2つのクラシックカー祭典が教えてくれた、クルマが「文化」であり「芸術」である理由
カーライフエッセイスト吉田由美さんが、2026年春の2大クラシックカーイベントをハシゴしました。幕張メッセで開催された「オートモビル カウンシル 2026」(4月10日〜12日)と、奈良・薬師寺を舞台にした「コンコルソ デレガンツァ ジャパン 2026」(4月11日〜12日)。「知る、学ぶ、語る」文化の祭典と、「感じる、浸る、愛でる」芸術の競演。まったく異なる2つのイベントの魅力を吉田さんがレポートします。
熱気あふれる幕張メッセ! クルマを文化として愉しむオートモビル カウンシル
2026年の春は、クルマ好きにとって贅沢な季節になりました! 日本の自動車シーンを象徴する2つのクラシックカーのビッグイベントが、日本の東西でほぼ同時に開催されたのです!
ひとつは、2026年4月10日から12日に幕張メッセで開催された「オートモビル カウンシル 2026」。そしてもうひとつが、2026年4月11日から12日に奈良・薬師寺で開催された「コンコルソ デレガンツァ ジャパン 2026」です。どちらも名車を扱うイベントですが、その味付けはまったく別物です! 「オートモビル カウンシル」は「クルマを文化として愉しむ」もので、「コンコルソ デレガンツァ」は世界遺産である薬師寺を舞台に「走る芸術」を愛でるイベントです。
まずは「オートモビル カウンシル 2026」からご紹介します。今年で11年目となる本イベントのテーマは「クルマともっと恋をしよう。」です。メーカー各社が自らのアイデンティティを再定義するような、熱い展示が目立ちました。
トヨタブースでは、日本初のスーパーカー「トヨタ 2000GT」や1962年の試作車「パブリカスポーツ」(レプリカ)、そしてそれを祖として1965年に登場した「トヨタ スポーツ800 UP15型」が並んで展示されていました。
三菱のブースでは、歴代パジェロの展示が! 真ん中には今年中に発売予定とされる新型クロスカントリーSUVの今後の展開を予感させるようなヒントも隠されていました(笑)。
ホンダは、今年5月に発売予定で話題の新型軽BEV「ホンダ Super-ONE」と、往年の名車「ホンダ シティ ターボII」(通称ブルドッグ)を展示しました。シティを彷彿とさせるデカールをまとった「Super-ONE」が並んで展示され、さらにシティ ターボの隣には、当時専用設計された「モトコンポ」が置かれていて、胸を熱くした人も多かったようです。
インポーターでは、「ポルシェ」や「マセラティ」なども出展していました。往年のスポーツカーの横に最新のモデルが並べられ、「昔と今」をセットで見ると、クルマやメーカーごとの歴史の深さが浮かび上がってきます。
とくに私が注目したのは、主催者展示の「Designed by ピニンファリーナ」です。じつはこのテーマは2年前に実施予定でしたが、急遽、巨匠ガンディーニの追悼企画へ変更されたため延期されており、今年ついに実現したのです! 入り口を入ってすぐの場所に「フィアット アバルト 750 レコルド エンデューロ ピニンファリーナ」や「フェラーリ 250GT SWB」などが展示されていましたが、その優雅なラインにはつい見入ってしまいました!
