ユーザー車検の安さも重要だが日常の点検頻度の高さも大切
平成元(1989)年に誕生した日産R32型スカイラインGT-Rを30年以上所有する筆者が、33年目を迎えた愛車でユーザー車検に挑戦しました。旧車はトラブルが多くユーザー車検でパスするのは難しいと思われがちですが、日頃から専門店で点検・整備をしていれば十分に可能です。事前のチェックポイントから当日の流れ、2025年4月から拡大された受検期間の活用法まで、ヤングタイマーオーナーが知っておきたい実践的ノウハウをまとめました。
日常点検をマメにしているからユーザー車検を自信を持って受けられる
先日、地元の陸運支局でユーザー車検を受けてきた。旧いクルマは大小さまざまなトラブルがあるため、ユーザー車検は難しいと思われがちだ。
たしかに一理あるが、トラブルが出るたびに専門店でプロの目にチェックを受けていれば、エンジンルームや下まわりは定期的に点検されている。同じヤングタイマー(ヤングタイマー:製造から20年以上30年未満のクルマを指す。今回のGT-Rはここに該当する)と呼ばれる車種でも、ガレージに入れっぱなしでほとんど乗らない人は別として、普段乗りで主治医のもとに定期的に通っている人であれば、ユーザー車検は決して難しくはないだろう。
誤解されているかもしれないが、ユーザー車検はノーメンテナンスで良い制度ではない。新車・旧車を問わず、点検整備は必須だ。日頃からクルマのメンテナンス代や修理代を支払っているヤングタイマーのオーナーは、車検ぐらいユーザー車検で通して、日常的なメンテナンス費用を節約するのもひとつの手段ではないだろうか。
そこで今回は、ヤングタイマーオーナー向けのユーザー車検情報をいくつか紹介しよう。
車検の受験可能期間が2カ月前からに!古いクルマほど時間に余裕を
まず大事な情報だ。
道路運送車両法施行規則の改正により、2025年4月1日から車検の受検可能期間が、車検証の有効期限満了日の2カ月前からに拡大された。ヤングタイマーのオーナーは、できるだけ有効期限の2カ月前に、自動車技術総合機構の「自動車検査・車検インターネット予約システム」から予約を入れると良いだろう。
旧いクルマの場合、直前まで好調でも、検査当日に不具合が発生して車検に落ちてしまうことも考えられる。要再検査となった時、そこから部品を手配しようとしても、すぐに手に入らない可能性もある。時間的な余裕をできるだけ確保しておくのが得策だ。
ちなみに、陸運支局はナンバーの登録地や住民票などに関係なく、どこでも申込みができる。つまり希望する陸運支局で車検を受けたい日の予約がいっぱいでも、違う陸運支局では枠が空いているケースもある。
車検前の油脂類交換時に下まわりも含めて点検する
次に事前の点検だ。24カ月点検で定められている56項目すべてをチェックするのが理想だが、日頃から整備工場にお世話になっているオーナーであれば、最低限、次の項目を確認しておきたい。
・最低地上高
・ライトの光軸・光量
・灯火類
・タイヤの残り溝
・ブレーキパッドの残量
これらを見ておけば、基本的に車検そのものは通る。
ヘッドライトが樹脂レンズのクルマだと、曇って光量不足になることがある。事前に予備検屋で点検と光軸の調整を依頼し、レンズに問題があれば専用のケミカルなどで研磨しておこう。また、ナンバー灯の電球切れもよくあるケースなので、合わせて確認しておきたい。
もうひとつ、下まわりの点検も必須だ。オイル漏れやドライブシャフトのブーツ切れがあると車検は不合格となる。これについては、車検前にオイル交換をショップに依頼し、リフトで上げた際に下まわりをひととおりりチェックしてもらうのがベストだ。オイルは滲んでいる程度なら問題ないが、ポタポタと垂れていると不合格となる。
そのほか、ブレーキフルード、クラッチフルード、クーラントなどの液体類は、車検のタイミングで交換しておきたい消耗品だ。ウォッシャー液もきちんと出ないと車検に通らないため、減っていたら補充を忘れてはならない。できればVベルトとエアクリーナーのチェックもすれば万全だろう。
社外マフラーは劣化すると音量で引っかかるリスクもあるが、これは実際に測定してみないと何とも言えない。
このような感じで、事前の点検に半日、車検当日に半日ほど時間を確保しておけば大丈夫だ。今は納税証明書も印鑑も不要になったため、準備の手間も少し減った印象だ。
当日は陸運支局の近くにある予備検屋で、排ガス、ライト、スピードメーターなどの検査を受けてから本番に臨むのがお勧めだ。検査の流れを掴めるうえ、ワンポイントアドバイスをもらえるのもありがたい。
筆者の場合、こうした準備を進め、1992年式GT-Rの車検を今回も問題なくクリアできた。もう10年以上、車検はユーザー車検で通しているが、点検・メンテナンスは怠っていないつもりだ。
陸運支局の受付で書類を提出した際、係員が車検証の車両番号を見て話しかけてきた。
「二桁ナンバー? ワンオーナーなんですか。珍しいですね」
書類も車体も細かく見られていることが伺えるが、検査員はおおむね好意的で親切だ。
ひと目で車高や音量で保安基準ギリギリと判断されるようなクルマは厳しく見られるかもしれない。しかし、ヤングタイマーのスポーツカーだからといって威圧的な態度をとられることは皆無だ。むしろ、彼らもクルマ好きだということが態度から伝わってくる。ちなみに今回は珍しく、私のGT-Rもマフラーの音量を測定された。
新しいクルマでもノーメンテ車は必ず車両点検を実施すべき
愛車のコンディションに自信があるのなら、旧いクルマでもユーザー車検は十分にありだ。
逆に、新車から3年目、5年目のクルマでも、乗りっぱなしでノーメンテナンスだとしたら、ユーザー車検はお勧めできない。せめて車検時ぐらいは、プロに細部まで点検・整備してもらうべきだろう。
なお、検査標章(車検ステッカー)の貼り付け位置が2023年7月3日から変更されているので注意が必要だ。かつてはフロントガラスの中央、ルームミラー付近に貼っていたが、現在は運転席側の上端になったので間違えないようにしよう。
