの足回りを安全に外す作業は、非常に手間のかかる慎重な工程になる。重量級の車体を載せられるしっかりとしたリフト設備も欠かせない。それだけに、交換は信頼できるショップ選びから気をつけたい。

路面に吸い付くタイヤの接地感! 高級サルーンのような乗り味を同乗走行で体感できる

実際の走りは、この価格を納得させるものだった。常時減衰力を変えていく純正システムに対応しながら、KWらしいしっとりとした減衰力でタイヤの接地性を高め、ロール量を調整しつつ気持ちのいい走りを実現する。直進では安定してアクセルを踏み込める。ひとたびワインディングへ入れば、路面に吸い付くようなタイヤの接地感が得られ、まるでサルーンのような快適な乗り味に驚かされる。目線の高いSUVが高級サルーンの感覚で走り、重量級のボディがスイスイと曲がっていく様は本当に気持ちがいい。

そもそもW463A用のダンパーキットは選択肢が少ない。取材した限りでは、純正電子制御を完全な形で活かせるキットとしてはおそらくKW以外に設定はないと思われる。高価なのは間違いないものの、その価値は乗って確かめてもらうほかない。実際に乗ってみたいという人には、スタッフ運転による同乗走行で、この異次元のライド感をリアルに体感してもらえる。

なお、これだけの高額な製品だけに、ドイツ本国のKWでも完成品をストックせず、すべて受注生産で対応している。オーダー後は1.5〜2カ月程度の時間がかかると見ておきたい。裏を返せば、注文するたびにフレッシュな1台が届くということだ。3000万円オーバーの現行モデルへの乗り換えを検討する前に、まずは足回りの交換という選択肢をじっくり考えてみてほしい。

ようやく手にしたW463Aを、すぐに買い替えるのではなく、足回りひとつでさらに深く乗りこなす。その発想は、クルマと長く付き合っていくオーナーの姿勢そのものである。DDC PLUG&PLAYは、Gクラスに宿る質実剛健な個性を消すのではなく、日常の快適性へと丁寧に翻訳する装置だといえる。愛車をどう育てるか。その答えのひとつが、足元に確かに存在している。

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