貴重なハコスカをカーボン仕立てにしたのは真剣な理由から
日産「スカイライン」シリーズの中でもいまやヴィンテージ扱いで希少な存在となっている名車が3代目、通称「ハコスカ」です。ここで紹介する全身ドライカーボンのハコスカは、奇をてらったドレスアップが目的なのではなく、ハコスカをこれからも長く走らせ続けるためのプロジェクトとのこと。「ハコスカーボン」に込められた志とは?
Aピラーからルーフまであらゆる部分がカーボン
大阪オートメッセ2025(OAM)には数多くの国産旧車も展示されていた。そんな中でSTARのブースで注目を集めていた1台が、この全身カーボンをまとった「ハコスカ」こと、1972年式の日産3代目「スカイライン」だ。ボンネットやオーバーフェンダーなど一般的なカーボンパーツだけでなく、ルーフからドアに至るまで、見える部分は基本的に全てカーボンに置き換えられているのだ。詳しくお話を伺ってみた。
「これらカーボンは日本国内で製造したドライカーボン製で、ドレスアップ目的のカーボンパーツとは強度も精度も違います。当社で販売しているカーボンパネルは、レストレーションの際に使用していただくことができます。かつては鉄とプラスチックの接合には問題があったんですが、最近は鈑金用のパネルボンドも本当に良くなっているので、カーボンパネルを使ったレストアもより一般的になりつつあります」
鈑金用パネルとして市販されている各種カーボンパーツを採用
STARのデモカーとして各地のイベントに出展しているこの「ハコスカーボン」と呼ばれる車両は、モノコックの基本骨格部分を除いて、外から見える部分はほぼ全てカーボンパーツに置き換えられている。しかもこれらカーボンパーツはワンオフで製作したこのクルマのためのパーツではなく、全てのパーツがレストア用として一般に販売されている市販パーツとなっているのだ。
ハコスカはすでに製造から50年以上が経過しているため、レストレーションの際の鈑金に費やす手間を大幅に削減することができるのだ。見た目が派手なので、全身カーボンのハコスカである点のみが注目されがちだが、じつはレストア作業の救世主になる可能性を秘めているのだ。
軽量と強度を兼ね備えたドライカーボンの可能性
一般的なドレスアップパーツは製造コストの安価なウエットカーボンを採用しているケースが多いが、STARがパネルに採用するカーボンパネルは、強度と軽量性に優れ、レーシングカーなどに採用されるドライカーボンを採用している。ウエットカーボンに比べて何倍も手間がかかるうえに、加熱して成形するため専用の窯が必要となるなど、製造にはハードルが高いが、ウエットカーボンの何十倍もの強度を持つ。これによって鈑金用のパネルとしても利用できるというわけだ。
ちなみに展示車両はオーバーフェンダーに18インチのワタナベホイールを履いたレストモッドスタイルだが、純正のサーフラインを活かしたレストアも可能。現在も徐々にパーツは増えているそうなので、ハコスカオーナーはぜひともチェックしてほしい。
