モーター駆動だけで100km走れて最大航続距離1200kmのPHEV
日本では電気自動車メーカーとして認知されているBYDですが、じつは中国本土ではエンジン+モーターのハイブリッドパワーユニットもラインアップしています。そのような同社は、2025年12月プラグインハイブリッド(PHEV)の「シーライオン6」を日本に導入しました。その試乗会で、BYDのBEVセダン「シール」を高く評価するモータージャーナリスト・桂伸一さんが乗って・触れて・開発者の意見を聞いて、シーライオン6の印象をまとめました。
すべての操作がクルマに直結していたBEVセダン「シール」
1年前の2024年、BYD「シール」に乗った時の衝撃にも近い驚きは今も忘れられない。それは、操作したことが、些細な動きからすべてクルマの動きに直結して反映される。それが過度過ぎず、不足でもない丁度いい具合だから素晴らしい。ドライバーが操作したことに対して期待どおりの反応、動きをする、当たり前だけど、そこがヒトの感性にどう合うか、その合わせ方がじつに上手く、操縦はもちろん、乗っていてしっくりくる。これはシールがBEV=電気自動車だからまだいいが、これをエンジン車やHEV=ハイブリッド車、PHEV=プラグインハイブリッド車でこの完成度の高さを見せられると、日本車はもちろん、欧州勢の地位も危うい状況になりそうだ。
2025年、BYDはBEVのSUV「シーライオン7」を日本上陸させた。シールの感触、印象を持ったままだったらセダンよりも売れセンのSUVだから、日本勢は本当にヤバいぞ……?! ところが、シールではあれほど操作とクルマの動きに一体感があったものが、何か違う。決定的にどこがどうだからダメだ、ではないところが伝えにくいのだが、全体的にしっくりこない。バランスが良くないと言う表現が正解か。そう感じてたのは筆者だけではなかったようで。実際、今年2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤーの、今年を代表する10ベストカーに、BYDシーライオン7は選ばれなかった。その理由は選考委員各人それぞれあるだろうが、個人的にはやはり”そういう” 何かが足りない印象、捉え方なんだろうと思う。
PHEVのDセグメントSUVを日本市場に投入!
しかし、BYDには豊富なパワーユニットが存在する。日本はまずはBEVで上陸したBYDだが、次の一手は、日本はやはりHEV、PHEV、つまりハイブリッドだとようやく理解したのだろう。BYD流に言うとスーパーハイブリッドのタイトルとともにSUVの「シーライオン6」が登場した。
シーライオン7と6は似た印象があるが並べて見ると、全く別物。BYDの新しいデザイン言語、流儀は7のほうなのだが、それもそのはず、シーライオン6は本国では既に3年前に発売されたモデルで、日本は順番が逆になる。ワゴンの背を高くした印象の都会派SUVになるシーライオン6はスタイリッシュなカタチ。全長x全幅x全高のスリーサイズは4775x1890x1670mm。ホイールベースは2765mmと堂々のDセグメント。国産ならトヨタのハリアーと同クラスだ。
室内はブラックとタンよりは濃いブラウンの2トーン。ブラックのみはスポーティーだが華がなく、ブラウンのみだと汚れが……、と気になる部分がブラック、と言うわけではないが色一択仕様となれば、これで十分。目が行くのは中央に鎮座する15.6インチの大型モニター。あらゆる機能はここから設定する。広々とした空間はボディサイズに準ずる。
操作に対して忠実に動くBYDらしさがPHEVでも実現
クリスタルを思わせる短い透明なシフトレバーをDレンジに操作して、BYDらしい静かで滑らかな動き出しに思わずニンマリする。アクセルを踏んでも過度な飛び出し加速を抑えた自然な加速フィールのおとなの制御は、ハイブリッドのシーライオン6にそのまま生きている。駆動用バッテリー容量は18.3kWhあり、前輪をモーターだけで駆動すると航続距離は100kmにもなる。これでは2時間の試乗時間でエンジンによるハイブリッド車感覚が味わえずに終わる可能性大。なのでバッテリーの充電率、残容量を表すSOC=ステート of チャージの残容量を25%と低く設定して、エンジンを意図的に始動。EV走行だけじゃないエンジンによるハイブリッド走行フィールを得られるようにした。
ハイブリッドの要となるエンジンは燃焼効率43%の超高効率な自然吸気の1.5L直列4気筒。スペックは72kW/122Nm。これに145kW/300Nmのモーターで前輪を駆動する。今回先に上陸したシーライオン6はFWDモデル。遅れて後輪をモーター駆動するAWDも加わる。
モーターで流れるように加速する。そこにエンジンが駆動とバッテリー充電も含めて始動する。高速道路のゲートから本線合流のためにアクセルを深く踏み込む。まるでターボが聞いたかのように特大の加速Gが襲ってくる。しかし、当のエンジンはドライバー含む客室と壁を隔てたエンジンルームの下のほうでブーンを微かな吐息、排気音を奏でているのみ。いやあ、その静粛性はエンジン単体が発するメカニカルノイズや燃焼音が低いのか? はたまた音の類が客室内に流れてくることを防ぐ、遮音性、吸音性に優れているのか、その両方だろうが、ともかくその上質感には驚かずにはいられない。
回生ブレーキの調整をもっと簡単にできるようにすれば完璧
高速走行中の直進安定性、静粛性と快適性はほぼ満点。ほぼ意味はタイヤのたわみが、ある域から急に硬くなり、その瞬間にサスペンション含めて、ヒョコヒョコと小刻みな上下動に変わる点。
「サスをもう少しソフトに(日本は本国よりもソフトな仕様)した方がいいですか?」と本社から来たエンジニア氏から質問を受ける。詳細は省くがタイヤそのものの特性なので「サスではなくタイヤ銘柄の違いを試してはどうですか?」と返した。ただし、ほぼ満点と言えるレベルの高さだ。あえて言えばソコが気になるのであり、通常走行では見過ごせるレベルだ。
操縦性そのものはコーナーでのハンドリングも含めて操作に正確に反応する。とくにクイックとかスローとかはなく、自然な操縦感覚がいい。言えば、後出しなのにアクセルOFF時の回生ブレーキの強弱に、パドル類の調整機能がない。15.6インチモニター内の回生ブレーキの項目で“スタンダード”か“ハイ”を選択するしか方法がないところは要改善ポイント。
今回はFWDモデルだが、驚くべきはこれら装備充実で、航続距離は1200kmというロングレンジ仕様で価格は398万2000円である。納車開始は2026年1月から。0-100km/h加速5.9秒のスポーツカー顔負けのAWDは26年3月に納車予定だ。
