自走で京都から東北のサーキットへ
「東北660選手権」には、遠方から参戦するドライバーも多くいます。そのひとりが、京都から参戦する岡部皓輝選手です。車両を東北に置かず自走で往復するだけでなく、レース関係なく練習に訪れることもあります。現在はスズキHA36型「アルト」で「HA36カップ」に参戦し、改造範囲の制限が厳しい中、足まわりのセットアップや軽量化を徹底しています。遠征組ならではの工夫が随所に施されたマシンで上位を狙います。
改造範囲が限られる「HA36カップ」でのマシン作り
軽自動車によるレースシリーズ「東北660選手権」は名前のとおり東北のサーキットを舞台とするイベントだが、遠方から参戦するエントラントも多い。その代表格ともいえるのが、京都から何年もフル参戦を続けている岡部皓輝選手だ。車両を東北に置いているわけではなく、積載車を使わずに往復を自走するうえ、レースとは関係なく練習に訪れることもある。
以前は千葉県にあるZTO AUTO(ズィーツーオート)の車両でレースを戦い、3年にわたる経験を積んだ後、スズキHA36型「アルト」を購入。現在は2022年にスタートした「HA36カップ」を主戦場としている。このクラスは、新規格NAの東北660選手権よりもさらに改造範囲が制限されており、岡部選手は足まわりのセットアップと軽量化を重視した車両作りを行っている。そこには、レースで勝つことだけではなく、遠征組ならではの工夫も随所に見られる。
たとえばオーディオ。京都から東北までの片道800kmのロングドライブや日常の足としての使用を考慮して普段はオーディオを搭載しているが、サーキットに到着すると取り外している。さらに、少しでも軽量化するため、スピーカーまで外す徹底ぶりだ。そうすることで、レギュレーションの最低重量は余裕でクリアしている。
理学療法士の知識を活用
足まわりについては、まずノーマルの状態で走り込み、次に車高調へステップアップ。現在はさまざまなメーカーのスプリングをテストしながら、最適なセッティングを模索している。
また、HA36型アルトの弱点とされるフロントダンパーのストラット側にあるゴムの劣化については、ホームセンターで購入した耐震用のゴム板をカットして挟み込むことで対策済み。エンジン系は、HA36型アルトユーザーに人気の高いパルスポーツのチューニングECUを採用し、排気系はジェイワークスのエキゾーストマニホールドとウイルズウィンのマフラーを組み合わせている。
もうひとつのこだわりは、ドライビングポジションだ。岡部選手は理学療法士としての知識を生かし、正しい姿勢の重要性を熟知している。そのため、シートの位置や角度だけでなく、ステアリングとの距離にも妥協せず、理想的なポジションを追求している。レース後のドライビング分析も欠かさない。走行時には常にデジスパイスのデータロガーを使用し、自身の走りを詳細に振り返る。
個性が光るクロミ仕様のラッピングデザイン
2024年のシーズン途中からは、黒と紫を基調としたラッピングを採用。これはサンリオのキャラクター「クロミ」をオマージュしたもので、岡部選手のゼッケン番号「963」もクロミにちなんだ語呂合わせとなっている。ヘルメットや車内の各所にもクロミの装飾が施されているため、レース観戦の際はぜひチェックしてほしい。
頻繁に東北へ足を運んでいるとはいえ、やはり地元勢に比べると練習機会は限られる。そのため、2023年まではライバルの後塵を拝することも多かった。しかし2024年シーズンは、開幕戦の予選で3位、第2戦の予選では2位、そして最終戦では自身初のポールポジションを獲得するなど、努力の成果が確実に結果へと表れ始めている。
最終戦は3位で表彰台に上がったものの、決勝レースでは惜しくもポジションを落とす場面が多かった。それは、上位ドライバー同士の接戦を経験する機会が少なかったことが影響している。しかし、この悔しさを糧に戦う2025年シーズン。岡部選手はシリーズチャンピオン争いの中心となる存在になれるだろうか。
>>>2023年にAMWで紹介されたクルマを1冊にまとめた「AMW car life snap 2023-2024」はこちら(外部サイト)
