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北米限定300台「アンドレッティ仕様」のアルファ ロメオ「アルフェッタGT」の魅力

2万160ドル(邦貨換算約315万円)で落札されたアルファ ロメオ「アルフェッタGT」(C)Bonhams

1910年創業のアルファロメオ製
アルフェッタ のF1メカと稀少性

2026年1月23日、米アリゾナ州で開催された名門ボナムズ・オークション。今回の主役は、長らく過小評価されてきた名車アルファ ロメオ「アルフェッタGT」です。F1譲りの高度な機構を持ちながら、品質問題に泣かされた不遇のクーペでした。低走行の世界限定モデルがいくらで落札されたのか? 汚名を返上し名門復活となるのかを占う最新の落札結果を、専門的な視点でレポートします。

F1直系のメカニズムを随所に採用
当時のレベルを遥かに超えた技術力

1972年にデビューしたアルフェッタは、驚くほど先進的なミドルサルーンだった。1950年・1951年に世界王者に輝いた創生期F1の最強マシンだった1.5リッター8気筒から由来された「アルフェッタ158」譲りのトランスアクスル式ドライブトレーンを採用している。リアサスペンションもGPカー直系のド・ディオン・アクスルを備える。さらにバネ下重量を低減するインボードディスクのリアブレーキなど、F1マシン由来の贅沢な技術をミドルサイズの量産サルーンに惜しみなく投入したモデルなのだ。

この至極のメカニズムを、イタリアらしい伊達なスタイルのクーペに与える。これは魅力的なスポーツカーを成立させるための、もっとも合理的なアイデアだった。こうしてジョルジェット・ジウジアーロ率いる「イタルデザイン」社が手がけたモダンなボディを纏うクーペモデルは、「アルフェッタGT」と名付けられて1974年に登場した。アルフェッタGTは、シャープなハンドリングと快適な乗り心地を見事に両立。1970年代のレベルを遥かに超えた素晴らしい出来映えが高く評価された。また、スタイリッシュかつパッケージングにも優れ、後席の居住スペースは単なる+2以上のものだった。

ところが、アルフェッタ・ベルリーナやアルファスッドと同様、当時のイタリアの労働問題に起因する仕上げの悪さ(当時イタリア政府は旧ソ連から質の悪いリサイクル鋼材を輸入してそれをボディ鋼材として利用、さらにストライキ期間に潮風の吹く屋外で塗装前のむき出しのボディのまま放置)、それが錆と腐食の問題に悩まされ続ける。1977年には2リッター版が追加され「アルフェッタGTV」と命名。シリーズの中心モデルとなったが、1度ついてしまったネガティブなイメージは、1980年代に入って大規模マイナーチェンジを受けるまで好転しなかったのである。なにしろ当時の旧いアルファに対しては「雨の日にガレージで耳を澄ませると、錆びていく音が聞こえる」と揶揄されるほどだった。

アリゾナの乾いた風が守った奇跡の個体
伝説の王者の名に恥じないコンディション

ボナムズ「Scottsdale 2026」オークションに出品されたアルフェッタGTは、1976年8月にミラノ近郊の工場からラインオフした米国仕様車である。

ボディカラーは「ロッソ・アルファ」、内装はブラックのビニールレザーというイタリアブランドらしい典型的な色の組み合わせとなっている。

ダッシュボードの銘板によると、この車両は北米限定で300台が販売された「マリオ・アンドレッティ・リミテッドエディション」の212号車と思われる。そもそもマリオ・アンドレッティはアメリカNASCARの最高峰であるデイトナ500を1967年に制し、1969年にインディ500で優勝、インディシリーズ4度のチャンピオンを経験したオールマイティドライバー。実なこの限定車が出た2年後の1978年には
ロータスでF1の世界チャンピオンにも輝いている伝説のドライバーだ。その伝説のドライバーの名を冠した限定版の特徴である三色旗モチーフのサイドストライプも確認できる。ただし、ボナムズ社のカタログ作成時点ではその真偽について確認できなかったことが、正直に申告されていた。

カタログ写真の撮影時点で、オドメーターが指していた走行距離はわずか2万2684マイル(約3万6300km )。乾燥したアリゾナ州の地で多くの時間を過ごしてきたせいかボディコンディションは非常に良い。オリジナルに近い状態からも、その走行距離は真実であると推測されている。

また、当初は北米仕様のデフォルトに従い「スピカ」社製の燃料噴射装置を搭載していたが、いずれかの段階で欧州仕様と同じ「ウェーバー」社製キャブレターに換装されている。スピカ製は現在ではパーツの手配が極めて困難なため、ランニングコンディションを維持するためにはこの気化器への換装はもっとも賢明な判断と言えるだろう。

そのほかの特徴としては、純正のウッドリムつきステアリングホイールやバケットシート、スタイリッシュなカンパニョーロ製アルミホイール、5速マニュアルトランスミッション、エアコンなどが挙げられる。

アルフィスタが狙える4発アルフェッタ
いい個体は待った無しで狙いたい名車!

今回のオークションに際して、ボナムズ社は1万ドル〜2万ドル(邦貨換算156万〜313万円)という少々悲観的なエスティメート(推定落札価格)を設定。その上で、最低落札価格を設定しない「リザーヴなし」で出品した。このスタイルは、金額を問わず確実に落札される。とくに人気モデルでは会場が盛り上がり、入札が進むことも期待できるが、安値で落札されてしまうリスクも持ち合わせる。

迎えた競売ではリザーヴなしのメリットが生かされたのか2万160ドル、日本円にして約315万円という上限を上回る価格でハンマーが振られた。1980年になると、アルフェッタGT系は大規模マイナーチェンジを受け、車名から「アルフェッタ」の文字が消え単に「アルファ ロメオGTV」となる。この時代になるとボディパネルに亜鉛メッキ鋼板が使用され、錆の問題は概ね解決に向かうことになった。

マイナーチェンジ後のGTV、とくにV6エンジン搭載モデル「GTV6」は、現在マーケット価値が急上昇している。しかし、4気筒モデルならば依然としてリーズナブルな売り物も見つけられるようだ。ただ、この時代の4気筒GTVが日本国内に出回る機会は極めて少ない。輸入するにも手間や経費がかさみ、登録には排出ガス試験が必要な年式となる。

もしも国内で錆のない個体に運よく出会えたならば、アルフィスタは早々の決断を強いられることになるに違いない。

※為替レートは1ドル=156円(2026年2月25日時点)で換算
(Fact Check:山本 亨)

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