1985年以前の懐かしいF1マシンだけが参戦できる「マスターズF1」が日本で初開催

1985年以前の懐かしいF1マシンだけが参戦できる「マスターズF1」が日本で初開催

ヒストリックカーレースに参戦する唯一の日本人
久保田克昭選手が躍進の走りを見せた!

メジャーレースシリーズも閉幕し、国内モータースポーツ界も一段落した2018年11月17~18日、鈴鹿サーキットでは「RICHARD MILLE SUZUKA Sound of ENGINE 2018(SSOE)」が開催。2日間で3万人近くの観客が詰めかけた。F1マシンを始めとする旧いレーシングマシンの競演には、確実なファン層がいることが証明される格好となった。

2015年に初開催されたSSOEは、回を重ねるごとに内容が充実。昨年は初めて、Masters Historic Formula 1(マスターズF1)のデモランが実施されたが、それは正式なレースを開催するための“事前テスト”だった。そして今年、国内はもちろん、アジア地域で初開催となるマスターズF1の公式レースが実現したのだ。

 

もちろん、SSOEでは魅力的なプログラムが数多く用意されていたのだが、今年の大きな目玉プログラムは、懐かしいF1マシンによるヒストリックカーレース「Fusion Coin Masters Historic Formula 1 in JAPAN(マスターズF1)」であることは間違いないだろう。
欧州や北米で開催されているマスターズF1は、数年前から日本人ドライバーの久保田克昭選手が参戦していることで注目を集めてきた。Auto Messe Webでも今年6月、チェコのオートドローモ・モストで開催された「FIA Masters Historic Formula 1」のシリーズ戦について紹介したが、今回は日本にある国内屈指のメジャーサーキットである鈴鹿で開催されたことによって、注目度がさらにアップするはずだ。

それではマスターズF1の詳細について紹介していこう。
先ず参戦マシンだが、1966年から85年にF1世界GPに参戦していた、3リッターまでの自然吸気(NA)エンジンを搭載したF1マシンで争われる。
詳しく見ていくと、F1GPのエンジン規定が3リッターに引き上げられた66年から72年までのマシンによる”スチュワート・クラス”、72年以降に製作されたノン・グランドエフェクトマシンによる”フィティパルディ・クラス”、ベンチュリー構造を持ったグランドエフェクトカーによる”ヘッド・クラス”、そして83年以降のフラットボトム規定に則った”ラウダ・クラス”の全4クラスに分類される。

それぞれのクラスにF1GPにおけるレジェンドの名を冠していることにも注目だが、レースは4クラス混走で行われる。もちろん賞典はクラス別だが、参加台数の増減によってクラスが統合されるケースもある。ちなみに今回の鈴鹿ではヘッド・クラスとラウダ・クラス、そしてフィティパルディ・クラスとスチュワート・クラスが“合区”された。

レースは1大会2レース制で、土曜日に公式予選と決勝第1レース(レース1)が行われ、日曜日には決勝第2レース(レース2)を実施。レース距離の短いスプリントで戦うのも大きな特徴で、鈴鹿では周回数が12周とされ、かつ最大レース時間が25分間とされる。
つまり長くなっても25分たったら、その後最初にトップ車両がコントロールラインを通過するところでチェッカーが振られてレース終了、というワケだ。またクラッチにストレスをかけないよう、スタートはローリング方式が採用される。

と言うところでレースレポート。

土曜日の公式予選結果から、日本人として唯一フル参戦している久保田選手と、クラシック・チーム・ロータスのチームメイトでもあるグレゴリー・ソーントン選手の2人が優勢、と分析されていた。
久保田は全日本F3選手権で腕を磨き、かつてはクラシック・モナコを制したこともある有力選手。一方のソーントン選手も、今年、ロータス77でシリーズ終盤まで戦い、最終的にフィティパルディ&スチュワート・クラスのチャンピオンに輝いた選手。
2人のドライバーのスキルだけでなく、もう一つ、彼ら優勢と分析された要因は、使用マシン「ロータス91・コスワース」のパフォーマンスがライバルよりも上回っている、との分析からだ。

