サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

BMW新型「M5」で軽く280キロオーバー! 最大トルク1000Nmのスーパーセダンの真価とは…狙い目は復活した「M5ツーリング」

BMW M5:5シリーズをベースにBMW M社が手掛けたM ハイパフォーマンスモデル。新型はMモデル史上最強パワーのM専用プラグインハイブリッドを搭載する

アウトバーンでは軽く踏んだだけで280キロを超えていく

BMWの新型「M5」は“洗練された高性能セダン”という歴代モデルの伝統を受け継ぎ、最高出力727ps/最大トルク1000Nmのパワートレインを積んだ、M5として初のPHEVモデルです。ドイツ本国でセダンの「M5」とステーションワゴンの「M5ツーリング」に試乗。最初の驚きは、運転席以外の乗り心地の良さでした。

その時代を代表する“洗練された高性能セダン”

現行型のG60「5シリーズ」が登場したとき、「このスタイルのM5ってどうなん? 」と不安に思ったものだった。BEVとICEVの共有車台戦略の申し子で、正直、リムジーネ(セダン)はお世辞にもかっこいいとは思えなかったからだ。もっともクルマそのものの完成度は、BEVもICEVも高く、後から登場したツーリングでは見た目のネガティヴなイメージがかなり薄まっていたから、オススメはワゴンだなとは思っていた。M5にはツーリングがないだろうし……。

マイナスの予想が外れるとネガを忘れてしまえるほど嬉しくなるものである。G60ベースの「M5」、G90には、ツーリングバージョンがあった! G99だ。

G91じゃないの? と聞いてみたところ、今までのセダン派生モデルであれば91とか92とかいうふうになんのこだわりもなく割り当ててきたけれど、今回の担当者はそれが嫌だったらしい。それじゃ面白くない、ということで収まりのいい、というかおそらく担当者の趣味で、G99となった。間に何か別のモデルがあったわけじゃない(少なくとも8モデルはない!)。面白いじゃないか。

というわけで「M5リムジーネ」と「M5ツーリング」のほぼ同時デビューである。「M3ツーリング」がすでに復活していたから戦略的には一貫性があるし、それだけポストSUV世代の受け皿として特にドイツをはじめとした親ワゴン地域に需要があると見込んでのことなのだろう。

歴代M5にも試乗できた!

過去にもM5ツーリングは存在した。E34とE60だ。歴代M5のなかでも個性があって高い人気を誇る2モデルにセダンとツーリングが存在したという事実を偶然だと済ますことはできるし、おそらくそうだろうけれど、日本仕様には存在しなかった2台の高性能ワゴンだけに、筆者などはノスタルジーが募りまくる。

そんなわけで、新型M5とM5ツーリングの試乗会がお膝元ミュンヘンで開催され、そこには歴代M5の試乗車も用意されていると聞き、真っ先に試してみたいと思ったのがE34とE60のM5ツーリングだった。

残念ながら生産台数わずかに1000台というE61 M5は展示こそされていたものの試乗はできなかったけれど、E34 M5のセダンとツーリング、さらにはE28とE39も試すことができたのだから文句は言えない。

いずれのモデルでもエンジンに感動する。さすがはMというわけだ。BMWといえば昔からエンジンが魅力なわけだが、今やそれは“時代の最適解”という枠組みのなかでパワートレイン全般にまで及んでいる。ところがMの高性能モデルだけは電動化を性能アップに注ぎ込み、いまだにエンジンを楽しむモデルを作り続けてくれている。E28のM88、E34のS38はともに今なお胸を空くストレート6だったし、E39のV8はマニュアルで心底心地よく回ってくれた。E60のV10に至っては今さら言うに及ばず。現代のエンジンと遜色ないパフォーマンスと、今や失われたサウンド&フィールを味わわせてくれた。

そんな歴代M5に積まれたエンジンの魅力もさることながら、それを中心にパッケージされたM5というクルマはじつに “洗練された高性能セダン”であったと改めて知る。BMWの中核というべき5シリーズにふさわしい快適性を保持しつつ、時代を代表するような高性能を実現したモデルであることを改めて確認することができた。

M5は洗練された高性能サルーン。そして、新型M5の印象はというと、セダンもツーリングも歴代モデルの良き伝統を受け継いだ、けれども途方もないパフォーマンスを有するスーパーサルーンであった。

>>>アルピナとM5を特集! 1月29日発売のBMW専門誌「BMW LIFE3」はこちら(外部サイト)

カントリーロードからアウトバーン、どんな道でも上質なドライブフィール

ミュンヘン空港近くにBMWのテストカー施設がある。そこが試乗会のベースだ。まずはセダンを借り、助手席と後席に仲間を乗せて走り出す。最寄りのアウトバーンへ向かう道すがら、彼らから早くも驚きの声が上がった。乗り心地がとても良いらしい。これには驚かされた。

たしかに運転席も悪くはなかった。とはいえ運転席以外もそんなに驚くほど良いかしら? と首を捻った。ソリッド感がしっかり残って、フラットに走るふうに運転席で感じるクルマの場合、助手席はもちろん特に後席はたいてい“心地悪い”。なのに、良いというから驚いたのだ。ちなみに午後、ドライバー交代して後席に座ってみたが、ベースへ戻る2時間ほどの間、熟睡。なるほど、良い。

要するに、街中からアウトバーン、カントリーロードまで、そのドライブフィールは一貫して上質。それがE28から続く高性能サルーンM5の伝統だと言っていい。

最大トルク1000Nmという今どき流行りのスペックを謳うモンスターセダンである。それなりに手に負えない感じがあってもおかしくないと予想していた。ところがどうだ。走り出した途端、初めてのクルマとはまるで思えないほど手に馴染んでくれるじゃないか。しっかりとコントロールできている感覚がある。アウトバーンでの200km/hオーバークルーズはもちろん、カントリーロードで曲げても踏んでも、その根本的な扱いやすさは変わらない。そのぶんスリルは感じないが、そもそもスリルを期待するスーパーカーではない。

思い通りに走ってくれているという感覚

野太いMサウンドエフェクトがちょっと“耳ざわり”になったので途中でカット。ナチュラルなV8ノートの方が耳に心地よい。カントリーロードではハンドリングの正確さがたまらなく思える。両手で前輪をコーナーの好きな場所に置ける感覚がBMWらしいハンドリングというものだと思っているが、M5はさらにその上をいく。ドライバーのハンドルへのわずかな入力を素早く察知して、まるで曲がる準備をしてくれているかのよう。フロントアクスルが、そしてクルマそのものが進むべき道を知っている。それでいて不快なアジャイルさはない。思い通りに走ってくれているという感覚の方がまさっている。

プリプロダクションだというM5ツーリングも1時間ほどテストしたが、空荷というのに空気を運んでいるような感覚は皆無。ドライブフィールは全くと言っていいほどにセダンと変わらない。乗り心地からクルージング性、ハンドリングの精緻な自由さまで、前を向いてドライブしている限りツーリングであることを忘れてしまった。

それにしても凄まじきは1000Nmの中間加速である。アウトバーンでは軽く踏んで280km/hをラクショーで超えていく。日本では宝の持ち腐れ、というなかれ、この余裕が心地よい日常ドライブを生んでくれるのだと思う。

>>>アルピナとM5を特集! 1月29日発売のBMW専門誌「BMW LIFE3」はこちら(外部サイト)

モバイルバージョンを終了