精巧に造り上げられたレプリカモデル
1951年と1953年に優勝したジャガー「Cタイプ」の後継モデルとして1954年に登場したのが「Dタイプ」です。1955年〜1957年のル・マン24時間レースで3回の優勝を記録した伝説のマシンでした。今回は箱車の祭典2024にエントリーしていたジャガー「Dタイプ ミュルザンヌ」を紹介します。
エンジンは4.2Lの直6を搭載
「イタリアで開催されているミッレ・ミリアを見学し、その足でロンドンのパーツショップに行って現地の人にクルマ街を案内してもらっていたら、このジャガー Dタイプ ミュルザンヌがあったんですよ。26年前の話です」
箱車の祭典2024の会場でそのように話してくれた羽生氏明さんによると、現車はよくできたDタイプのレプリカモデルで、ジャガー スポーツという車名なのだという。日本における車検証のようなものなのだと思うが、ビークルレジストレーションドキュメントを拝見したら、1967年に生産され、モデル名が420になっていた。エンジンの排気量が4235ccと記載されていたので、おそらくジャガーが1966年から1968年まで生産した4ドアサルーンの420に搭載されていた直列6気筒DOHCを流用しているのであろう。
「足まわりとエンジンはオリジナルのままで、キャブレターは45φツインチョークウェバーの3基がけになっています。ボディはファイバー製で、リベットまで再現されています。本物のDタイプは生産台数が少ないので、いろんなところからボディに関する資料などを集め、型を造ったのだと思います。1967年に自動車愛好家が造ったMULEカーですね」
ジャガーはスポーツカーブランドとしての存在感を増すためにXK120をベースとしたCタイプ(XK120-C)を開発し、このレーシングカーでル・マン24時間耐久レースを2度制覇(1951年と1953年)。さらに戦闘力を高めてサーキットに投入したのがDタイプで、1954年から1957年にかけて生産された。
プロポーションに惚れて購入
ル・マンを制覇するために鋭意開発されたピュアレーシングカーであるDタイプは、当初100台を生産する予定だったが、ラインオフしたのは75台で、残りの25台はジャガー XKSSというロードカーとしてデリバリーされた。
Dタイプの「D」は「支配」を意味するDominanceの頭文字で、それを地で行くように1955年からル・マンを3連覇。圧倒的な速さを披露した。10年近く前に1955年式のDタイプが21億円以上で売買されたことがあるが、本物はそのぐらいの価格(現在は、もっと高価)なので、よくできたレプリカで楽しむというのは大いにありなのだ。
「もともとキビキビ走るイタリア車が好きだったので、このDタイプ・レプリカに乗ったときに少しモッサリしているな……と思いましたが、プロポーションがカワイイので購入しました。実は、今日も富士スピードウェイに来ている吉田章二さんと共同所有というかたちで維持してきたんですよ」
羽生さんがそのようにコメントしてくれた横で、件の吉田さんがニコニコしていたのでお話を伺ってみた。
「最初は私が維持し、4〜5年前に羽生さんに車検証を託しました。2〜3年ほど東京にジャガー Dタイプ ミュルザンヌを置いていたことがありましたが、いまは秋田で保管しています。今日はトラックで運んできました」
箱車の祭典は国産車勢が中心になっているので、再びジャガー Dタイプ ミュルザンヌが雄姿を披露してくれたら幸いだ。
