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豪雨で水没した息子の形見! 日産「S130型フェアレディZ」を学生たちが3年半かけてレストア

ニッサン・フェアレディZ:スタートから3年半。年月はかかったが、山本さんの思いが叶い、クルマが完成した

水没した息子の形見! S130型フェアレディZが蘇る感動のレストア劇

亡き息子が遺した日産「S130型フェアレディZ」。20年以上大切に保管されていた形見の愛車は、2018年の西日本豪雨で無残にも水没してしまった。悲しみに暮れる家族から相談を受けた日産京都自動車大学校の学生たちは、泥とサビにまみれた水没車の復活プロジェクトを立ち上げる。途方もない困難が待ち受けるレストア作業は、いかにして成し遂げられたのだろうか。

若くして他界したクルマ好きの青年が大切に乗っていたS130型

この物語の主人公である岡山県倉敷市出身の山本 晃司さんは、地元を離れて香川高等専門学校に通い、夜な夜なクルマやバイクいじりに没頭する機械好きの青年だった。彼が愛車として所有していたのは、初代であるS30型のイメージを残しつつ、性能を大幅に向上させた日産「S130型フェアレディZ」だ。

しかし残念なことに、晃司さんは1997年にバイクの事故に遭い、23歳の若さで他界してしまった。形見として残されたのはこのフェアレディZである。悲しみに暮れるご両親は、息子が大好きだったこのクルマを処分せずに残すことを決意した。自宅を新築してガレージに車両を保管し、さらに2階には晃司さんの部屋を設けて、写真やゆかりの品々を飾って大切に守り続けていた。

西日本豪雨で水没した形見を教材として日産京都自動車大学校へ託す

息子への深い愛情とともに20年以上も大事に保管されてきた形見の愛車に、再び悲劇が襲いかかる。2018年に発生し、家屋の風水害としては戦後最悪の大惨事となった西日本豪雨である。山本さん宅の1階部分は天井まで浸水し、ガレージのフェアレディZも完全に水没してしまった。

泥水に浸かった車両を前に、ご両親の脳裏には処分という言葉もよぎった。だが、晃司さんと同じくクルマが大好きで、自動車について学んでいる専門学校の教材として活かせないだろうかと考え、日産京都自動車大学校へ相談を持ちかけた。こうして、息子の形見は未来の整備士たちへと託されることになった。

泥とサビにまみれた水没車のレストアに学生たちが手探りで挑む

日産京都自動車大学校は、プロの自動車整備士を育成する日産直系の専門学校である。全国に5カ所ある大学校のなかでも最大の規模を誇り、広大な実習場に充実した環境を備えている。この京都校の有志により「Z復活プロジェクト」が立ち上がったのは2021年6月のことだ。34期生35名が放課後に集まり、水没した各部の洗浄や分解といった過酷な作業がスタートした。

日々クルマの構造を学んでいる学生たちとはいえ、旧車に触れるのはほぼ初めての経験である。メーカー直系の学校であっても古い資料や部品が潤沢にあるわけではなく、作業は手探りの連続だった。20年以上放置されたうえに完全水没した車両のダメージは凄まじく、プロジェクトは到底1年で終わるものではなかった。レストアのバトンは、進級・卒業を迎えた34期生から、新たに入学した36期生18名へと引き継がれた。

日産名車再生クラブの協力と部品取り車の導入で作業効率がアップする

36期生へとバトンが渡されたあとも試行錯誤は続いたが、ここで強力な助っ人が現れる。日産の歴史的モデルを毎年1台レストアしている「日産名車再生クラブ」の木賀 新一さんが、プロジェクトへ協力を申し出たのだ。彼の手配によって貴重な整備要領書や配線図が揃い、作業効率は飛躍的に向上した。

また、どうしても再生不可能な箇所を補うため、部品取り用の車両も2台購入された。「できるだけ元のクルマに付いていた部品を使いたい」という学生たちの強い思いから、不動となったモーターなども安易に交換せず、可能な限り分解修理を試みるなど、真摯な作業が続けられた。

3年半の歳月を経て息子のZが蘇りナンバー取得の夢へと繋がる

2024年5月からは新入生の有志12名が新たに加わり、明けて2025年1月からは放課後毎日のように作業が実施された。そして2月、ついにフェアレディZのエンジンに火が入る。プロジェクト開始から約3年半が経過した3月18日、晃司さんのご両親を招いた感動の完成報告式が開催された。

同校の川嶋 則生校長は

「普段の授業では教えきれない経験ができ、関わったすべての人が成長できました」

と意義を語る。また木賀さんは

「再生クラブで扱う車両でも、あそこまでハードな状態のものはありません。学生の皆さんにとって素晴らしい経験になったはずです」

と賛辞を送った。

学生からイグニッションキーを受け取ったご両親は

「クルマに息子の写真を載せて『おはよう』と声を掛けていましたので、まるで息子が帰ってきたような思いです」と涙ながらに喜びを語った。車両は現在登録が抹消されているが、ご両親は「せっかくここまで復活させてくれたのだから、定期的に走れる状態にしたい」

と夢を抱いている。若きクルマ好きの情熱と、世代を超えた学生たちの想いが宿ったフェアレディZ。公道を再び駆け抜けるその日は、きっと遠くないはずだ。

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