今後はタービンの容量をアップしパワーを引き出す予定
昭和生まれの走り屋世代にとって懐かしい仕様のクルマを大阪オートメッセ2025(OAM)で発見しました。当時をよく知る人なら見ればすぐに気づくそのルックスは、日産S13型「シルビア」をベースに、「180SX」の顔面を移植した「ワンビア」でした。懐かしのカラーリングに包まれた同車を紹介します。
20年以上も仕様を変え所有し続ける愛車
日産S13型「シルビア」の姉妹車として販売された「180SX」。そのS13シルビアのフロントフェイスを180SXに移植する「シルエイティ」が1990年代のドリフトブームとともに大流行した。また、その逆の仕様として、シルビアをベースに180SXのフロントフェイスを移植したスタイルも誕生しており、このモデルを当時は「ワンビア」と呼んでいた。
今となってはどちらもシルエイティとして表現されることもあるが、当時はしっかりスタイル違いを明確にし、それぞれ別名を付けて呼んでいた。今思えば、これは当時のオーナーたちの製作に対する熱い思いの強さの表れといえるのかもしれない。
そんな懐かしのワンビアを製作したのは大阪府のペイント&カスタムショップ「長野工房」だ。そして、このクルマは代表の長野さんが20年以上も仕様を変え所有し続ける愛車ということであった。
普段はミニサーキットでドリフトを楽しむクルマとのこと。そのため、レーシーなボディカラーが印象的だが、このマシンのカラーリングを見てピンとくるなら、かなりのモータースポーツ好きといえるだろう。また、このワンビアのフロントフェイスに注目してもらいたい。カラーリングでピンとくるなら、このリトラクタブルヘッドライトの一部をカットしたことで特徴を見事に再現したマシンにも気づくはずだ。
Z31フェイスに見えるようにリメイク
長野代表がこのマシンで表現するのは、1980年代後半にSCCA(スポーツカークラブ・オブ・アメリカ)主催のトランザムシリーズに参戦し、その後、IMSAシリーズでも活躍したボブ・シャープ・レーシングのZ31型「フェアレディZである。
じつはこのマシンは知る人ぞ知るといった感じのモデルで、ボブ・シャープ・レーシングのマシンとしてはZ32型フェアレディZ IMSA等が日本では有名たが、アメリカにおいては下のカテゴリーを走っていたZ31シャープレーシングが有名で、その理由は俳優ポール・ニューマンが乗り、優勝の栄冠を勝ち取ったからに他ならない。
長野代表は、ドリ車として作り込んだ高いポテンシャルの中で、Z31に強く意識させるルックスをヘッドライトのちょいリメイクで表現。180SXフェイスをZ31フェイスに見えるように作り込んでしまったのが面白い。抜群のアイデアの持ち主といえる。
SR20DETエンジンに換装しターボ化
ワンビアのチューニングの内容については、エクステリアは180SX中期フロントバンパーに前期用リップの組み合わせ。サイドステップは180SX用で、マッドガードはシルビア純正品を使っている。また、フェンダーはセミワークスオーバーフェンダーをビス留めし、リアは社外スポイラーを装着している。
また、エンジンについては元々のベースがCA18DEを搭載したS13シルビア Q’s オートマだったため、MT載せ替え時にSR20DETに換装しターボ化。タービンもHKS製GT-RSタービンに交換し、燃料ポンプ、インジェクター、インタークーラー、ワンオフマフラー等をセットし、トルクフルでバランスの取れた出力特性をオリジナルコンピュータで引き出す。ちなみに長野代表のポリシーは、クルマに乗せられるのではなく、きっちり操り乗りこなせるマシン作りということであった。
トリッキーな作り込みがウケていた
サスペンションについてはテイン製スーパードリフト車高調にD-MAXテンションロッド、強化タイロッド、オリジナルショートナックル、延長ロアアーム、強化リアメンバー等で動きと剛性を良くするチューニングを施す。加えてニスモ機械式デフにファイナルを4.3にすることで、小気味よくシフトアップできるギア比設定も施していた。
イベント当日、このクルマのカラーリングに導かれて多くの外国人が注目し、しばらく眺めてじっくり何ベースかを確認する光景が数多く見られた。その中には、思わず「フェアレディZ?」の声も聞こえて、そのトリッキーな作り込みがウケていた。
今後の予定は、ボブ・シャープ・レーシングカラーはそのままに、よりレーシーで過激な走りが出来るようにタービン容量アップによってパワーを引き出す予定ということだった。この姿でタイヤスモークを吐き出しながら走る姿はさぞ格好良いことだろう。
