娘婿をコドライバーに抜擢! 元SEがスマホ用自作計測アプリとピアッツァで挑んだコマ図ラリーの行方
伊香保おもちゃと人形自動車博物館が主催する、クラシックカーラリー「スプレンドーレ伊香保」。第35回を迎えた本大会の会場で、ひときわ美しい流線型のボディを輝かせていたのが、菅沼直樹さんの1988年式 いすゞ「ピアッツァ ハンドリングバイロータス」です。かつて所有していた初期型との違いに驚き、アルファ ロメオから乗り換えたというオーナー。娘婿と挑んだコマ図ラリーの結末と、ピアッツァの深い魅力に迫ります。
再会は名門の足回りとともに!? アルファ ロメオの故障に悩み、ピアッツァで挑むスプレンドーレ伊香保
スプレンドーレ伊香保は、今回で35回目を迎えるこのイベントは、戦前車からネオヒストリックと呼ばれる昭和の名車までが参戦し、PC競技(指定された区間を設定タイムどおりに走る競技)も楽しめる本格的なコマ図ラリーだ。前日からの雨が残るなか、この日を楽しみに日本各地(最遠はなんと北海道)から集まった94台の名車たち。そのなかに、埼玉県からいすゞ ピアッツァで参加していた菅沼直樹さんの姿があった。
「4年しか乗っていないアルファ ロメオ ブレラが壊れまくって、少し嫌気が差していたんです。そんな時にイベントでピアッツァオーナーのKさんと話をしていたら、『いい個体があるよ』と紹介してくれたんですよ」
それまで乗っていたブレラからの乗り換えで、このピアッツァに乗り始めてまだ半年という菅沼さんだが、じつは過去にピアッツァを所有していたことがあるという。
「就職してすぐ、3年落ちくらいのピアッツァ(前期型)に乗っていたことがあるんですよ。紹介してくれたKさんはピアッツァの世界では有名な人物で、行き場のなくなった個体を何台も再生している方です。その懐かしさもあり、早速Kさんのところに試乗に行きました」
伝説の造形とロータスの走りが蘇る。元オーナーを虜にしたリペア済みいすゞピアッツァで挑むラリー
1981年にデビューしたいすゞ ピアッツァは、巨匠ジョルジェット・ジウジアーロ率いる「イタルデザイン」がデザインしたショーカー「アッソ・ディ・フィオーリ」とほぼ変わらない流麗なスタイリングで世間を驚かせた。ステアリングから手を離さずにさまざまな操作ができる「サテライトスイッチ」を備えた斬新なインパネも、大きな話題を呼んだ。のちに追加されたターボエンジンは当時クラス最高出力を誇るなど、10年にわたり生産された名車である。
なかでも菅沼さんの愛車は、「ハンドリングバイロータス」というイギリスのスポーツカーメーカーであるロータスとの提携が生んだスペシャルモデルだ。当時不動だったこの個体をKさんがメンテナンスし、菅沼さんを迎えてくれた。
「昔乗っていた前期型とはエンジンも足まわりも違うのですが、試乗した時に『あれ? こんなに気持ち良いクルマだっけ?』とすごく印象が良かったんです。旧いクルマのネガな部分も見当たらなかったので、乗り換えを決めました」
菅沼さんが当時乗っていた初期型のリアサスペンションは3リンクだが、「ハンドリングバイロータス」では5リンクへと進化している。さらに後期型からラインアップされたターボエンジンの滑らかでパワフルなフィーリングも、購入の決め手となった。試乗時に傷んでいた塗装は純正色でリペイントし、各部をしっかりと仕上げてラリー当日を迎えた。
伝説の足回りに自作ソフトを載せて挑んだピアッツァと娘婿との初ラリーは、順位以上の笑顔が溢れるカーライフの再始動!
初めてピアッツァで挑むタイムラリー。コドライバーを務めるのは、娘婿の加藤世名(セナ)さんだ。
「“セナ”という名前なので、クルマは好きですよ(笑)。今回誘ってもらい、いろいろな車種を見るのも楽しいですし、普段できない経験だと思い一緒に参加しました」と笑顔で応えながら、コマ図のチェックに余念がない。
現在はフリーランスのイラストレーターとして活動している菅沼さんだが、かつてはIT企業のシステムエンジニア(SE)として活躍していた経歴の持ち主。今回のPC競技には、なんと「自作したスマホ用のタイム計測アプリ」を持ち込んで挑んだ。
無事に半日のコース周遊とPC競技を終えたふたり。結果は94台中58位という成績だった。
「区間走行タイムを入力すればカウントダウンしてくれるようにアプリを作ったのですが……連続したPC競技の3回目から、うまく作動しなくなってしまって(笑)。アプリの改良も必要ですし、こりゃもっと練習しなきゃダメですね」
そう言って笑う菅沼さんと加藤さんの表情は、ゴール時の伊香保の空のように晴れやかだった。名車と自作アプリ、そして家族の絆。ピアッツァが紡ぐ新たなエンスーライフは、まだスタートを切ったばかりだ。