実際、公式予選では彼らのロータス91・コスワースが着実にタイムを削っていった。中でも久保田選手は、勝手知ったる鈴鹿ということもあり、昨年のデモレースでは圧勝。アジア初開催となった記念すべきレースを制して、栄えある初代ウィナーに名を残そうと考えていたに違いない。
そして、久保田選手は2番手のソーントン選手に1秒近い大差をつけ、栄えある初代ポールシッターに名乗りを挙げることになった。

ソーントン選手からコンマ5秒遅れてフィティパルディ・クラスのニック・パドモア選手(フィティパルディF5A・コスワース)が続く。パドモア選手は今シーズンのヘッド・クラスのタイトリストだが、今回はチャンピオンマシン「ウイリアムズFW07C・コスワース」からフィティパルディの乗り換え、クラスもフィティパルディ・クラスに移行していた。
いずれにしてもパドモア選手の予選タイムは久保田選手より1.5秒も遅れており、こと今回に限って言えば、久保田選手とソーントン選手のマッチレースとみて間違いはなかったはずだった。ところが…。

午後のレースが近づき、スタート進行が始まると思わぬハプニングが展開される。
ポールシッターの久保田選手が、ローリングラップを終えようかと言うところで急遽ピットイン。クルマに異常を来していたのだ。
ピットでマシン各部をチェックした結果、チームは問題ないと判断してコースインさせたが、ほぼ1周近く遅れてコースインした久保田選手は、クルマの症状が相変わらずであると感じて再度ピットイン。そこでリタイアを決断することになった。

「ブレーキングすると後ろから押されるような、マシンに何か異常がある感覚があり、ローリングラップを終えたところでスタートせず、ピットに向かいました。チェックしたところ、メカニックからは何も異常は見当たらないのでそのままピットアウトするように言われたものの、再スタートしても状況は変わっていなかったので、そのままピットに戻ってリタイアすることにしました」と久保田選手。

こうなるとレースは、事実上のポールからスタートしたソーントン選手の独演会と化してしまう。
そして後続との差をコントロールしながらレースを走りきったソーントン選手は、記念すべき鈴鹿の初代ウィナーに名乗りを上げることになった。レースを終えた時点で、ソーントン選手と2位のパドモア選手との差は6秒だったが、タイム差以上に差のある、実質的には圧勝だった。

その後方ではフレッチャー選手とライオンズ選手がやりあっていたがレース中盤でフレッチャー選手が遅れ、ライオンズ選手がパドモア選手から4秒差でチェッカー。総合3位/クラス2位を手に入れた。

 

Fusion Coin Masters Historic Formula 1 in JAPAN・レース1決勝結果

順位クラスNo.ドライバー車両周回数タイム
1位ヘッド12グレゴリー・ソートンロータス91・コスワース12周26分27秒187
2位フィティパルディ1ニック・パドモアフィティパルディF5A・コスワース12周26分32秒981
3位フィティパルディ24マイケル・ライオンズヘスケス308E・コスワース12周26分36秒964
4位フィティパルディ34ヘンリー・フレッチャーマーチ761・コスワース12周26分48秒669
5位ヘッド27チャールズ・ニアバーグウイリアムズ07B・コスワース12周27分04秒257
6位ラウダ43ステファン・ロマックティレス012・コスワース12周27分09秒229
12位スチュワート10スティーブ・クックマーチ721G・コスワース12周27分57秒507
リタイアヘッド2久保田克昭ロータス91・コスワース1周車両トラブル

 

 

レース2は最後尾から驚異の猛追を見せる

決勝第2レースが行われる日曜日は、前日同様快晴で明けた。
レース2のスターティンググリッドは、公式予選結果からではなく決勝第1レース(レース1)の結果から決められることになっており、しかもトップ6がリバースグリッドでポジションをチェンジするというもの。

つまりレース1で勝ったソーントン選手は6番手グリッドからで、2~3位で続いたパドモア選手とライオンズ選手はそれぞれ5番手グリッドと4番手グリッドからのスタート。一方、レース1でリタイアを喫してしまった久保田選手は最後尾からのスタートを余儀なくされることになり、12周/最大25分間の超スプリントなレースでは苦戦が予想された。
また久保田選手にとっては、前日の決勝レースでリタイアの要因となったトラブルが完治しているのかも気になるところ。ピットではトラブルの解析と対策(修復)を済ませていたものの、実際に走って確認したいところだった。
ただし、この日の走行プログラムは午後2時50分からの決勝レース本番のみ。本来ならば、午後の決勝レースまでに、マシンを確認する時間はなかったが、午前中に行われた「LEGEND of Formula 1(Legend F1)」の走行セッション、つまりフェラーリやアルファ・ロメオなど12気筒勢が甲高いエキゾーストノートを振りまいてコースを駆け回るのに交じって、1周のみ走行することが許されたのだ。

