クルマを文化する
REAL CAR CULTURE

AUTO MESSE WEB

クルマを文化する
REAL CAR CULTURE

AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

  • TOP
  • CAR
  • 「車いす乗車」でクルマの長距離移動は意外と辛い! 高齢化社会に向けた解決策を探る
CAR
share:

「車いす乗車」でクルマの長距離移動は意外と辛い! 高齢化社会に向けた解決策を探る

投稿日:

TEXT: 御堀直嗣(Mihori Naotsugu)  PHOTO: トヨタ自動車/日産自動車/本田技研工業/メルセデス・ベンツ日本/Auto Messe web編集部

クルマ移動を考えた車いすや車両開発が必要

 スロープ式など、車いすを車内にそのまま乗せられるタイプの福祉車両は、近年、ミニバンから軽自動車までライアップが豊富になってきた。だが、それら車両は高齢者や障がい者が通院や通勤・通学などの短距離で乗る分にはいいものの、旅行などで長距離移動する場合には不向きであることは意外と知られていない。ここでは、その理由と将来の高齢化社会に向けた福祉車両作りの解決策について述べていく。

福祉車両は「車いす移動車」が主流

 福祉車両の販売は、過去6年間ほぼ安定的な推移で、年間4万5000台前後となっている。このうち、車いすで乗れる福祉車両は、2018年度の統計によれば、登録車で1万3519台、軽自動車では1万6615台となり、合計3万台を超え、18年度の合計販売台数4万3719台のうち7割近くに及ぶ(データはすべて「日本自動車工業会」調べ)。

 高齢化社会を迎えるに際し福祉車両の販売台数の伸びが期待されるものの、実際には横ばい状態が続いている。回転シートの装備など充実がはかられているが、現状は、車いすでの移動用がまだ主体となっている実態が見えてくる。自宅から施設や病院等への移動といった比較的短距離を主眼としたのが、車いす移動車両だ。

車いすは本来クルマ移動に向いていない

 それでも、車いすに乗ってクルマで移動することは、結構大変なことでもある。車いすが、本来は日常生活をする助けとして作られており、クルマで移動することを前提としていないためである。

 車いすにも種類があり、自分一人で移動するためのものは車輪が大きい。それによって、自分の手で車輪を回転させることができるからだ。自分で操作せず、介助者に押してもらうものは、車輪が少し小さくなる。ほかに、姿勢を保持するのが難しい人のためには、背もたれがやや傾斜したものもある。

 いずれにしても、多くは、健常者が日々生活をしたり歩いたりする際に姿勢をまっすぐ伸ばしているように、背もたれは比較的垂直に立ち、姿勢を正せる椅子の形となっている。

 一方、クルマの乗車姿勢を思い浮かべると、背もたれをやや傾けて体を支えるように座る。クルマは、加減速や右左折などで体を前後左右にゆすられるので、それに適した姿勢で着座し体を保持する。運転者はハンドルでも体を支えることができるが、同乗者は背中で支えられながら、足でも踏ん張って乗っている。

 車いすで乗車する人はその姿勢が取れず、なおかつ下肢で踏ん張ることが難しい。したがって、クルマの動きに対するよりどころがなく、前後左右の動きに耐えるのが辛くなるのである。

 それでも、短距離であればひじ掛けなどに掴まることで頑張れるかもしれない。だが、遠出には向かない。

また、車いす用の福祉車両は、乗車位置が後輪の上となる例が多いため、上下振動の影響も直接受けやすい。福祉車両のおかげで出かけることはできても、快適な乗車環境ではないのが実態だ。

 

解決策として作られたトヨタの車いす

 解決策の一つとして考案、製作されたのが、トヨタのウェルチェアである。日常的には、通常の車いすと同じように、背もたれはほぼ垂直に立った状態で座る。

 だが、クルマに乗ったら座席全体をレバー操作でチルトさせることで、後ろ斜めに若干傾斜できる。座面も背もたれも一緒に傾くため、腰がより奥へ押されて安定し、また背もたれが傾くことで体重を背中で支えることができる。

 実際に、筆者も通常の車いすとウェルチェアを比較するために、それぞれに乗ってクルマ移動を体験したことがある。明らかにウェルチェアのほうが背中で体を支えていることを実感し、クルマの動きに対して体が安定し、楽であった。

 またウェルチェアは、クルマに乗ることを前提として設計されているため、車いすのひじ掛けの形状が、3点式シートベルトを装着しやすい取り付け方となっている。このため、ベルトの装着と脱着が簡単かつ短時間にできるようにもなる。

 そのうえで、車両の床に設置されたワンタッチ機構を使うと、乗車後の固定や降車時のロック解除を簡単にできる工夫も盛り込まれている。この車両側のワンタッチ機構は汎用性があり、車椅子側にフックをひっかけるレバーさえ装備されれば、ウェルチェア以外でも利用可能になるという。

 ウェルチェアはまた、車輪が小さめであるため、クルマの座席に座る人とほぼ同じ目線で会話をすることができる。通常の車いすで乗り込むと、目線が高めとなり、また頭上の天井が近くなる傾向になる。そうした室内空間の居住性も、ウェルチェアであれば改善される。

 一方で、車輪が小さめなので、自分で移動したい人には扱いにくいかもしれない。価格も、20万円弱するので、3万円前後から購入できる一般的な車椅子に比べ割高でもある。

 それでも、ドライブなど遠出が多く、それが気分転換になるという人には、快適に長距離移動できる車いすといえるだろう。

12

 

 

 

 

 

 

ranking

RECOMMEND

MEDIA CONTENTS

WEB CONTENTS

 

 

 

 

 

 

MEDIA CONTENTS

WEB CONTENTS

ranking

AMW SPECIAL CONTENTS