イタリアの老舗自転車メーカーから誕生した希少なオープンカー
イタリア最古の自転車メーカーである「エドアルド・ビアンキ(Edoardo Bianchi)」から派生した自動車メーカーが「アウトビアンキ(Autobianchi)」です。その記念すべき市販車第1号が「ビアンキーナ(Bianchina)」です。群馬県で開催されたクラシックカーイベントで、美しい1962年式のコンバーチブルを発見しました。長年スバル車を愛してきた生粋の趣味人が、なぜイタリアのコンパクトカーを選んだのか。旧車と対話するエンスーなカーライフに迫ります。
イタリア最古の自転車メーカーから生まれた四輪車部門
イタリア ミラノに本拠を置く自転車メーカー「エドアルド・ビアンキ」は、設立から140年を超え、現存する自転車ブランドのなかでは最古の歴史を持つ。ジーロ ディ イタリアやツール ド フランスといったロードレースでの輝かしい成績もあり、現在も絶大な人気を誇るメーカーだ。
そんなビアンキだが、過去には自動車部門も存在した。その歴史は1899年設立と古く、イタリア トリノに本拠を置くフィアットと並んで同国最古の自動車メーカーとして四輪自動車の開発製造をおこない、第二次世界大戦下では軍需産業にも携わっており、軍用トラックや軍用バイクなどを製造していた。
戦後、本来の自転車産業に特化することになったビアンキは、工場の被災などが原因で経営不振に陥った自動車部門を独立させる。そしてフィアットおよびイタリア ミラノのタイヤメーカーであるピレリから資金援助を受け、新たなブランド「アウトビアンキ」が誕生した。その最初の生産車が、アウトビアンキ「ビアンキーナ」である。
フィアット「500(2代目)」のプラットフォーム(車台)を流用しつつ、内外装にメッキパーツを多用したスタイリッシュなデザインで1957年にデビューしたビアンキーナ。その後バリエーションを増やして独自の方向性を持たせ、幅広い世代に受け入れられながら1970年までビアンキーナの生産は続けられたのである。
その後はクラシックカーの世界でも人気の「A112」や「イプシロンY10」などを生産。しかし、残念ながら1995年にY10が生産を終了し、後継モデルが「ランチア・イプシロン(Lancia Y)」として世界統一で発売されたことで、アウトビアンキの名称は完全に消滅した。
筋金入りのスバリストがひと目惚れしたイタリアの小さなオープンカー
群馬県桐生市にある群馬大学桐生キャンパスで開催されたクラシックカーイベント「クラシックカーフェスティバル in 桐生」の会場で、ひときわ目を惹いたのが1962年式のアウトビアンキ ビアンキーナのコンバーチブル(オープンカー)だ。
オーナーは埼玉県から参加していた遠山明宏さん。このイベントに来れば誰かしらの仲間に会えるのが楽しいと、10年ほど前から毎年欠かさず参加しているそうだ。
そんな遠山さんは、じつは国産コンパクトカーを長く楽しんでいる生粋の趣味人だ。24歳のときにスバルの「R2」でクルマの楽しみを知り、現在も所有しているスバル「360」の派生モデルなどを複数台乗り継いで、ディープな世界へとのめり込んでいった。その後手に入れたスバル「1000」は、所有して30年目を迎える筋金入りのスバリスト(熱狂的なスバル愛好家)である。
旧車のプロと二人三脚で楽しむ充実のコンパクトカーライフ
元来のクルマ好きである遠山さんは国境を越えたコンパクトカーにも常に興味を抱いており、数年前からフィアット 500にも乗り始めた。長年愛でてきた「日本のてんとう虫(スバル 360の愛称)」を評価軸にした遠山さんにとって、「イタリアの小ネズミ(フィアット 500の愛称)」は想像していた以上に面白いクルマだったと語る。
これまでも「ヤングSS」や「カスタム」などスバル 360の派生モデル、さらにはスバル「サンバー」にも触手を伸ばしてきた遠山さん。親しくしている工場でビアンキーナの販売情報を聞いたときに興味を持ったのは、ごく自然な流れだったのだろう。
写真を送ってもらったところ状態も悪くなさそうだったため、現車の確認へ向かった。すると写真以上に綺麗な状態であり、車検も1年以上残っていた。あとは金額次第だと恐る恐る確認したところ、思いのほかリーズナブルな価格を告げられた。
「個体数も少ないクルマですし、昨今の旧いクルマの価格高騰はすごいので、いくらだろう、我慢かなと思っていました。しかし想像より安かったことが決め手となりました」
購入後、妻との週末の買い物など日常的に使っていたが、何度か途中で調子を崩すことがあったそうだ。すぐさまフィアット 500のスペシャリストとして知られる埼玉県の専門ショップ「オンタリオSS」に相談すると、ただちに電気系のトラブルと診断された。原因となるパーツを交換してからは、不安なく乗れるようになったとのこと。
「近県だけでなく、中部や関西のイベントにも結構出かけるのですが、高速道路でもメーター読みで90km/h巡航ができます。遠方までの道中も必要にして十分な動力性能があるところを気に入っています」
最後に、日伊のコンパクトカーを乗り比べての感想を聞いてみた。
「スバル 360はビアンキーナより100kg軽いですし、2ストロークと4ストロークゆえの違いからくる強みもあります。それぞれ異なる特性を持っていますが、どちらもずっと楽しみたい大切な相棒です」
スペックや利便性だけでは測れない、旧車との対話の奥深さ。日伊のコンパクトカーを愛でる遠山さんのガレージライフは、これからもさらに豊かなものになっていくはずだ。