これで久保田選手も修復が完璧であることを確認、ほっと一息、と言ったところ。通常のレースでは考えられないが、この辺りがマスターズF1の“アット・ホーム”な美点。午後の決勝レースは、予想した通り、6番手スタートのソーントン選手と、最後尾の久保田選手。この2人の猛追撃が注目される展開となった。

2周目に、6番手から一気に2番手まで進出したソーントン選手は、その周にセーフティカー(SC)がコースインしたことで追い上げを中断したものの、1周後にSCがピットロードに向かうと追い上げを再開。ヘアピン先の200RコーナーでNo.1ニック・パドモア選手を一気にパスしてトップの座を奪回した。

一方、最後尾からスタートした久保田選手も、負けず劣らずの猛追撃を見せる。オープニングラップのうちに12番手までジャンプアップ。SCの混乱が収まった後は、更にペースを上げ、4周目には7番手、5周目には4番手。さらに7周目の1コーナーでヘンリー・フレッチャー選手をパスして3番手に進出する。さらにフィティパルディF5A・コスワースのニック・パドモア選手がスロー走行となったことで、7周目を終えた段階では2位にまで順位を上げた。

この時点でトップを快走するソーントン選手とのタイム差は約9秒。以後は、両ドライバーのマッチレースとなる。
その後も久保田選手の勢いは止まらない。8周目にはファステストラップ(1分57秒330)をマークするなど、明らかに勢いは久保田選手の方が上。着実にソーントン選手との間隔を詰めていったが、12周/最大25分間というスプリントレースでは、追い上げにも限界があった。
ラストラップ。ゴール手前からペースを落とし、手を振って観客の声援に応えるソーントン選手に並んだ久保田選手は、結局0秒624の僅差で2位チェッカー。それでも最後尾からの見事な追い上げに対し、観客席からは割れんばかりの拍手が巻き起こっていた。

仮表彰を終えた久保田選手は「悔しいですね」とコメントしたものの、自身の走りには納得していたようで、表情はあくまでも穏やか。
そして「無理なパッシングを控えていたから2位に進出するまで手間取ってしまいました。これが今日の敗因ですね。グレッグ(優勝したソーントン選手)は、時々(ゴール前にスピードを落として観客に手を振ること)あるんですよ。今回もそうだったから、これは上手くすると逆転できるかも…、と思いましたが少し足りませんでしたね」と可笑しそうにレースを総括。
その表情からはレースを充分に楽しんだであろうことが伝わってきた。

 

Fusion Coin Masters Historic Formula 1 in JAPAN・レース2決勝結果

順位クラスNo.ドライバー車両周回数タイム
1位ヘッド12グレゴリー・ソートンロータス91・コスワース12周25分25秒938
2位ヘッド2久保田克昭ロータス91・コスワース12周25分26秒562
3位フィティパルディ34ヘンリー・フレッチャーマーチ761・コスワース12周25分46秒930
4位ヘッド27チャールズ・ニアバーグウイリアムズ07B・コスワース12周26分01秒245
5位ラウダ43ステファン・ロマックティレス012・コスワース12周26分06秒478
6位ヘッド4ホアキン・フォルチ-ルシニョールラバムBT49C・コスワース12周26分06秒655
10位スチュワート10スティーブ・クックマーチ721G・コスワース12周26分54秒966
ファステストラップ2久保田克昭ロータス91・コスワース8周目1分57秒330

 

 

「RICHARD MILLE SUZUKA Sound of ENGINE 2018(SSOE)」ではヒストリックF1だけでなく、様々なプログラムが用意され、新旧のモータースポーツファンはもちろん、クルマ好きには堪らない1日となった。そして、普段は目にすることができないようなクルマたちとも触れ合うことができた。

そんなSSOEで見かけたクルマたちやトピックは、改めて紹介することにしよう。


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