航空機用のV12エンジンを積んだ化け物も存在! 規格外すぎる世界的TV司会者のガレージ拝見
アメリカの人気テレビ番組で長年司会を務めたジェイ・レノ氏は、世界有数のカーコレクターとしても知られています。1998年、まだ彼がLA近郊の「秘密基地」に車両を隠し持っていた時代に、筆者はその驚愕のコレクションを取材する機会に恵まれました。排気量2万7000ccの航空機用エンジンを積んだロールスロイスなど、スケールが違いすぎる愛車たちの逸話を振り返ります。
「トゥナイト・ショー」司会者で稀代の車愛好家、ジェイ・レノが築いた「ビッグ・ドッグ・ガレージ」とマルチな功績
ジェイ・レノという名前の人物をご存じだろうか。正式な名前は「ジェームス・ダグラス・ミュア・レノ」というそうだが、誰もがジェイ・レノと親しみをこめて呼ぶ。
イタリア系のアメリカ人である。彼を有名にしたのは、「トゥナイトショー」というアメリカNBCの番組司会を22年も務めて、人気が沸騰したことによる。つまりテレビタレントなのだが、コメディアンとしても声優としても、さらには俳優としても活躍したいわゆるマルチタレントである。
そんな彼は、多くのアメリカン エンターテイナーがそうであるようにクルマ好きで、複数(自動車:180台 オートバイ:160台 諸説ある)のクルマを所有している。記憶では、彼のコレクションを訪れたのは1998年のこと。当時クライスラーが、試乗会の帰りか何かの機会に彼のコレクションに連れて行ってくれた。当時はクライスラーと繋がりがあったようで、彼自身もまた、古い「クライスラー 300」をコレクションしていた。
規格外の情熱で27000ccの戦闘機エンジンを積んだロールスなど、名車を自在に操るジェイ・レノのレストモッド
この当時はまさしく秘密基地の様相を呈した場所にクルマを保管していて、もちろん公開はしていなかった。最近はスペースも大きく拡大し、一般が入れるようになっているらしい。
筆者が見に行った当時のコレクションは、基本的にアメリカとイギリスのモデルが多く、とくにアメリカのコレクションは「デューセンバーグ」のコレクションが充実していた。ほかにはコブラなどもあったと記憶するが、あまり写真を撮っていないので、何のモデルだったかは覚えていない。
当時からすでにいわゆるレストモッドに手を染めていて、なかでも一番びっくりしたのが「ロールスロイス シルバーゴースト」だった。全体像を撮っていないけれど、そのエンジンはしっかりと写真に収めている。
彼の説明によれば、エンジンルームを開いて「これ、何のエンジンかわかるか?」と聞くので、単純にロールスロイス(現にそう書いてある)だと答えると、人差し指を左右に振りながら、次のように語った。
「これはな、ロールスロイスはロールスロイスでも、スピットファイアに搭載していたスーパーマーリンエンジンを搭載しているんだよ」
これにはビックリした。そのとき正確なことを聞かなかったけれど、このスーパーマーリンのエンジンはイギリスの戦闘機「スピットファイア」のみならず、アメリカの「P-51マスタング」にも搭載していたから、アメリカでも容易に手に入ったのかもしれない。排気量はじつに27000ccのV12だ。本来は航空機用として1000馬力以上の途方もない出力を絞り出すバケモノであり、これを乗用車のシャシーに押し込むという発想自体がまさに規格外である。
そして彼は、「ちょっとこっちに来いよ」と、クルマのリアに筆者を連れていき、排気管に腕を突っ込んで見せた。そのエキゾーストパイプの太さは、優に彼の腕を飲み込む太さだったから、おそらくは15cmぐらいの直径だったのではないかと思う。最後に「速いぜぇ」と一言、にやりと笑った。
伝説のリクリエーションや世界最速ベンツトラックが並ぶガレージの変遷と、秘密基地から進化した聖地への再訪
デューセンバーグは3台ほどあった。ただこちらもふらっと見ただけで、グレードなどについては不明である。少なくとも次から次へと彼の説明で見て回ったこともあって、写真が少ない。
「ブガッティ タイプ57C クーペ アトランティーク」は、デンマーク人のエリック・クークスが製作した13台のアトランティークのうちの1台で、ジェイ・レノはこのクルマを今も所有しているという。ただし、当時筆者が見たカラーリングからは変更されている。
このアトランティークは、その精巧さゆえに本物とほとんど区別がつかないそうで、製作にあたっては、現在ラルフ・ローレンが所有するシャシーナンバー「57591」を正確にコピーしたものだ。使われている部品もオリジナルのブガッティパーツ、もしくはそのコピー品が使われているので、単にレプリカと呼ばずにリクリエーションと呼んでいるところもある。この13台のうちの1台は、日本にも現存する。
これ以外にはなぜか、「ジャガー Eタイプ」の写真も撮っているのだが、このクルマも確か何らかの改造を加えたモデルだったと記憶する。
近年の写真を見て驚いたのは、メルセデス ベンツが1950年代のレーシングカーのトランスポーターとして製作した、通称「ブルーワンダー」が収まっていたことだ。このブルーワンダーは、スポーツカーである「300SL」と同じ直列6気筒エンジンを搭載し、レーシングカーを積載した状態で最高速度170km/hでアウトバーンを駆け抜けたという伝説を持つ世界最速のトラックである。メルセデス ベンツ ミュージアムにあるものも復刻版だから、おそらくこれも複数作られた1台と推測する。
冒頭に話したようにコレクションは大きく拡大し、見学もできそうだから、再び訪れてみたいものである。ちなみに当時はロサンゼルスの郊外にあって、場所は秘密だった。果たして今はどうなっているのであろうか。
