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高齢者や障がい者は「後席」と「リヤタイヤ」をチェックすべし! 乗降性を決定するクルマの「基本」とは

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TEXT: 御堀直嗣(Mihori Naotsugu)  PHOTO: トヨタ、Auto Messe Wb編集部

ターンチルトは女性のみならず高齢者にも優しい装備

 助手席では比較的見慣れたターンチルト機構だが、運転席にもという発想は新しい。とはいえ、かつて80年代に登場した2代目スズキ・アルトに設定があった。やはりスカート姿の女性への配慮だったが、高齢化時代を迎えた今日では、女性のみならず高齢者にも優しい装備といえるだろう。

2代目スズキ・アルトのカタログにある回転シート

スズキ・アルトのカタログから転載

 ミニバンの2列目の座席にも、ターンチルトシートが設定された福祉車両がある。しかし一般的な乗用車では、後席がベンチシートとなるため、座席を回転させて外へ向けさせることはできない。

 それでも、後席の背もたれを後輪のホイールハウスより前側に位置するよう設計すると、体をあまりよじらなくても、あるいは大きくかがまなくても、乗り降りしやすくなる。 ホンダ・ステップワゴンのサイドリフトアップシート たとえば、運転手付きで後席に乗ることを主目的としたトヨタ・センチュリーは、そうした後席と後輪ホイールハウスの位置関係となるよう、意図的に設計されている。トヨタ・センチュリーのリアビュー

 これによって、体を横へずらせば自然に足を外へ出せ、そこから体をかがませなくても外に降り立てる。乗る際も、座席に腰を下ろし、体を横へずらせば乗り込める。

 この後席背もたれと後輪ホイールハウスの位置関係は、乗降の際にドアを大きく開かなくても乗り降りできるため、ヒンジドアを大きく開けられない狭い場所でも、不自由が少ない効用もある。重量増となりがちなスライドドアでなくても、こういう工夫で乗降性は変わるのである。トヨタ・センチュリーのリアシート

 最新の小型車では、ホンダ・フィットは上記に近い後席と後輪ホイールハウスの関係となっており、後席の乗り降りがしやすい。一方、トヨタ・ヤリスは、後席背もたれ自体はそれほど後輪ホイールハウスの奥にあるようには見えないが、後ろのドアの開口部が小さいため、センターピラーのところから足を外へ出しにくく、なおかつ体を大きくかがませなければ出られない。トヨタ・ヤリスの前後カット

 誰にでも乗降しやすいという福祉車両的視点でみると、後席に関してはフィットに軍配が上がる。前席に、ターンチルトシートを設定していながら、前後の席では乗降性の差が大きい。走行性能の高さが特徴のヤリスは、前席中心の考えなのだろう。ホンダ・フィットのターンシート車

 かつて、スバル1000は、前輪駆動(FWD)の特徴を活かすため、プロペラシャフトが床下を通らない平らな床による広々とした室内を優位性とした。同時にまた、後席背もたれは後輪のホイールハウスより前にあって、センチュリーの例と同様に乗降性も優れていたのである。スバル初のFF乗用車のスバル1000

 福祉車両で採り入れられている回転シートのような機能を標準車にも採用するだけでなく、そもそもすべてのクルマで乗降性のよさが求められてしかるべきだ。それは、高齢者や障害者の為だけでなく、健常者や若者であっても、体調がすぐれなかったり怪我をしたりして体が思うように動かせないとき、病院や仕事へ向かう際にクルマを必要とすれば有り難い機能や室内設計になる。そしてクルマで出掛けたいという意欲も増進するだろう。ホンダN-WGNの回転シート車

 これからは、福祉車両と標準車の境界線が無くなっていくことが理想であり、それこそがバリアフリーであり、工業製品におけるユニバーサルデザインになるのだと思う。

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