いすゞ「ベレット1600GTR」で街乗りから競技まで楽しむ極上の旧車ライフ
日本初の「GT」をご存じですか? 実はスカイラインではなく、いすゞ・ベレットだと言われています。今回は、そんな日本の自動車史に輝く名車「ベレット1600GTR」をこよなく愛する岐阜県のオーナーが、部品取りになる運命だった車体を奇跡の復活へと導いたストーリーをご紹介します。街乗りからジムカーナまで大活躍する「ベレG」との、大人のセカンドカーライフの魅力に迫ります!
日本初車名のGTはいすゞ製通称「ベレG」!?
6台乗り継いで来たオーナーの愛情と信念
日本における「GT(グラン・ツーリスモ)」の起源は、いすゞ・ベレット1600GTが国内初とされている。しかし、日産・スカイラインGT(S54型)は1964年3月13日に市販モデルが発表された。対するベレット1600GTの発表は同年4月6日である。発表時期だけを見ればスカイラインGTが先行している。だが、この話には続きがある。いすゞはベレット1600GTの前身となる「ベレット1500GT」を、前年の1963年10月に開催された第10回全日本自動車ショーに出品しているのだ。命名の歴史において、ベレットこそが日本初のGTといえる。しかもGTR(正式名称はGT typeR)という商標登録もいすゞがすでに獲得しており、スカイラインはいすゞ側の許諾のもとでGT-Rと敢えてハイフンを入れて発売に至っている。
日本の自動車産業史に名を残すこの名車に惚れこんだのが、岐阜県で輸入車専門店を営む丹羽隆さん(61歳)だ。丹羽さんは過去に6台ものベレットを乗り継ぎ、現在も2台のベレット1600GTを所有している。全国屈指の「ベレG(ベレットGTの愛称)」愛好家である。幼少期からの憧れだったベレGを、仕事とは切り離した趣味のクルマとして心から楽しんでいる。走らせてこそGTカーだという信念から、現在は街乗り用の1台と、サーキット専用の1台を使い分けている。
雨ざらしボディは部品取りの運命から一転!
街乗り&ジムカーナ仕様へ生まれ変わった
丹羽さんと出会ったのはサーキットだったため、目の前のクルマがレース車両かと思いきや、実は街乗り仕様だった。本気のレース車両は、クラシックカーレース(JCCA)に参戦するため、大がかりなメンテナンスを行っている最中だという。遊ぶクルマがないため、急きょこの街乗り仕様を引っ張り出して走らせていたのだ。
丹羽さんは日頃から状態の良い車体を探している。街中で魅力的なベレGを見かけると、オーナーに声をかけて「もし手放す際は連絡してほしい」と積極的に働きかけている。希少な車体だからこそ、一瞬の出会いを逃さないように心がけているそうだ。
今回紹介するベレGも、納車で他県を訪れた際、ガソリンスタンドで偶然見かけた個体だった。オーナーに挨拶をして連絡先を交換し、数年後に「大切に乗ってくれる人に譲りたい」と相談を受けたという。
以前見かけた時は状態が良かったものの、数年が経過したその車体はエンジンの調子が悪くなっていた。前オーナーがマンション暮らしで雨ざらしになっていたため、ボディの傷みも激しかった。当初はレース車両の部品取りとして引き取ったそうだ。しかし、いざ車体を眺めていると「ただの部品取りで終わらせるのは可哀想だ」という情が湧き、再び公道を走れるようにレストアを決意した。
走る楽しさを追求し続けるDOHCのGTR
名車との大人の極上のセカンドカーライフ
復活させるにあたり、単に走るだけでなく、街乗りからジムカーナ競技までこなせる仕様に作り込むことを決めた。競技規則の縛りがないため、エンジンは排気量を広げるボアアップを施し、高性能なカムシャフトなどを組み込んだ本格的なチューニングユニットを搭載している。
足回りには、かつていすゞのモータースポーツ部門が販売していた「ステージ3」と呼ばれるレース用キットのレプリカを装着した。さらに、いすゞスポーツ製のスタビライザーでロールを抑え、駆動力を左右のタイヤに最適に配分する機械式LSDも組み込んでいる。LSDの効き具合を強めに設定することで、トラクションが増してコーナーをスムーズに曲がるセッティングに仕上げた。
丹羽さんにとって、このベレGはあくまで休日の走りを楽しむ趣味のクルマである。「さまざまな場所を走り、そのステージに合わせた仕様を探りたい。クルマをいじる楽しさや、調整による変化を体感したい」と語る。
レストア完了後には、湘南ヒストリックカークラブ(SHCC)主催のジムカーナ大会や、愛知県のタイムトンネルトライアルといったイベントにも参戦した。近所のドライブから本格的なスポーツ走行まで、名車ベレGとともに極上のセカンドカーライフを満喫している。