メーカー自らが手掛けるレストア車両からは、単なる懐古趣味ではなく、未来への技術の継承という力強いメッセージを感じました。そして、もうひとつ特徴的なのは「購入できるオートモビル ミュージアム」であるということです。もちろん非売品もありますが、国内外のヘリテージカーから最新のEV、さらには最新技術で甦ったクラシックカー「レストモッド」までが一堂に会します。「プライス」がついているクルマは、初日なのに完売が続出していました。
なかでも「ポルシェ 904/8」は18億円という桁外れのプライス! 果たして売れたのでしょうか? (笑)
往復1000kmのドライブで薬師寺へ! 荘厳なコンコルソ デレガンツァ
私はこの「オートモビル カウンシル」で勢いがついてしまったようで、翌日から奈良・薬師寺で行われる「コンコルソ デレガンツァ ジャパン 2026」にも行ってしまいました!(笑) 昨年はコンコルソ デレガンツァが先の週で、オートモビル カウンシルが翌週の開催でしたが、今年はその逆で、しかも翌日からの開催だったのです。
コンコルソ デレガンツァの舞台は、京都の二条城に続いて、2025年より奈良の薬師寺へと移りました。薬師寺になってから今年で2年目です。神聖で荘厳な雰囲気がとても魅力的です。薬師寺は昨今、テレビCMでも取り上げられるほど話題になっており、行ってみたい場所のひとつでした。奈良は女性初の日本の首相となった高市総理の出身地でもあります。昨年は伝説のコンセプトカー「ランチア ストラトス HF ゼロ」が特別展示され、最高賞を受賞しました。ストラトス HF ゼロはここでの出展のあと、オートモビル カウンシル 2025の会場にも展示されていましたね。しかし、さすがに奈良は遠い……。
そう思いつつ、お借りしていたスズキ e VITARA(ビターラ)で、翌朝6時半に出発しました! 試乗も兼ねて往復1000kmをドライブし、目指すは奈良・薬師寺です。
とくに下調べもせずに無謀にも現地へ乗り込んだわけですが(もちろん関係者には連絡済みです)、はて、薬師寺のどこで行われているのでしょう? (笑) とりあえず薬師寺の駐車場にクルマを止め、境内の方へ歩いて行くと、16時ごろまでは審査のため、奥の玄奘塔周辺に展示されていました。そこには国内外から厳選された約70台の名車が、カテゴリー別にズラリと並んでいました。
2026年からはイタリアの「ASI(Automotoclub Storico Italiano)」や「ミッレミリア」ともパートナーシップを組み、専門家が歴史的価値、デザイン、保存状態などを総合的に細部まで審査し、最も美しい1台を選びます。ちなみに顧問&審査委員長は、元日産自動車専務執行役員・チーフクリエイティブオフィサーの中村史郎氏です。
魔法のような時間! マジックアワーのランウェイとベスト オブ ショー
17時ごろ、メイン会場にクルマが移動し「ナイトタイムセレブレーション」が始まりました。ライトアップされた伽藍(がらん)を背景に、自動車史に刻まれる名車たちが織りなすコントラストは格別です。マジックアワーから夜にかけて、時間の移り変わりとともに寺院の景色へ溶け込む姿は圧巻でした!
私は思いがけず、ご祈祷やガラパーティー、そして1台ずつレッドカーペットを走りながらその歴史や背景が解説されるメインコンテンツのひとつ「ランウェイショー」にも参加させていただきました! 「ランボルギーニ カウンタック」と「ラ フェラーリ」の2台に同乗させていただき、車内からもその様子を楽しませていただきました。
心残りは、翌朝も国宝の東塔を含む2基の塔と大講堂などを背景にする伽藍を見損ねたことです。下調べが必要でした! お天気も良く、みなさん早起きして楽しまれていたようです。
お宝クルマばかりでしたが、ガソリン自動車の第1号とされる1886年の「ベンツ パテント モトールヴァーゲン」(レプリカ)や、爆音で走る往年のレースマシンである1992年の「マツダ RX-792P」、トヨタ セラの元になったコンセプトモデル「トヨタ AXV-II」、そして高市早苗総理の元愛車をレストアして甦らせた1991年の「トヨタ スープラ 2.5GT ツインターボ リミテッド」など、バラエティに富んでいました。そんななか、今年の「ベスト オブ ショー」に輝いたのは、インド人オーナーの1928年製「ロールス ロイス ファントムI(エクスペリメンタル トルペード by ジャービス)」です。
オートモビル カウンシルは、「知る、学ぶ、語る」イベントです。クルマの歴史や未来を頭で楽しむ時間です。いっぽうのコンコルソ デレガンツァは、「感じる、浸る、愛でる」イベントです。クルマを芸術品として心で味わう時間です。
クルマの楽しみ方に正解はありませんが、クルマが「文化」であり、「芸術」であり、そして人生のパートナーであることを、改めて実感することができました!
