少年時代の憧れが現実に──ランチア デルタとの出会いはビデオだった
さて、岡本さんのデイラリー参加へのいきさつには長い雌伏の時があり、ラリーとの馴れ初めにまで遡ります。
「小学生のころ、サファリ・ラリーのビデオテープを200円くらいで買ったんです。速いといわれていたトヨタの70スープラが見たいと思ったのですが、そこで出てきたランチアに惹かれてしまった。フォルクスワーゲン ゴルフやスバル レオーネRXも出ていましたが、ランチア デルタの走りといったら飛び抜けていて、存在感がまるで違っていました……」
1980年代の終わりごろ、ランチアがデルタでWRCタイトルを連覇していく黄金期の初期に投入されたグループA車両。そのサファリでのシーンが、岡本さんとランチアとの出会いでした。時は経ち、クルマ業界で整備士として勤めるにいたった岡本さんに、思いがけずメンテナンス依頼のランチアに携わる機会が巡ってきました。
「仕事柄、確認のために乗ってみることがあります。するとハンドリングからして、けっこうキュッと曲がるなあと」
市販車として成熟を遂げていた「エボルツィオーネII」の実車に仕事で触れた途端、子供のころに受けていたランチア デルタの強烈な印象が確固たるものとして実感され、「欲しい」という想いが再燃してしまったわけです。
一度は諦めたランチア!新たな出会いが巡ってきて走り出す
10数年前、自前でこなせるレストア能力にも背中を押され、市場価格が跳ね上がっていなかった好機に底値ともいえる額で手に入れたランチア。しかし、諸事情により路上復帰させることが叶わず、手放すことになってしまった。そんなタイミングで、デルタ・インテグラーレ・エボルツィオーネの限定車の売買の話が舞い込み、購入を決意した。
この個体はエボルツィオーネIIにおいて200余台の限定市販車でもあったイエローカラー、いわゆる“ジアッラ”がベースとなっています。仲間からの譲り受けたカーボンケブラー製ボンネットや、バンパーのフォグランプ用ホールを埋めるなどしてスクエアな印象を高めたフロントマスク、アドバンRSと思われる17インチ9Jのタイヤ&ホイールなど、そこかしこに独自性が盛り込まれています。しかし、さりげなくまとまっているがゆえに派手すぎず、どっしりとした存在感を放っています。
「ボンネットやフェンダー周りにちょっとした傷があったりしますが、これくらいはご愛嬌。気にしていたら走れません。飾っておくというよりは、生きている限り乗って走っていたいなあっていう、そんな感じなんです」
そう語り、岡本さんはスタートしていきました。
名車から軽自動車までで楽しめるデイラリー手軽さ
約100kmの競技走行距離をこなし、無事にゴール。今回はシーズン通しでナビゲーターを務めている福田さんに、亀山さんも助っ人として加わった3人体制。クルーの戦力アップを図りながら、デルタは愛でられていました。
デイラリーは愛車でラリーを楽しむにはもってこいの現場です。会場には他にもスプリンター・トレノ、ミニ・クーパー、スバル・ヴィヴィオ、510ブルーバード、ランサーエボリューション、はたまたスバル・サンバーなど、個性あるクルマでの参加者が散見されました。そんななかだからこそ、エボII本来のラリーというフィールドであるべき姿もまた垣間見られた気がします。
ちなみにデイラリーの参加料は1台2万円〜3万円ほど。完走後にJAFの競技Bライセンスが申請取得できる特典もあり、ラリービギナーにとって費用対効果も高い競技です。2026年は関東シリーズ戦が神奈川県で1戦増え、全6戦となる予定です。ラリー参戦に興味があれば、まずは身近なイベントの主催者に気軽に問い合わせてみてはいかがでしょうか。








































