サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

ラリー界の英雄ドライバーと同じ土俵で戦える!ランチア「デルタ」で走るJAF公認デイラリー

黄色いランチア デルタは岡本智宏/亀山伸一/福田守組

WRCサファリラリー4位を獲得したレジェンドドライバーと競い合える

4輪車のモータースポーツにJAF公認の「デイラリー」という競技があります。参加車両の規定もなく、競技ライセンスは不要とあって、誰でも気軽に参加できるとの評判も高く、関東では全5戦のシリーズが組まれています。茨城県の常陸大宮市界隈で開催された2025年の最終戦「男女川ラリー」の模様を紹介いたします。

ラリー会場に華を添えるイタリアのラリーマシンのベース車

第60回男女川ラリーの会場、茨城県常陸大宮市小舟の「やすらぎの里公園」には、総勢27台のエントリー車が集結していました(2025年10月19日)。そのなかに、ラリー会場を彩るランチア「デルタHFインテグラーレ エボルツィオーネ」が2台いました。岡本智宏/亀山伸一/福田守組と、岩瀬晏弘/山崎浩子/井上真理組です。

ひときわ目立つイタリアの名車での参加者ですので、「デイラリーとはどのようなものでしょうか?」と、まずはこのラリーの魅力などをドライバーの岡本さんに尋ねてみました。

「個人的見解ですが、『レジェンド』と同じ競技に出られている! そんなラリーだなんて、こんなにうれしいことはありません」

ランチア デルタで関東デイラリー・シリーズに参戦を続けて2シーズン目を楽しんでいる岡本さんが、レジェンドと仰っている人物は、もう1台のランチアのクルー名に名を連ねてい日本ラリー界で知らない人はいない岩瀬晏弘さんです。

世界中の自動車メーカーが威信をかけ、性能と信頼性を競い合っていたWRC。そのなかでも、もっとも過酷な競技だったアフリカのケニアを主戦場とする「サファリ・ラリー」で、岩瀬さんはさまざまなメーカーのマシンで活躍を続けてきたお方です。1993年にはトヨタ・ワークス陣営のセリカGT-FOURを駆り、世界選手権における日本人ドライバーとしてサファリ4位という歴史的成果を遂げた、まさにレジェンドラリーストです。

その岩瀬さんがデイラリーに興味をもち始めていたころ、知り合いづてに「ちょっとやってみない?」とのお声がけが岡本さんにもありました。こうして参加者も集まり「チームSAFARI」としてのデイラリーチャレンジ交流が始動。シリーズ3年目に入っているとのことです。

速さではなく正確性を競う“アベレージラリー”とは

JAF公認の競技であるデイラリーは、速さを競うスペシャルステージ主体の「SSラリー」ではなく、主催者が指示した走行速度でルートをいかに正確に走り抜けるかを競う「アベレージラリー」です。普段使っているクルマでも参戦できる、お手軽なモータースポーツといえます。

SSラリーとアベレージラリーでは、競うポイントが「速さ」と「正確性」で異なっていますが、ドライバーとコ・ドライバーとのコミュニケーションを通してクルマを安全に走行させていく術技の競い合う、という基本はどちらも同じです。

少年時代の憧れが現実に──ランチア デルタとの出会いはビデオだった

さて、岡本さんのデイラリー参加へのいきさつには長い雌伏の時があり、ラリーとの馴れ初めにまで遡ります。

「小学生のころ、サファリ・ラリーのビデオテープを200円くらいで買ったんです。速いといわれていたトヨタの70スープラが見たいと思ったのですが、そこで出てきたランチアに惹かれてしまった。フォルクスワーゲン ゴルフやスバル レオーネRXも出ていましたが、ランチア デルタの走りといったら飛び抜けていて、存在感がまるで違っていました……」

1980年代の終わりごろ、ランチアがデルタでWRCタイトルを連覇していく黄金期の初期に投入されたグループA車両。そのサファリでのシーンが、岡本さんとランチアとの出会いでした。時は経ち、クルマ業界で整備士として勤めるにいたった岡本さんに、思いがけずメンテナンス依頼のランチアに携わる機会が巡ってきました。

「仕事柄、確認のために乗ってみることがあります。するとハンドリングからして、けっこうキュッと曲がるなあと」

市販車として成熟を遂げていた「エボルツィオーネII」の実車に仕事で触れた途端、子供のころに受けていたランチア デルタの強烈な印象が確固たるものとして実感され、「欲しい」という想いが再燃してしまったわけです。

一度は諦めたランチア!新たな出会いが巡ってきて走り出す

10数年前、自前でこなせるレストア能力にも背中を押され、市場価格が跳ね上がっていなかった好機に底値ともいえる額で手に入れたランチア。しかし、諸事情により路上復帰させることが叶わず、手放すことになってしまった。そんなタイミングで、デルタ・インテグラーレ・エボルツィオーネの限定車の売買の話が舞い込み、購入を決意した。

この個体はエボルツィオーネIIにおいて200余台の限定市販車でもあったイエローカラー、いわゆる“ジアッラ”がベースとなっています。仲間からの譲り受けたカーボンケブラー製ボンネットや、バンパーのフォグランプ用ホールを埋めるなどしてスクエアな印象を高めたフロントマスク、アドバンRSと思われる17インチ9Jのタイヤ&ホイールなど、そこかしこに独自性が盛り込まれています。しかし、さりげなくまとまっているがゆえに派手すぎず、どっしりとした存在感を放っています。

「ボンネットやフェンダー周りにちょっとした傷があったりしますが、これくらいはご愛嬌。気にしていたら走れません。飾っておくというよりは、生きている限り乗って走っていたいなあっていう、そんな感じなんです」

そう語り、岡本さんはスタートしていきました。

名車から軽自動車までで楽しめるデイラリー手軽さ

約100kmの競技走行距離をこなし、無事にゴール。今回はシーズン通しでナビゲーターを務めている福田さんに、亀山さんも助っ人として加わった3人体制。クルーの戦力アップを図りながら、デルタは愛でられていました。

デイラリーは愛車でラリーを楽しむにはもってこいの現場です。会場には他にもスプリンター・トレノ、ミニ・クーパー、スバル・ヴィヴィオ、510ブルーバード、ランサーエボリューション、はたまたスバル・サンバーなど、個性あるクルマでの参加者が散見されました。そんななかだからこそ、エボII本来のラリーというフィールドであるべき姿もまた垣間見られた気がします。

ちなみにデイラリーの参加料は1台2万円〜3万円ほど。完走後にJAFの競技Bライセンスが申請取得できる特典もあり、ラリービギナーにとって費用対効果も高い競技です。2026年は関東シリーズ戦が神奈川県で1戦増え、全6戦となる予定です。ラリー参戦に興味があれば、まずは身近なイベントの主催者に気軽に問い合わせてみてはいかがでしょうか。

モバイルバージョンを終了