クルマは個性を表現するものでもある
1984年にデビューしたトヨタ「MR2」。日本初の市販ミッドシップスポーツとして開発されました。リトラクタブルヘッドライトは当時のスポーツカー好きの憧れだったこともあり、人気を博した1台です。今回は、マルティーニカラーの超有名ラリーマシンに仕立てた1988年式トヨタ「MR2 G-Limited S/C AD パッケージ」を紹介します。
所有したことのない昭和のスポーツカーを購入
昭和のくるま大集合に参加した椎野英宏さん(取材時年齢58歳)は、2000年に購入したMR2を個性的なカラーリングを施して楽しんでいる。しかも、そのクルマを普段の足として使っているのだ。
「スポーツカーが好きで、結婚当初NA型ロードスターに乗っていたのですが、家族が増えたのでファミリーカーに乗りかえました。子どもが大きくなり、自分でクルマを所有するようになったので、またロードスターを買おうと思っていたのですが……。どうせならまだ乗ったことのないMR2にしてみようと考え、所有することになりました」
MR2およびユーノス ロードスター(NA6CE)以外の過去の愛車遍歴を詳しく伺ってみた。トヨタ「スプリンター4ドアGT(2TG)」、トヨタ「マークIIバンGL(X70)」、三菱「デリカスターワゴン(P25W)」、日産「ラルゴ(NW30)」、トヨタ「ラウム(EXZ10)」という顔ぶれ。このようにお子さんの成長に合わせるように愛車をチェンジしていったのだ。現在、MR2以外は所有していないとのことだった。
「MR2は、中古車雑誌で見つけた個体です。所有してから、旧車は部品の廃番等で修理・維持するのが大変なことを知りましたね。それが買ってからの苦労話です。これまでに自分で作業したのは、手作りの外装パーツの取り付け、ドライバーズシート、ステアリング、ステアリングラック、ホーン、ロアアームボールジョイント交換、ホイールアライメント調整、クイックシフト、パワーウィンドウレギュレーター、ファンベルトプーリーベアリング、エンジンマウント、マフラー交換です」
まだまだ妄想中!
手作りの外装パーツとは、フロントバンパー、ライトポッド、リアスポイラー、リアルーバー、テールランプ、サイドダクト、マッドフラップで、唯一無二の自分だけの外装、自分が扱いやすいようにカスタムした運転席まわり、シートのオフセット、スイッチ類の追加や変更などがこだわりのポイントであるとも話してくれた。
「このMR2ならではの楽しさは、自分好みに造ってカスタマイズすることですね。いまは時間がなくて作業にかかれないので、妄想だけが膨らんでいます。まだまだ終わりはないですよ。そういえば、近所の小学生が自分のMR2を見ていてクルマ好きになったそうで、あるイベントに展示していたときに家族で見に来てくれて、その話をしてくれました。エンジン音が聞こえるたびにベランダに出て、上から覗いていたそうです。これが1番の思い出深い、楽しいエピソードですね。クルマが人と人とをつなげてくれることも嬉しいです。今後、計画しているのはエアロパーツ類の追加ですが、その前にボディのサビが増えてきたので1度鈑金塗装に出したいと思っています」
自分にとってクルマは相棒であり、また身体の一部でもあり、個性を表現するものでもあると話してくれた椎野さんだが、取材の最後に増車の計画はないものの、愛車の買いかえはあるかもしれないと話していた。購入時に約8万6000kmだった走行距離が、現在、約29万kmまで伸びているそうなので仕方ないが、できればまだまだ乗り続けてほしいものだ。
